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  • 2012/12/04 掲載

サイバーシティとサンドボックス、仮想環境を活用した2つのセキュリティ対策

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大量破壊兵器を搭載した列車が街に向かっているという想定で、途中の跳ね橋の制御システムをハッキングし、持ち上げることで列車の侵入を止めるといった訓練や、医師がコーヒーショップで接続したWi-Fiのアクセスポイントからアカウント情報を盗み、病院システムを乗っ取って入院中の要人暗殺の企てを防止する訓練──これらはすべて米国空軍が開発した仮想空間「サイバーシティ」上で実際に行われていることだ。今回は、仮想空間や仮想環境で行われている2つのセキュリティ対策について紹介しよう。

執筆:フリーランスライター 中尾真二

執筆:フリーランスライター 中尾真二

フリーランスライター、エディター。アスキーの書籍編集から、オライリー・ジャパンを経て、翻訳や執筆、取材などを紙、Webを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは言わなかったが)はUUCPのころから使っている。

サイバー軍事演習用の街「サイバーシティ」

photo
(※写真は本文とは関係ありません)
 米ワシントンポストは11月27日付の記事で、ニュージャージーのCounter Hackという会社が、米国空軍から依頼されたプロジェクトにより、発電所、鉄道、給水塔、病院、さらにWi-Fiが使えるコーヒーショップまで、街ひとつをまるごと再現した「サイバーシティ(CyberCity)」を開発し、稼働させていると伝えた

 この仮想的な街には、1万5000人の「人々」が生活しており、それぞれEメールのアカウントや銀行口座も持っている。さらに、サイバーシティと連動したミニチュアセットもあり、たとえば信号機へのサイバー攻撃などが起きれば、ミニチュア上でも確認ができるようになっている。

 サイバーシティは、空軍の関係者しかアクセスできないようになっており、街に仕掛けられたサイバー攻撃や破壊活動をいかに防ぐかをシミュレートする。あるいは、物理的な攻撃をサイバー兵器やハッキングの手法で防ぐ方法などを、サイバー兵士に訓練させる。

 まるでSF映画のような話で、にわかには信じがたいが、米国ではこのような「サイバーレンジ」でのシミュレーションや研究はさかんに行われている。

サイバーレンジとは
ここでいうレンジとは、射撃場など軍事練習などをする場所の意味。つまりサイバーレンジとは、サイバー空間の演習場といった意味になる。ワシントンポストの記事では、サイバー攻撃のための空間だけでなく、実戦や兵器などをシミュレートするサイバー空間もサイバーレンジと呼んでいるようだ。普通のシミュレーションと違うのは、対象をそのまま数値化して計算するのではなく、現実の空間や街中、戦場などのモデル空間(仮想空間)用意して、そこでの対象の動きや効果などをみることになる点だろう。

 米軍が、イラク侵攻の際、国内の砂漠地帯に擬似的なイラクの街を再現して特殊部隊が訓練を行っていたという報道を覚えている人もいるだろう。サイバーシティも、サイバー戦争やサイバー兵器が現実のものとなった現在では、米軍にとっては必然であり、驚くべきことではないのかもしれない。

関連記事:ラック伊東寛氏:サイバー戦争、このままいけば日本は敗北必至

 記事ではさらに、大量破壊兵器を搭載した列車がサイバーシティに向かっているという想定で、途中の跳ね橋の制御システムをハッキングし、持ち上げることで列車の侵入を止めるといった訓練や、医師がコーヒーショップで接続したWi-Fiのアクセスポイントからアカウント情報を盗み、病院システムのWebサイトにSQLインジェクションを行って、外からシステムに侵入し、入院中の要人暗殺を企てようとするグループに対抗する訓練などを実施していると紹介している。

【次ページ】企業セキュリティでも注目される仮想環境

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深刻化する病院サイバー攻撃に、「ランサムウェア交渉人」はアリかナシか?

