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  • 2026/05/21 掲載

KADOKAWAはなぜ出版社でアニメ随一に?「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」躍進の根源

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『フルメタル・パニック!』『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『日常』の企画・制作を数々指揮してきた安田猛氏。編集やプロデューサーとしてKADOKAWAを支え、日本のエンタメ史に名を刻むヒット作群を生み出した。そのKADOKAWAも、今や「アニメ帝国」だが、かつてはジャンルの壁を越え独自路線を模索し、社内文化も大きく揺れていた。頭の中に絵を描き続けた編集者たちが、いかにして業界地図を塗り替えたのか。
聞き手・執筆:エンタメ社会学者 中山 淳雄

エンタメ社会学者 中山 淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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編集者・クリエイター・プロデューサー
安田猛(やすだ・たけし)氏
1962年10月23日生まれ、神奈川県横浜市出身。KADOKAWA(旧角川書店)の常務執行役員などを歴任し、アニメやライトノベルを軸としたメディアミックスの礎を築いたプロデューサー。独自の視点でクリエイターを支援し、後にアニメーション制作の指揮を執る。『フルメタル・パニック!』『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『日常』といった京都アニメーション制作作品の企画・制作を数多く手がけたほか、『ケロロ軍曹』『ストライクウィッチーズ』『艦隊これくしょん -艦これ-』など、ブームの火付け役となるヒット作を次々とプロデュース。現在は、長年培った経験を生かし、次世代のコンテンツ創出に尽力し続けている。
 2000年代以降、安田氏はアニメ事業の中核を担っていくが、その仕事を支えたのは1980~90年代の編集現場で培った感覚だった。アニメ時代の躍進を理解するためにも、まずはその土台となった「編集者としての資質」から見ていきたい。

なぜ出版社が最強なのか。優秀な“編集者の条件”とは?

──アニメビジネスという「新しい領域」に行く時に、角川書店としてはどんな人材を採用していくんですか?

安田猛(以下、安田)氏:意外に中途社員ばかりではないですね。最初はアニメ制作会社などから人材募集してチームを大きくしていったのですが、「出版の編集者ってアニメのプロデューサーに向いているな」と途中で気がつきました。

 マンガやラノベの編集者は作家とゼロから作品を作っているから「プロットや脚本が読める」んですよ。外部からきた人たちは「映像になってみないと分からない」とよく言ってましたね。そもそも編集者は何も手元にない中で、作家としゃべりながら構想を練っている段階でも頭の中には映像があるんですよね。

──先日、工藤大丈さん(現KADOKAWA執行役員)とも対談させていただきましたが同じようなことをおっしゃっていましたね。

安田氏:アニメ制作会社出身の人はディレクターのポジション止まりになることが多かったですね。業界の人たちをよく知っているので、監督をつれてくるとか、制作会社との関係を円滑にするとか、アニメーターを集めてくるみたいなところは得意です。

 ただ逆に言うと「脚本・演出・絵コンテなどのパートはお任せしてしまっている」ことが多くて。アニメスタッフとともに脚本を作っていく力は編集者たちのほうが実力を発揮しました。

 だから編集部から人材をとってみようと思って、工藤大丈さんは編集から引き抜いた第1号の幹部社員です。彼も富士見時代に何作もライトノベル編集者としてアニメ化を経験していましたから。

──逆に「良い編集者」というのはどういう素養が必要なのでしょうか。

安田氏:作り手視点と読者視点とのちょうど良い距離感ですかね。ファンとしての距離感だけでやっていると行き詰って、会社を途中で辞めてしまう人も多かった。

 編集者になるということは、クリエイター並みの想像力を鍛えるということだし、いかに膨大な時間を費やしながら作品ができあがっていくのか、どのくらい忍耐力がいるものなのか、肌感をもって理解している。そういう点では、KADOKAWAがこれだけアニメ事業で成功したのは人的資産をもっていたということだと思います。

マンガ・ラノベ・アニメ編集に大きな違いはないが……今重要なもの

──講談社なども今、マンガ編集者たちがゲーム・映画・YouTubeを作っています。マンガ編集とラノベ編集での違いはありますか?

安田氏:昨今はマンガ配信サイトの躍進で、多くのデジタル出版社が生まれました。デジタル出版は在庫がないので容易に新規参入が可能となったわけです。マンガの形態も縦スクロールとか新しい見せ方もでてきたり、短いページ数を切り売りしたりと表現方法や販売方法も多様化しています。ラノベ編集についてはデジタル化で発表の場は増えましたが、表現は変わらず紙媒体の衰退で売り上げも苦戦していると聞いています。

 本屋の倒産が相次ぎ、老舗出版社はライバルも増えて大ピンチですよね。その意味では老舗でもさまざまなエンタメビジネスに横展開していかないと生き残れない時代になったということですよね。

 現在のアニメについては、映像のクオリティーが上がりすぎて逆に段取りが多すぎますよね。作品数が膨大になっていてコスパも合わない、求められるクオリティーがキープできないということも起こっています。せっかくAIの技術があるのだから、それを使ってマンガ・プロダクションのように少人数作業でアニメを制作できれば、よりスタッフ1人の収入も大幅にアップするでしょう。AIについては未だ多くの課題がありますが、アニメ分野でも人海戦術を大幅に削減できる切り札になると期待しています。

 今後は逆に、今だからこそ少数精鋭のプロダクションづくりが重要で、いかにクリエイターと近い距離でオリジナリティのあるものづくりができるかを模索したいですね。 【次ページ】『ハルヒ』によるKADOKAWAオタク帝国の確立。社風はどこからきた?
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