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  • 2010/06/30

【合同会社コンテクチュアズ インタビュー】『思想地図bis』が打ち出すビジョン (3/4)

東 浩紀氏、村上裕一氏、李 明喜氏、浅子佳英氏インタビュー

『思想地図』から『思想地図bis』へ

――『思想地図』はもともと、東さんと北田暁大さんの共同編集という形でNHK出版から刊行されていたわけですが、これをやめてコンテクチュアズを立ち上げたのは何故ですか?

 東氏■まず、NHK出版さんや北田さんと「決裂」したわけではありません(笑)。これは純粋に僕のわがままです。つまり、僕のわがままとして、電子書籍もやりたいし、Twitterとの連動もしたい。新しい批評とか思想の立ち上げを考えたときに、いわゆるアカデミズムにいる人たちよりは、ニコニコ動画の画面の向こうにいるよくわからない匿名の人たちに声をかけたい。そういう強い思いが個人的なものとしてありました。その時に、普通の出版社から出すシリーズという枠組みでは、どうしても制約が大きかった。だからこうして独自の会社を立ち上げようという話になったわけです。NHK出版さんには『思想地図bis』創刊にあたってむしろ貴重なアドバイスをいただいていますし、北田さんも創刊号の座談会に出席する予定です。

 ちなみに、宇野常寛くんや濱野智史くんも最初は一緒に会社のメンバーとして誘ったわけですが、2人にもそれぞれ自分の仕事の中で割けるリソースの限界とかがあるなということになり、彼らは会社の経営に入ってもらうのではなく、別の形で協力してもらうことにしました。僕のわがままで会社を立ち上げたので、一緒に経営していくとなると、運営上の温度差の違いみたいなものはどうしてもある。しかし、そういう経緯がすべて見えているというのも、むしろ透明な感じでいいんじゃないでしょうか。

――では、これまでの『思想地図』とこれから出していく『思想地図bis』の、刊行理念上の違いは何でしょうか?

 東氏■北田さんやNHK出版の考えはまた違ったかもしれませんが、僕の見る限り、第一期の『思想地図』は、いわゆる「現代思想」の言語に接してきた人たちをメイン読者に据えて、現代の新しい現象を分析するという雑誌になっていたと思います。つまり、デリダとかドゥルーズ、もしくはルーマンやハーバーマスを普通に知っている人たちに、ショッピングモールをわからせる本だったと。でも第二期となる『bis』は逆で、ショッピングモールやニコニコ動画のリアリティが普通になっている人たちに、デリダやドゥルーズやルーマンやハーバーマスの思想を理解してもらう雑誌にしたいですね。だから向きが逆になるんです。読者層も変わっていくと思います。

――イベントの中で、1980年代のニューアカデミズム当時にも思想的に考えられていた問題意識が、今新たな情報環境で一周回って新しい状況を生み出しているという話がありました。その反復性と違いについては、どうとらえられていますか?

 東氏■ニューアカのいいところは、消費社会の問題に取り組んだことと、社会現象になったことです。悪いところは、難しいカタカナをいっぱい使って、偉そうだったこと(笑)。従って、悪いことをやめて、いいことを引き継ぎという考えでいいと思います。例えば浅田彰さんの有名な発言で、「日本人は土人だ、これは自分も土人であるということも含めてのアイロニーだ」とかいうことを90年代に言っていたわけですが、ああいうのは本当によくない。そういう不毛な発言が、ニューアカというか80年代の思想全体の評価と一緒くたになって、当時の優れた可能性も潰れてしまっている。

 ポストモダニズムが流行した80年代思想の反動として、90年代以降は「リアルな現実に向かわなければならない」というモードになったわけですけど、その時に彼らが転向して見出したリアルな現実というのは、それこそまったくアンリアルなもので、いきなり丸山真男みたいな近代教養主義になってしまったわけですよ。もちろん僕も別の意味で丸山真男は大事だと思いますけど、そんなベタな近代主義に後退してどうするんだと思うわけですね。今目の前にある、近代が十分に達成されなかったにも関わらず消費社会が蔓延して皆がグズグズになってる日本社会の現実から、どうやって思想を立ち上げていくのかという問題に、まるで向き合っていない。

 そして立ち上げたところから、どうやって人々を巻き込んでいくのかという問題に対しては、そこである意味「消費されてもいい」という覚悟が必要だと思うんです。「思想は消費物であってはいけない」という立場もありますが、消費されない思想なんて端的に存在しないだけです。消費されたとしても残る核を持ちながら、消費されるということを受け入れるところでしか、本当の思想は立ち上がらない。だから『bis』は積極的にネタとして消費されるようにしていきたい。そういうインパクトのある運動にしていきたいと思います。

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