 どうにも、この記事を書いたライターは映画やドラマ、漫画やアニメ由来のフィクションの知識で述べているようだ。バグバウンティ制度というものはあくまで開発ベンダやセキュリティベンダが任意で実施しているものであって、ベンダによってはバグバウンティ制度を取り入れていないところもある。危険性や重要度に応じて支払う報奨金というものは決まっている。そのため危険性や重要度の低いバグに対しては報奨金の金額は安くなる。支払われる報奨金というのは価格帯が既に定められているので交渉したからといって大きく変わるわけではない。交渉人が出てくる余地がないし、交渉人が仲介手数料なんて取ろうものならば原価割れしてしまうわけだ。そして、バグバウンティ制度を実施していない企業に交渉人が脆弱性情報の買取を持ちかけようものならば、恐喝罪で訴えられる可能性さえある。
「通常は、発見した脆弱性や攻撃手法を自分で利用する(犯罪を犯す)より、相手に高く買ってもらったほうがよいと考える。」と記事では書いてあるが、それも違う。仮に悪意を持ったハッカーが危険な脆弱性を発見した場合、自分でその脆弱性を利用した攻撃をして犯罪を犯すと警察に逮捕されるリスクがある。自分で犯罪さえ行わなければ警察に逮捕されるリスクはゼロだ。だから自分では犯罪は行わない。脆弱性情報を買い取ってくれる企業があればお金で売って利益を得る。ただそれだけなのだ。実際にサイバー犯罪に関わって犯罪収益を得ている反社会組織でも、脆弱性情報の多くは悪意を持ったハッカーではなくセキュリティ会社(=ホワイトハッカー)から買っている。サイバー攻撃自体は自身は行わずに買い取った脆弱性情報をもとに作成した攻撃ツールの販売やクラウド上に攻撃用プラットフォームを構築して時間貸ししてクラウドサービスとして収益を上げている。現代では脆弱性を発見する人、発見者から脆弱性情報を買って収集して販売する人、攻撃ツールを作る人、攻撃ツールを売る人、攻撃ツールを使って攻撃する人といったように各々関係のない人や組織が分業している。
 身代金支払いの是非に関して述べると、現行法では身代金の支払い自体を直接罰する法律はない。それならば身代金を払ってしまえばよい、とはならない。例えば、ランサムウェアならば様々な要素を考慮した上での経営判断が必要となる。以下の理由で正当化が出来るか、ということは最低限考える必要がある。
 1. 復旧コストより身代金の方が安価
 2. 大量の個人情報など機微性の高い情報漏えいのおそれ
 3. 重要インフラサービスの停止のおそれ
 4. 人の生命・身体が害されるおそれ
1.と2.に関しては紛れもなくその場しのぎでしかないのでまともな知性のある経営者であれば経営判断としての身代金払はしない。
3.に関しては微妙な問題なので、細かい分析をした上で社会への影響を考慮した上での経営判断となる。
4.に関しては仕方がない。払うしかない。
 ここで意識していただきたいことは、ランサムウェアの身代金の支払いに対する対応は経営者が判断すべき経営問題そのものである。現場のエンジニアや担当部署の責任者が判断するのではなく、その企業の経営方針として経営者が判断を下すべき経営問題ということだ。
 この記事の2ページ目でしきりに「交渉人」の必要性をしきりにアピールしているが、いい年した大人が妄想と現実を混同するのをいい加減にするべきだ。きっと、この記事を書いたライターの人は交渉人をモデルにした映画かドラマでも見た影響でも受けたのだろう。
 交渉人というのは本質的には犯人の脅迫行為を容認することだけではない。そもそも、犯人側にとって身代金事件の成功の鍵は交渉人が握っている。身代金支払いにより犯人側が犯罪収益を得るための功労者であることから共同正犯(刑法60条)が成立してしまう。つまり、刑法上は身代金を要求してきた犯人グループの一員とみなされてしまうわけだ。
 記事では「ランサムウェア交渉人を運用するためには、警察に犯人を特定、摘発できるくらいのサイバー捜査能力が必須となる。」と書いてあるが、犯人を特定、摘発できるのであれば犯人逮捕とともに暗号鍵も押収できるからから身代金を支払う必要がないではないか。この記事を書いたライターは自身の書いた言葉の意味を理解してこの記事を書いているのだろうか。犯罪を正当なビジネスにしてしまうこと自体が非現実的だし、あまりにも考えが幼稚で虚構と現実を取り違えたような記事を書いている暇があれば、もっと社会の勉強をし直した方が佳いだろう。もし、このライターがジャーナリストの肩書を今後も掲げるつもりならば、この記事のような妄言を書き連ねる前にはよく調査と考察を重ねて自身の考えを遂行する必要がある。今回は半田病院の事件を起点としているので、デジタルフォレンジック研究会の医療分科会が公開している資料の『医療機関向けランサムウェア対応検討ガイダンス』(https://digitalforensic.jp/wp-content/uploads/2021/11/medi-18-gl02_compressed.pdf)を一読して勉強して出直してくることをおすすめする。

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