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  • 2014/04/25

「グローバルITガバナンス」の先進事例と成功要件<後編>

前回から2回にわたって、グローバルITガバナンスに関わる国内、海外の大手企業10社の事例調査結果を紹介しています。今回は、事例調査から浮かび上がった、グローバルITガバナンス確立の成功要件を紹介します。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

グローバルITガバナンスの4つの成功要件

 今回調査で明らかになった、グローバルITガバナンス確立の成功要件は、以下の4つです。

1) モデルの創造
2) ビジネス側戦略の明確化
3) ガバナンス確立の準備の推進
4) トップダウンによるスピードの確保

1) モデルの創造

 グローバルITガバナンスの確立では、まずガバナンスのモデルを創造することが重要です。ここでモデルとは、ガバナンスの目的(本書ではビジネスへの提供価値)達成のための課題を確実に解決する、基本的な考え方、ロジックのことです。

 例えば、グローバルに業務プロセスとアプリケーションを標準化、統合するにあたり、「ファンクション(業務プロセスの大きな単位:生産、会計など)別の標準化を進めながら、いかにしてローカル(地域、国)と事業に対するアライメント(整合性)を実現するか」という課題があります。

<ガバナンスモデルの例>
ガバナンスの目的現行のITのムダを排除し、ITの投資効率を高め、インフラやアプリなどをシンプル化、標準化、統合し、ITコスト全体を削減すると共に、新規投資に回せるキャッシュを増やす。
解決すべき課題ファンクション別の標準化を進めながら、いかにして事業、ローカル(地域、国)との間でアライメント(整合性)を実現するか。
モデル(解決のロジック)ビジネス・インターフェーサー(B/I)
事業単位、ローカル(地域)単位に配置し、ファンクションの打ち出す方針や施策と、事業、ローカルとの整合性を取る組織設立。
具体策
画像
この課題を解決するモデルとして、B/I(ビジネス・インターフェーサー)というモデルがあります。B/Iは、事業単位、ローカル単位に配置し、事業とローカルを対象に、ファンクションが打ち出す方針や施策との整合性を取る組織です。B/Iは、ビジネス側の要求を把握して本社システム部門に伝えると共に、本社としての施策の事業部、ローカルへの展開を進めます。

 他の事例では、世界に配したIT人材を、CIOが描く方向に向けて導くために、ビジネスの戦略からスタートし、システム部門が何を行うかを明確化したシステム部門のオペレーションモデルを創造している企業があります。これは、ビジネス側の目指すビジョン(5年後、2~3年後、12~18ヶ月後)を、目指すべきビジネスアーキテクチャー、ITアーキテクチャーに展開し、現状とのギャップを埋めるプランを作成し、システム化して運用していくことで、このギャップを埋めるというオペレーションモデルです。

 モデルを創造することで、いきなり細かな組織構造や制度の議論に入る前に、正しく課題を認識し、それを解決する方法を追求できるため、目的の確実な達成が可能となると考えられます。

 先に示した、「まずビジネス側がBPR推進組織を作り、業務改革を推進し、これをシステム部門が並走して支えていく」という考え方も、システム部門主導によるグローバル業務改革の限界を打破するモデルであると考えられます。

 今回の調査では、日本の大手企業で、海外大手企業のような、ビジネス側戦略に基づいて、トップダウンなグローバルITガバナンスの確立を進めているところはありませんでした。これにはいろいろな背景があると思われます。中には、前半で紹介した「日本と海外を統一して考えるか?」という、判断の難しい論点もあります。

 一方で、コミュニケーションを中心とするボトムアップなガバナンス方式は、グローバルグループの自主性を引き出し、互いが助け合いながらグループのビジネスに貢献することを可能にします。実際、日本企業の事例では、各国の力を引き出して、共同のプロジェクトを起こし、グローバルグループに貢献する動きが出てきています。

 このような中で、日本企業として、競争力のある独自のモデルの確立が求められると考えます。

2) ビジネス側戦略の明確化

 グローバルITガバナンスの目的を、ローカルや事業を越えたグローバルな業務改革に置く場合、これをシステム部門主導で行うことは難しいはずです。事業や各法人を越えての業務プロセスとアプリケーションの標準化、統合が果たせなくなったり、たとえこれが実現できても、ビジネス側が標準化、統合された業務プロセスとアプリケーションを用いて、ビジネスとして間接業務標準化統合、グローバルグループでの部材やサービス集中購買の推進、人事評価制度統一と合わせた人材の迅速なグローバル再配分などの業務改革を行わなければリターンが得られず、IT投資が嵩み、推進が滞ることもあります。

 この問題に対応するには、1つは海外企業のように、まずビジネス側の戦略として、グローバルな業務改革方法を明確化、全経営層の間で実行を合意した上で、システム部門に本戦略実現を支援するために必要なIT側の対応を指示する方法があります。

 国内企業でも、「エリアマネジメント戦略」のように、ビジネス側の戦略が明確化され、これをこれからシステム部門が支えていくというところがあります。この企業の場合、今後エリアマネジメント戦略によって、スタッフ機能のエリア本社への集約、シェアードサービス化が加速すると考えられます。そこでシステム部門としても、これらの動きと同期をとって、支援を行う予定です。

 もう一つ、まずビジネス側にBPR推進組織を作り、ここが事業や法人を越えた業務改革を実施することを、システム部門が並走しながら支援していく方法があります。

 この企業では、生産領域のBPR推進組織が業務改革を進め、これをシステム部門が支援することで、生産管理・製造管理領域のグループ各社を超えた業務プロセスとアプリケーションの標準化、統合を実施。今後、他の領域でも、BPR推進組織を確立してから業務プロセスとアプリケーションの標準化、統合を進める予定です。

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