• 2012/04/10 掲載

クラウド戦略に影響をおよぼす5つのトレンドを発表、米ガートナー

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米ガートナーは2日、2015年までのクラウド戦略に影響をおよぼす5つのトレンドを発表した。ガートナーは、企業が自社のクラウド戦略を定期的に更新しながら、そのトレンドを継続的にモニタリングすることが不可欠であるとの見解を示した。
 ガートナーが発表した、企業が計画策定時に考慮すべきクラウド戦略において、2015年まで今後3年間に加速、シフト、または最高潮に達すると考えられるサブトレンドは以下の5つ。

1.クラウドへの最適な投資を実現するための正式な意思決定プロセスの確立

 設備投資モデルから運用コスト・モデルへの移行、総合保有コスト(TCO) の削減、俊敏性の向上、複雑さの軽減など、クラウドは幅広いメリットをもたらすことが期待されている。またクラウドを使うことで、ビジネスにとってより付加価値の高い活動やビジネス・イノベーションの支援、また場合によってはリスクの軽減や、IT資源の重点をシフトさせることも可能となることが期待される。

 ただし、これらの期待されるメリットは、注意深く検証するとともに、安全性・透明性の低さ、パフォーマンスと可用性に対する不安、ベンダー・ロックイン、ライセンスの制約、統合の必要性など、さまざまな観点で検討する必要があるとガートナーは指摘。個々のクラウド・サービスを評価する項目は多様化しており、状況が複雑化する要因になっているという。

2.ハイブリッド・クラウド・コンピューティングへの流れは不可避

 ハイブリッド・クラウド・コンピューティングとは、企業外のクラウド・コンピューティング・サービスと企業内のインフラストラクチャやアプリケーション・サービスを組み合わせ、連携させた環境を指す。時間の経過とともに、ハイブリッド・クラウド・コンピューティングは、企業内や企業外の複数のクラウド・プラットフォームで構成された1つの「クラウド」によって、ビジネス要求の変化に合わせて必要に応じて利用できる統一モデルへと収斂する。

 ガートナーは、企業の短期的な活動をアプリケーションおよびデータの統合に集中させ、企業内や企業外の固定アプリケーションとハイブリッド・ソリューションを連携させることを推奨するという。パブリック・クラウド・アプリケーション・サービスまたはパブリック・クラウド環境で実行しているカスタム・アプリケーションを使用している企業は、これらを社内システムと統合してハイブリッド環境を構築するためのガイドラインと標準を確立する必要がある。

3.クラウドの利用を支援するクラウド・サービス・ブローカー

 クラウド・コンピューティングが広く普及するのに伴い、その利用を支援する必要性も高まる。クラウド・サービス・ブローカー (CSB) は、クラウド・コンピューティング環境で仲介の役割を果たすサービス・プロバイダーとなる(参考リンク:クラウド・サービス仲介事業(CSB)はSIerの新しい形になるか?)。ガートナーによれば、2011年以降、CSBのコンセプトに対する関心が高まっているが、IT部門であるかビジネス部門であるかに関係なく、IT部門の関与なしにクラウド・サービスを利用するユーザーが増えるのに伴い、このトレンドは今後3年間で加速すると考えられるという。

 ガートナーは、この状況に対処するために、IT部門はクラウドの利用を支援するとともに、社内の各ビジネス部門がIT部門のアドバイスやサポートを気軽に求められる購買プロセスを確立することで、自社にサービスを提供するCSBとして自らをどのように位置付けるべきかを考えなければならないとする。またエンタープライズCSBのアプローチは、既存のプロセスとツール(社内ポータルやサービス・カタログなど)をカスタマイズすることで実現可能だと指摘している。

4.クラウド中心のデザインは必須条件

 多くの企業は、まず現在の作業負荷をクラウド・システムやアプリケーション・インフラストラクチャへ移行することを考える。物的・人的資源の変動が激しい負荷や、アプリケーションが横方向の拡張性に向いている場合であれば、このアプローチはメリットをもたらす可能性があるが、クラウド・モデルの価値を完全に引き出すためには、クラウド・モデルならではの特性や制限、機会を念頭にアプリケーションをデザインしなければならないとガートナーは指摘する。

 同社は、単にビジネスの作業負荷を移行させるだけではなく、グローバル・レベルのアプリケーションを実現するクラウドの価値を完全に引き出すために、クラウド向けに最適化したアプリケーションを構築することを推奨しているという。

5.未来のデータセンターと運用モデルに影響を与えるクラウド・コンピューティング

 パブリック・クラウド・コンピューティングにおいて、企業はサービスの消費者としての役割を果たし、クラウド・サービス・プロバイダーはデータセンターおよびこれに関連する運用モデルを含め、導入に伴うさまざまな処理を行う。ここで、企業が自社データセンターを構築した場合、このようなクラウド・サービス・プロバイダーの導入モデルの影響を受けることになる。ガートナーは、企業が今後データセンターおよびインフラストラクチャへ投資する際には、俊敏性と効率性を高めるために、クラウド・コンピューティングのコンセプトを適用することを推奨しているという。

 ガートナーのバイス プレジデント、ガートナー・フェローのデイヴィッド・カーリー氏は、企業のクラウド戦略について、「クラウド・コンピューティングによってソフトウェアとハードウェアに対する従来のライセンス・モデルに伴う制約が軽減され、企業と個人の両方がITサービスをどのように提供するのか、どのように利用するのかを選べるようになった。クラウド・コンピューティングには、ITのあらゆる側面、またユーザーがアプリケーションや情報、ビジネス・サービスへアクセスする環境に大きな影響を及ぼす潜在的な力がある」と、その重要性を強調している。

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