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  • 2013/02/08 掲載

白熱!次世代イノベーター大会議、ユーザー企業はITによる革新が可能か?

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「受け身で目的意識のない姿勢では、いつまでたっても真の改革は進まない」。「本当にITでイノベーションを起こしたいのか」。有志による団体、次世代ICT営業会議が主催するワールドカフェ形式の討論会議「会社を変革する、社会を変革する、次世代イノベーター大会議」では、そんな厳しい疑問がITを利用する側の企業(ユーザー企業)の面々に投げかけられた。「IT活用に対する主体性がなく、使いこなせていない」。「新しいことをしようとすると何もしない人が足を引っ張る」。同会議では、ユーザー企業に所属する参加者がこうした思い思いの意見をぶつけ合った。当日の様子をレポートする。

谷崎朋子

谷崎朋子

企業向けIT専門誌の編集記者を経て、フリーランスのライター兼翻訳家(英日)。ソフトバンク ビジネス+ITでは主に戦略やイノベーションなど経営施策に関連するIT関係の記事執筆を担当している。

主体性のないユーザー企業にイノベーションは起こせない

 ITに期待感はあるが、メリットが感じられない。そんなユーザー企業の悩みも、実は利用する側の姿勢に原因があるのではないか。参加型会議イベント「会社を変革する、社会を変革する、次世代イノベーター大会議」では、そんな疑問が参加者に投げかけられた。

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営業創造
新事業推進室
戦略デザイン担当
オープン・イノベーター
古杉 和美氏
 本会議を主催する次世代ICT営業会議は、これまで「これからのITを考える大会議~ユーザーと営業が共に考えるワールドカフェ~」、「ユーザーが考える「IT」を使いこなすための会議」などを開催し、ユーザー企業側、ITベンダー側が入り乱れて、ITの効果的な活用方法について議論してきた。

 そうした中、今回の「会社を変革する、社会を変革する、次世代イノベーター大会議」は、ユーザー企業に限定して参加者を募集(翌日にはITベンダー限定の大会議も開催された)。従来の議論の中で深まってきた利用する側の問題点、ユーザー企業の受け身の姿勢について、問題点をあぶり出す取り組みを行った。

 「ITを所有することで満足し、どう活用したいかという明確な目的意識を持たない企業が多い。まずイノベーションを起こすための戦略があって、その後でITの活用がある。逆ではない」。次世代ICT営業会議のメンバー、営業創造の古杉和美氏は、これまでの議論をこう振り返った。

 さらに「企業は、顧客に商品サービスを通じた『価値提供』による貢献の対価として、売り上げが得られる。これが基本的な活動であり、原理原則」。そのために組織が一つになって、一つの目的に向かうことが大切だが、「多くの企業では顧客への貢献よりも社内調整やうまくやることに腐心している」。

 では、この現状をどうすれば打破できるのか。「1つの目標に向かって変化し続ける組織でなければ顧客貢献力は高まらない。イノベーションはその結果である。イノベーターはそれをやり始める人であり、そうでない人を巻き込めなければ組織の変革は始まらない。」と大会議を参集した意義を訴えた。

 こうして幕を開けた本会議では、次の4つのテーマ(ラウンド)で解を探った。

R1:自分が所属する組織の状況
R2:組織の真の課題は何か? その課題を解決するには何が必要か?
R3:組織は何を目指せば変わるのか? どのように変えられるのか?
R4:明日からどう行動するか? 内部から変革するにはどうすればよいか?

 まず同会議は、参加型のワールドカフェ形式で行われる(詳細は過去の記事などを参照)。簡単に説明しておくと、4~5人規模のグループに分けられた参加者がグループをシャッフルしながら議論するというもの。ブレーンストーミングに近い活発な意見交換ができ、同じ目的に向かって前進するという一体感と、自分の意見の整理と意欲向上が促される。

組織の目標を定めて統括できる人がいない?

 今回は全体をラウンド1~4(以下、R1~R4)に分割。それをさらに2つのブロックに分け、R1とR2の後、「ザ・ファシリテーター」の著者で、組織開発の分野で有名な森時彦氏による講演を挟んだ。議論で出された意見は各テーブルに置かれた模造紙に書き込まれ、思考を刺激する材料として活用される。

次々と模造紙に書き込まれるアイディアや課題

 筆者が把握できた範囲でR1とR2で出された意見を簡単にまとめたのが以下だ。

【R1:自分が所属する組織の状況】
・IT部門がガラパゴス化している
・IT部門とユーザー側の間をつなぐ人が必要?
・縦割り組織でも横断的な会議は実施している。しかし、他部門に関する知識がないため、誰からも何の意見も上がってこない
・年功序列と能力主義の問題。年月を経たこそ得られる経験や人脈は重要
・新しい技術は若い人が最も理解できる部分。部門長は経験豊富な年輩者でよいが、プロジェクトリーダーは若い人がやるべき

【R2:組織の真の課題は何か? その課題を解決するには何が必要か?】
・グランドデザインからビジョンを実現するためにブレイクダウンするとき、手法を指導するのではなく、ビジョンをきちんと伝えることが重要。実現方法は、各自が考える部分
・無駄に委員会が発足する。委員会メンバーは何も責任がなく、“べき論”だけを語って終わる
・そもそも課題を俯瞰して理解し、それをどう回せば実現できるかを指示できる人がいない。情報伝達や組織化などのシステム作りができていない。しかも、そうしたノウハウや人脈などがある人は、そのアドバンテージを自分のポジショニングに利用しようとしてオープンにしてくれないこともある

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リバーサイド・パートナーズ
代表パートナー
工学博士
森時彦氏
 2ラウンド終了後、森時彦氏による講演「”結果”の出ない組織はこう変えろ! 組織トレーニングの勧め」が行われた。「ザ・ファシリテーター」の著者である森氏は、組織変革のための組織トレーニング方法論を実践してきた。

 講演の冒頭で、森氏はプールに入れられたネズミの実験を取り上げた。足の付かないプールに入れられたネズミは無気力になり、数時間後に死んでしまった。しかし、足の付く場所が1ヶ所でもあったネズミは、いつまでも生き続けたという。「足の付かないプールにいるのが、今の日本企業。長らく続く経済不況に、日本企業は無気力になっている可能性がある」と森氏は懸念する。

 しかも、一般的に日本企業には多様性がない。森氏はとある企業で講演したとき、集まった社員は全員日本人の男性で、日本の大学を出て、小中高と学級委員を経験した人ばかりだったと話す。「ダイバーシティのないところでイノベーションはどう生まれるのか、考えさせられた」(森氏)。

【次ページ】組織が変わるための組織トレーニング

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