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  • 2009/06/08 掲載

逆境をチャンスに変える!米倉誠一郎氏が語る中堅中小企業経営者への提言(前編)

「新しい資本主義」創造へ向けたヒントとは?

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不況の嵐が吹き荒れる中で、日本の産業を支えてきた中堅中小企業はどこに活路を見いだせばよいのだろうか? 日本のイノベーション分野における第一人者として知られる、一橋大学 イノベーション研究センター長 米倉誠一郎氏は、「大量生産・大量消費が当たり前という幻想と決別して、一人ひとりを幸福にする“新しい資本主義”による日本再生を目指そう」と語る。米倉氏に、日本の企業が目指すべき未来の方向、そしてそれを実現するIT活用のポイントを伺った。
従来の経済モデルに疑問を持ち、新しい資本主義を創り出すべき時が来た

一橋大学 イノベーション研究センター センター長・教授 米倉誠一郎 氏

一橋大学
イノベーション研究センター センター長・教授
米倉誠一郎 氏

 このところ僕はあちこちで今の世界的不況を指して、「この経済はもう元に戻らないし、戻してもいけない」と言い、また同時に「新しい資本主義を創り出さなくてはならない」ということを提案してきました。

 ある意味、今回の金融危機というのは、いきすぎた資本主義が暴走した当然の帰結と言えるでしょう。本来ならば充分な経済力を持たない人々にまで家を3軒も4軒も買わせるような金融商品を開発してしまい、一方でそのリスクをきちんとチェックできなくてはならない格付け機関は手をこまねいたまま。それが行き着くところまで行き着いて崩壊したのが、今回の世界不況の発端です。

 しかし、問題はそれだけではありません。私たちすべての人間が、今までふつうだと思ってきた経済のモデル自体に大きな疑問を投げかけなくてはならない時期にさしかかっているのです。

 先日、僕はアメリカにて19ドルで購入したテニスパンツのチャックが壊れたため、日本の店に修理に出したところ、2,500円もかかるといわれました。自分でも一瞬「これは直すより買い直した方が安いかな」と思いましたが、実は経済を変えるという視点で見ると、それは正しい行動ではないと思うのです。

 確かに今はいちいち修理して使わなくても、使い捨てできる安い商品がふんだんにありますが、大量生産した中国製品を安価にばらまくだけでは、経済を刺激し、雇用を促進する動きは出てきません。「とにかく安ければいい」という考え方は、一見消費者にとってメリットをもたらすように思われがちですが、実はそうではありません。安売りをするためには、その原価を絞らなくてはなりません。そうなれば製品を作る労働者の賃金だって抑えなくてはならない。

 実は、私たちは消費者であると同時に生産者でもあります。その視点に立って見ると、安いものを大量に作って消費すればするほど、自分たちの給料も上がらないという悪循環が生まれてくるのがわかります。そこら中に安いものがあふれているのに、誰も豊かになれないという矛盾が続くわけですね。

 それよりもまず雇用を確保して、一人ひとりが満足な収入を手にできて、適正な価格でいろいろなものが買える社会にすることが必要です。良いものを最適な価格で購入できる、そういう豊かな購買力を持った人々のコミュニティが存在できるようになって、初めて世の中の経済がうまく回っていくようになるのです。

 これを読んで、もしあなたが「自分は一介のサラリーマンにすぎないから関係ない」と思っていてはダメです。一人ひとりが自分からベターワールドを創ろうと思わないと何も変わりません。「政府がやってくれる」はまずありえない。

 不況に直面してみんな「いつこの経済が元に戻るのか」とばかり言っていますが、そうではなくて、まったく新しいものを作り出さないと何も変わらないし、未来もないということがわかると思います。もうかつてのような経済には戻らないのです。

 こうした変化に備えるには一人ひとりが認識を大きく転換しなくてはなりません。ついこのあいだまで誰もがそういうものだと思って続けてきた経済的繁栄=ふつうの人が富を享受できない資本主義の形態がまちがっていること。もっと多くの人が等しく幸せになれる新しい資本主義を創り出さなくてはいけないことを、はっきりと自覚すべきです。

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