• 2013/02/21 掲載

機密情報を守る2つの視点、アクセスコントロールと監査の融合で変化する脅威と戦う

記事をお気に入りリストに登録することができます。
標的型攻撃がますます高度化・複雑化するなど、機密情報とシステムを取り巻く脅威は刻々と変化しています。個人情報や知的財産、国家機密などを、場当たり的ではなく、効率よく守るためにはどうすれば良いのでしょうか。「変化する脅威、変化しない標的」および「アクセスコントロールと監査の融合」という2つの視点から情報中心のセキュリティ対策を考えてみましょう。

日本オラクル 北野晴人

日本オラクル 北野晴人

日本オラクル 製品戦略統括本部 担当ディレクター CISSP-ISSJP
1964年東京生まれ。2種通信事業者、システムインテグレータ、外資系通信機器ベンダなどを経て2001年から現職。データベース、アイデンティティ管理を中心にオラクル製品のセキュリティを担当中。CISSPアジア・アドバイザリー・ボードメンバー、情報セキュリティ大学院大学博士前期課程修了(情報学)。

変化する脅威と変化しない標的

 今世紀初頭から今日に至るまでの過去10年間を振り返ると、サーバや内部ネットワークなど、情報システムに対する攻撃・侵入の方法についてはさまざまな手段が登場し、変化を続けてきました。たとえば、SQLインジェクションが多くの被害を出すようになったのはおおむね2005年からですし、メールを使った標的型攻撃(以前はスピア型メールとも呼ばれるものがありました)は警察など一部の官公庁をターゲットにして行われていることが2006年頃から知られており、話題になるほど多くの被害が顕在化したのは2011年からです。

 これはシステムを保有する企業・組織にとって、変化する脅威に対抗して常に新しい境界防御対策を実施し続け、そのための費用も継続して負担し続けた歴史ではないでしょうか。しかも突発的に現れる新たな脅威に対しては、あらかじめ計画的に予算を組むということができませんから、予算捻出、という苦労がつきまとうことになります。

画像
脅威の変化と変わらない標的(実際はこの図にあるように新しい攻撃方法が発見されてから、多くの被害が出るまでには数年のタイムラグが発生することがあります)

 一方、攻撃者が標的とする情報、つまり保護するべき機密情報が何であるか(=個人情報、知的財産など)という事実、およびその情報の多くがシステム内部ではデータベースに格納されているという事実は、過去10年間変わっていませんし、今後も大きく変わることはなさそうです。だとすれば、情報システムを構築する際に確実にデータベースを保護する対策を組み込んでおけば、それらはシステムが使われ続ける限り、ずっと有効で有り続け、中長期的にみて攻撃・侵入方法の変化に強いシステムを実現できると考えられます。

 標的型攻撃の多発によって、従来の境界防御型セキュリティ対策(ファイア・ウォールやIDS:侵入検知システムなど)だけでは防ぎきれない脅威が数多く存在することがわかった今、攻撃者の標的である「情報そのもの」を中心に守る方向へとセキュリティ対策をシフトしていく必要があります。

 情報を中心としたセキュリティ対策としてデータベースを守るための対策には多くの要素がありますが、今回は不正アクセスを遮断するためのアクセスコントロールと、問題早期発見のための監査・モニタリングに焦点を当てて紹介します。

SQLレベルでのアクセスコントロールと監査の融合

 通常、データベースに対するアクセスコントロールを考えるときには、ファイア・ウォールやルータのアクセスコントロールリスト(ACL)、データベース側での接続元IPアドレスによる制御などを使ったネットワークレイヤでの制御と、SQLの中身やデータベース上のユーザー名など、ソフトウエアで実行する上位レイヤ側の制御が存在します。

 これらは両方をバランス良く使うことが望ましいのですが、現実はネットワークレイヤで制御してあるから大丈夫、ということで上位レイヤ側での制御はあまり重視されていないことが多いと思われます。しかしこの状態では、標的型攻撃などで内部ネットワーク側に侵入された場合、本来アクセスを許可されたパソコンなどからのデータベースに対する攻撃は防げません。

 こうした問題を解決するためには、ネットワークレイヤの制御に加えて、データベースを保護するため、SQLのレイヤで制御を行う必要があります。たとえば、データベースに送られてくるSQL文の中身をネットワーク上でチェックし、不正と思われるSQLを遮断することができれば、SQLインジェクションのような外部からの攻撃であっても、標的型攻撃のような内部ネットワーク側からの攻撃であっても、一元的に防御することができます。

【次ページ】ログ収集の意味と分析方法

関連タグ

あなたの投稿

関連コンテンツ

深刻化する病院サイバー攻撃に、「ランサムウェア交渉人」はアリかナシか?

