• 2007/04/16 掲載

組み込みソフト開発における経営課題【第5回】情報戦略ガバナンス(2/2)

情報戦略ガバナンス/第5回 【ビジネスインパクト連載中】

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各メーカーが検討すべき主要論点

 まず、組み込みソフト開発事業の自社にとっての目的が何か、ということを再確認することが大切である。品質強化に取り組んでいるメーカーもあれば、むしろ事業拡大候補として考えているメーカーもあろう。どちらも視野に入っている企業もあるかもしれない。もし、品質強化が課題であると考えているメーカーであれば、下記が主要論点となる

●品質の課題は何か? 真因は何か?
●打ち手は何か?

また、事業拡大を検討しているメーカーにとっては、下記が主要論点となろう。
●事業拡大候補として、どのような領域が有望そうか?

 次に、それぞれの目的に即して成功の鍵を特定することが必要である。組み込みソフト開発市場は前述したように「攻め」の領域でも「守り」の領域でもありうる。その際に重要なのは、自社の強みが何かという競合優位の視点である。組み込みソフト開発では、3 つの主要な知見が必要だ。

 まず一つ目がハードウェアに関する基本設計である。最適な基盤設計、チップ機能の定義と配置など、経験が重視される分野である。しかし、その重要性は、今後増大するわけではないので、新入社員に対してパソコンを一から組み立てさせる研修を導入したり、ハードウェア設計部隊は業界を超えて共有するなどの工夫でカバーしているメーカーは多い。

 二つ目は、品質管理である。品質管理範囲には、ソフトが正しく動作することに加え、ハードがあらゆる環境下で正常に機能することも含まれる。この品質管理スキルは、ソフトウェアの不具合が原因のリコールなどが急増しているため、この対応の重要性は増している。各メーカーは、カットオーバ後の手戻りを許さないリスク管理ノウハウの習得が必要である。なぜなら、組み込みソフトは故障時にハード部分との切り分けが難しく、かつ、リコールが出れば大きな損害を招くからである。

 三つ目は、大規模プロジェクトマネジメントである。全体設計、モジュールの切り分け、役割分担などである。このスキルの重要性も年々増加している。なぜなら、近年開発規模が急拡大するなか、納期は短縮化しており、しかも大規模プロジェクトマネジメントを経験しているマネジャーが稀少だからである。

 最後に、自社がとるべき打ち手のオプションを特定する必要がある。自社はどのように強化すべきか、アライアンスやM&A が必要な 場合、どのような相手とどのように組むべきか、などを検討するのである。例えば、事業拡大ではなく品質強化を目的とする場合、他ハードメーカーとのJV を設立してハードノウハウと組み込みソフトノウハウを強化するというオプションが考えられる。もし、事業拡大も狙いたい場合は、ハードメーカー子会社とアライアンスを組んだり出資したりすることで提携先ハードメーカー向けの売上を確保できるかもしれない。また、品質強化よりも事業拡大を重視したい場合は、独立系の組み込みソフト開発プレーヤとのアライアンスや出資を行い、多岐にわたる顧客を拡大していける可能性を追求したほうがよいのである。

検討における留意点

 この市場は現在脚光を浴びているため、多くの方が検討していることだろう。そこで、検討を進める際ののポイントを述べておこう。

●関連市場は融合しつつあるため、自社の業界だけでなく、隣の業界を含めて幅広く動向を把握する。
●当該市場は機会の窓(英語で"Opportunity Window" という)が閉まりつつあるため、客観的かつスピーディな市場分析を行う。
●市場はグローバルであるため、日本だけでなくグローバルを視野に入れて検討する。
●パートナー候補を探す場合には、自社の都合だけでなく、必ず相手にとってのメリットを相手の立場で考えて訴求する。

 組み込みソフト開発は日本が国際競争力を高められる数少ない領域の一つである。関連の方々は技術立国日本の将来を背負っているという気概をもって、是非がんばってほしい

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