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  • 2009/11/18 掲載

船井総研創業者 船井幸雄氏が語る経営者への提言「学び、働き、全体を“見える化”できれば道は開ける」

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「今はまだ不況の入口に過ぎない。これからもっと経済は悪くなる」と指摘するのは、日本における経営コンサルタントの草分けとしても知られる船井幸雄氏だ。特に中堅中小企業は今までにも増して苦しい経営を強いられるという。こうした中、取り組むべきことは、しっかり勉強し、しっかり働くこと。危機感を持って死にものぐるいでものごとに当たればよい考えが浮かび、規模や業種に関係なく日本の企業なら生き延びられると、船井氏はエールを送る。そしてもう一つ、経営者が決して怠ってはならないこと、それが現状の把握、ITによる経営の「見える化」だ。

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代

本当に危機感を持って経営に当たっているか?


船井本社
代表取締役会長
船井幸雄氏

1933年、大阪府生まれ。1956年、京都大学農学部農林経済学科卒業。日本マネジメント協会のコンサルタント、理事などを経て、1970年に日本マーケティングセンター設立。1985年3月に船井総合研究所に社名変更。1988年、経営コンサルタント会社として世界ではじめて株式上場。同社の社長、会長を経て、2003年に役員を退任。現在船井本社の会長。

 いきなりでびっくりされるかもしれませんが、アメリカを中心とした資本主義経済というのは、早晩くずれさるでしょう。私の予測では、2010年後半から2020年にかけてがそのときなのではないかと思います。今回の世界同時不況というのは、100年に1度の出来事などではありません。数万年に1度起こるか起こらないかというぐらいの大変化だと考えています。ドルが暴落し、米国債が暴落し、アメリカは世界の中で求心力を失うだろうと思っていました。そのことは、自著『断末魔の資本主義(2002年、徳間書店)』の中でも詳しく記しています。

 一部の報道では“景気の底は脱した”といっているようですが、そんなことはありません。これからますます悪くなります。今は、本当の不況の入り口に立っているにすぎません。なぜそう言えるのか。シンプルに考えたら誰でもわかることです。この有限の地球で、もっともっと市場拡大だと血道を上げたところで、いつか行き詰まるのは自明ではないでしょうか。アメリカは求心力を失います。とはいえ、中国がそれに取ってかわるということはないでしょう。この先、世界は多くの極を持つ分極時代を迎えるでしょう。

 こうした大きな環境変化の中で、経営はどこへ向かえばいいのか。これはどれだけ時代が変わっても不変です。「しっかり勉強し、しっかり働くこと」。この一言に尽きます。既にもう身を粉にして働いています、と経営者の方々はおっしゃるかもしれない。しかし、私の長き40年にわたる延べ数万件の経営コンサルティング経験からすると、危機だといいながら、経営者が本当に危機感を持って経営に当たってはいないというケースがままあります。

 企業経営の根幹は何といってもトップです。ワンマン経営というとネガティブに受け止められますが、実際はワンマン体制でなければ企業経営は成り立ちません。経営者は自ら求心力を持って“俺についてこい”とビジネスを現場がリードする努力をしているか。社員を集めて直接対話し、理解を促し、納得を得ることで、社内に一体感を生み出しているか。現場を知らない経営者はダメです。細部が把握できないと社員になめられてしまいます。重役出社なんてとんでもない。朝一番に出てくるぐらいでないと。率先垂範です。社員は常に、経営者のビジネスへの姿勢を見ています。

 しかも、これをたゆみなく続けなければなりません。一度でも途切れたらあっという間に士気はゆるみます。何を隠そう、当グループですらそうなのです。私は50年間、風邪一つひかないのが自慢だったのですが、この3年というもの、病を得て長期療養を余儀なくされました。ようやく最近回復し、現在は週2日ベースで出社していますが、品川の拠点に集うグループ会社の雰囲気が、少しバラバラになったのを感じました。トップが不在だと緊張感を保つのが難しいのでしょう。やはり毎日見ているということが大事なのです。

“何か掴みそこなっている”というもやを晴らすのにはITが最適

 もう一つ、経営者が決して怠ってはならないことに、現状の把握があります。私はよく経営者に尋ねます。「それで結局、御社は全体として、状況がよくなっているんですか、それとも悪くなっているんですか」と。するとたいていの方ははっきり答えられないのです。売り上げや利益の推移を元に、あとは直感力と経験のみで決断されていて、「何かを捉えそこなっている」と心中もやもやしたものを抱えているようです。

 しかし、経営を迅速かつ的確に進めていくためには、このもやもやしたものを晴らさなければなりません。つまり、経営の「見える化」です。どんなにいい商品、どんなにすばらしい技術、どんなにすごい営業力があっても、それだけで安心するわけにはいけません。企業経営を確実に成功へと導くためには、経営リスクを的確に察知する仕組みが不可欠です。

 これを実現するために役に立つのが、ITの活用です。経営とは“全体をどう把握するか”です。それを求めるためには、情報のウエイトづけなどを行って複雑な統合計算を実行する必要があり、それは人間の頭の中だけではちょっと不足するので、おおいにITを活用ください。

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