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  • 2011/11/10 掲載

金融規制監督を巡る最近の動きと金融機関のリスク管理の方向性--日本銀行 金融高度化センター副センター長 鈴木純一参事役

バーゼル3、G-SIFIsの最新動向

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サブプライムに端を発したリーマンショックから、EU圏を中心としたソブリンリスクまで、金融システムに対する不安が世界経済の1つの足かせになっている。多様な金融商品の登場、シャドウバンキングの台頭など、目に見えにくい金融機関のリスクをどう捉え、どう規制していこうと考えているのか。バーゼル3やG-SIFIsの動向について、日本銀行金融機構局 金融高度化センター副センター長 参事役 鈴木純一氏が語った。

国際金融危機と金融規制監督を巡る最新動向

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日本銀行
金融機構局
金融高度化センター副センター長
参事役
鈴木純一氏
 2011年10月4日、金融リスクマネジメントフォーラム2011が開催され、オープニングとなる基調講演で、「金融規制監督を巡る最近の動きと金融機関のリスク管理の方向性」と題して、日本銀行金融機構局 金融高度化センター副センター長 参事役 鈴木純一氏が、金融規制監督に関する国際動向と国内動向について言及した。

 講演の冒頭で、鈴木氏は2007年のサブプライムローン問題から現在の金融危機までを次のように振り返った。

「米国を中心とする証券化商品に関する問題に端を発した2008年のリーマンショック以降、欧米の金融市場全体の不安定化という問題が第二弾として起きた。当初、中央銀行の流動性サポートにより問題は解決すると思われていたが、2008年、2009年あたりからは、各国の財政支出が拡大し、国をあげての金融危機対応が求められた。その結果、(各国の財政は悪化し)2009年の終わりぐらいから、ギリシアでの財政赤字にはじまる、欧州ソブリン問題が本格化している」(鈴木氏)

 鈴木氏は現状についても「余談を許さない状況」としつつ、こうした金融システム不安を繰り返さないために、世界各国でさまざまなリスク分析が行われていると説明する。

「金融機関に限った問題としては、短期的な収益追求によるガバナンスの弱体化という問題、リスク管理手法への問題、さらにはサブプライムローン問題やオフバランス問題といった、リスクを見えにくくする多様な金融手法の弊害の部分があった。また、本来、金融機関に対して課される外部のステークホルダーからの健全な規律やプレッシャーも見られなかったことが指摘されている」(鈴木氏)

 そのため、金融規制や金融規制監督のあり方について、大幅に見直しが必要ではないかということが議論されている。その過程で行われた国際的な金融規制監督に関する動きとしてはまず、1974年にG10諸国の中央銀行総裁らにより創設されたバーゼル委員会とは別に、2009年には従来の金融安定化フォーラムを拡充したFSB(Financial Stability Board)が設立され、ここでG20あるいはG8の首脳と連携し、世界各国の金融安定化を進めた。

 その後、2010年11月のG20ソウルサミットでは、自己資本比率規制の強化、レバレッジ規制、流動性規制の導入などが決められ、2011年11月のG20カンヌサミットでは、グローバルで影響力の大きい金融機関=G-SIFIs(Global Systemically Important Financial Institutions)に対する損失吸収力についての問題が、最大の論点になると報告された。

 バーゼル3(バーゼル委員会が公表した銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制)では、自己資本比率の強化に加えて、レバレッジ比率による補完的な規制が行われることを説明。自己資本規制の強化では、普通株式というジャンルが新設される。また、のれんや無形固定資産など、資本性が薄い部分はその分が資産より控除されること、複数の金融機関での持ち合いによる資本の二重計上を防止することなどが決まっている。短期的な資金繰りについても流動性比率規制が新設され、短期と長期の2つの視点で規制が検討されている。そのほか、景気がよいときは自己資本が高くなる一方で、景気が悪くなると自己資本が目減りし、その結果貸し出しが抑制されてしまい、景気循環を増幅するような規制の体系を見直す必要性についても盛り込まれるという。

 さらに、金融システム全体の不均衡、あるいは市場全体の安定性を確保する「マクロ・プルーデンス」という視点に言及し、その考え方を次のように説明した。

「マクロ・プルーデンスとは、個別の金融機関が合理的な行動をとっても、金融システム全体ではバランスが取れていないことがあるという事実や、マクロの金融・経済との関係を抜きにして規制や政策はきめられないという教訓、さらにいえば、金融の技術革新や規制緩和に対応するため、さまざまな金融取引にキャッチアップしていく必要があり、その際に金融取引全体を見渡しておかないと必要な規制ができないという考え方のこと」(鈴木氏)

 金融システム全体に大きな影響を及ぼすG-SIFIsは、その他の金融機関よりも余分に責任を負う必要があるという発想が最新の金融規制監督の背景にある。今後はシャドウバンキング(投資銀行やヘッジファンド)への規制や、D-SIFIs(国内的に重要な金融機関)への規制、トレーディング勘定の見直しなども検討しているという。

【次ページ】日本の金融機関のリスク管理の方向性

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