- 2014/04/25 掲載
「グローバルITガバナンス」の先進事例と成功要件<後編>(2/2)
グローバル競争に対応したトップダウンアプローチの必要性
3) ガバナンス確立の準備の推進海外のように、CIOのヘッドハント、グローバルなシステム部門の組織改革、予算と人事の権限のCIOへの集中、といったトップダウンアプローチを取らず、また、本社システム部門にグローバルにリーダーシップを発揮できる人材が育っていない日本企業の場合、グローバルITガバナンスを確立するには、以下に示す「準備」が必要になります。
(1) 各国現地法人、事業部のシステム部門人材を、グローバル全体最適へと意識改革する
(2) グローバルに仕事ができる人材を育成・獲得する
(3) 海外グループ企業システム部門から日本本社のシステム部門への信頼を獲得する
(4) 経営者に、グローバル全体最適の理解を得た上で予算を確保する
事例では、グループのシステム人材の意識改革は、まず最初、定期的に日本のシステム部門長が各国システム部門のトップに会ってコミュニケーションを行うところから始めています。そこで、IT中計の考え方や将来構想などを議論。グローバル全体最適の意識付けを行ってきました。現在は、この動きが、グローバルITミーティングへと発展しています。
グローバルに仕事ができる人材については、経験者のキャリア採用、育成が必要です。グローバル全体最適を進める中で、海外での仕事は増えますから、人材育成の場は得られるはずです。
海外グループ会社からの信頼獲得は、本社システム部門がリーダーシップを発揮する上で重要です。ネットワークやコミュニケーション基盤などのインフラの確立と提供や、グローバルなPCの集中購買など、グループ各社がメリットを得る施策を進めることが必要です。
経営者には、グローバルなIT施策によるリターンを説明し、先行する事例を紹介し、理解を得て、予算確保を行うことが求められます。
4) トップダウンによるスピードの確保
上記3つの成功要件は、日本企業では、前半に示したトップダウンなグローバルITガバナンスの確立が難しいという前提で示したものです。しかし、それで良いと安心はできません。
海外大手企業は、2000年過ぎから着手し、2007年にはグローバルグループのインフラからデータベース、アプリケーション、業務プロセスまでを標準化・統合しています。これら企業では、日本の現地法人に管理間接部門はほとんど残っておらず、中国やインドなどのシェアドサービスセンターが、世界にサービスを提供しています。サプライチェーンマネジメントや集中購買なども、事業やローカルを越えて、世界レベルで展開されています。今回調査した日本の大手企業で、2014年3月時点で、このような改革を完了したところはありませんでした。今回調査した海外企業と国内企業の差は、7年以上開いていることになります。
現在の日本企業のボトムアップなグローバルITガバナンスでも、いずれは海外企業に並ぶ改革を達成することができるでしょう。また、経営側のグローバル化が進まなければ、システム部門だけが先んじても改革は難しいことは、既に紹介したとおりです。しかし、既に海外大手企業に7年遅れている中で、改革のスピードを上げなければ、グローバル競争で優位に立つことは難しいはずです。改革のスピードを上げるならば、トップダウンなガバナンスが必要なことに異論の余地はないでしょう。グローバルな競争環境を考えた場合、多くの日本企業は、ゆっくりと改革に取り組む余裕はないものと思われます。
経営トップ、経営幹部が、グローバルな業務改革を、自らリードする重要な経営課題と認識しなければ、ビジネス側戦略としてのグローバル業務改革の推進、専任のCIOの配置や、CIOへのKPIコミットメントの要請、システム組織・権限のグローバルな改革などは進められない可能性があります。まず経営層が、先行企業のグローバル業務改革の実態と効果を理解し、これをシステム部門に任せておけばいい課題ではなく、経営トップが自らリードする重要な経営課題であることを認識することが先決です。
*本事例以外の先進事例調査レポートを紹介しています。ご参照下さい。
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