 どうにも、この記事を書いたライターは映画やドラマ、漫画やアニメ由来のフィクションの知識で述べているようだ。バグバウンティ制度というものはあくまで開発ベンダやセキュリティベンダが任意で実施しているものであって、ベンダによってはバグバウンティ制度を取り入れていないところもある。危険性や重要度に応じて支払う報奨金というものは決まっている。そのため危険性や重要度の低いバグに対しては報奨金の金額は安くなる。支払われる報奨金というのは価格帯が既に定められているので交渉したからといって大きく変わるわけではない。交渉人が出てくる余地がないし、交渉人が仲介手数料なんて取ろうものならば原価割れしてしまうわけだ。そして、バグバウンティ制度を実施していない企業に交渉人が脆弱性情報の買取を持ちかけようものならば、恐喝罪で訴えられる可能性さえある。
「通常は、発見した脆弱性や攻撃手法を自分で利用する(犯罪を犯す)より、相手に高く買ってもらったほうがよいと考える。」と記事では書いてあるが、それも違う。仮に悪意を持ったハッカーが危険な脆弱性を発見した場合、自分でその脆弱性を利用した攻撃をして犯罪を犯すと警察に逮捕されるリスクがある。自分で犯罪さえ行わなければ警察に逮捕されるリスクはゼロだ。だから自分では犯罪は行わない。脆弱性情報を買い取ってくれる企業があればお金で売って利益を得る。ただそれだけなのだ。実際にサイバー犯罪に関わって犯罪収益を得ている反社会組織でも、脆弱性情報の多くは悪意を持ったハッカーではなくセキュリティ会社(=ホワイトハッカー)から買っている。サイバー攻撃自体は自身は行わずに買い取った脆弱性情報をもとに作成した攻撃ツールの販売やクラウド上に攻撃用プラットフォームを構築して時間貸ししてクラウドサービスとして収益を上げている。現代では脆弱性を発見する人、発見者から脆弱性情報を買って収集して販売する人、攻撃ツールを作る人、攻撃ツールを売る人、攻撃ツールを使って攻撃する人といったように各々関係のない人や組織が分業している。
 身代金支払いの是非に関して述べると、現行法では身代金の支払い自体を直接罰する法律はない。それならば身代金を払ってしまえばよい、とはならない。例えば、ランサムウェアならば様々な要素を考慮した上での経営判断が必要となる。以下の理由で正当化が出来るか、ということは最低限考える必要がある。
 1. 復旧コストより身代金の方が安価
 2. 大量の個人情報など機微性の高い情報漏えいのおそれ
 3. 重要インフラサービスの停止のおそれ
 4. 人の生命・身体が害されるおそれ
1.と2.に関しては紛れもなくその場しのぎでしかないのでまともな知性のある経営者であれば経営判断としての身代金払はしない。
3.に関しては微妙な問題なので、細かい分析をした上で社会への影響を考慮した上での経営判断となる。
4.に関しては仕方がない。払うしかない。
 ここで意識していただきたいことは、ランサムウェアの身代金の支払いに対する対応は経営者が判断すべき経営問題そのものである。現場のエンジニアや担当部署の責任者が判断するのではなく、その企業の経営方針として経営者が判断を下すべき経営問題ということだ。
 この記事の2ページ目でしきりに「交渉人」の必要性をしきりにアピールしているが、いい年した大人が妄想と現実を混同するのをいい加減にするべきだ。きっと、この記事を書いたライターの人は交渉人をモデルにした映画かドラマでも見た影響でも受けたのだろう。
 交渉人というのは本質的には犯人の脅迫行為を容認することだけではない。そもそも、犯人側にとって身代金事件の成功の鍵は交渉人が握っている。身代金支払いにより犯人側が犯罪収益を得るための功労者であることから共同正犯(刑法60条)が成立してしまう。つまり、刑法上は身代金を要求してきた犯人グループの一員とみなされてしまうわけだ。
 記事では「ランサムウェア交渉人を運用するためには、警察に犯人を特定、摘発できるくらいのサイバー捜査能力が必須となる。」と書いてあるが、犯人を特定、摘発できるのであれば犯人逮捕とともに暗号鍵も押収できるからから身代金を支払う必要がないではないか。この記事を書いたライターは自身の書いた言葉の意味を理解してこの記事を書いているのだろうか。犯罪を正当なビジネスにしてしまうこと自体が非現実的だし、あまりにも考えが幼稚で虚構と現実を取り違えたような記事を書いている暇があれば、もっと社会の勉強をし直した方が佳いだろう。もし、このライターがジャーナリストの肩書を今後も掲げるつもりならば、この記事のような妄言を書き連ねる前にはよく調査と考察を重ねて自身の考えを遂行する必要がある。今回は半田病院の事件を起点としているので、デジタルフォレンジック研究会の医療分科会が公開している資料の『医療機関向けランサムウェア対応検討ガイダンス』(https://digitalforensic.jp/wp-content/uploads/2021/11/medi-18-gl02_compressed.pdf)を一読して勉強して出直してくることをおすすめする。

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

おすすめユーザー

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます