IT産業が始まって以来初めて、米国、中国、日本という3本のトップ市場が同時期にバブルを起こしている状況だという。これはスマートフォンやタブレットといったモバイル技術によるところが大きい。インターネットバブルから10年を経て、いよいよ産業革命を超えるような「真のIT革命」が始まったと見る識者も多いようだ。では、このレボリューションの恩恵を受けるには一体どうしたらよいのか?日本が解決すべき課題とは何だろうか?先ごろ開催された新経済連盟のサミット「NES2014」に登壇したボストン コンサルティング グループ 御立尚資氏、DMC 茶尾克妃仁氏、フューチャーアーキテクト 金丸恭文氏、シスコシステムズ 平井康文氏、フリービット 石田宏樹氏、楽天 三木谷 浩史氏など、経営者、企業家、ベンチャーキャピタリストたちがパネルディスカッションを行い、グローバルな視点から熱い議論を交わした。
IT革命は、まだ2回裏。どういうプレイをするかで、世界を握れるチャンスがやってくる
この20年間、日本の一人当たりのGDPは停滞したままだった。これは、日本の製造業が落ち込んだことだけが原因ではない。経済の4分の3がサービス産業で占めているにもかかわらず、生産性を向上しなかったために、GDPが伸び悩んでいたのだ。日本を尻目に、他の先進国や新興国はサービス産業の生産性をどんどん向上させて、GDPを上げていった。しかし、そんな日本にも光明が射しつつある。
モデレータの御立尚資氏は、「まだデジタル革命は起きたばかり。GDPもこれから想像がつかない形で伸びていくでしょう。ムーアの法則どおり、情報をやりとりするコストは劇的に下がっています。リアルとデジタルの意味を分けなければいけない時代が終わり、これから本当に新しい時代が始まるのです。その一方で、新時代が幕を開けると不安に思ったり、元に戻そうという力も働くかもしれない。このデジタル革命の恩恵を一体どうやって享受していくのか、という課題があるのです」と、いま進展中のIT革命と日本の状況について問題を提起した。
まず口火切ったのは、世界屈指のITベンチャーキャピタリストとして有名なDMCの茶尾克仁氏だ。「IT産業がスタートして以来、米国・中国・日本というトップ3市場が初めて同時期にバブルを起こしている。これはモバイル技術の進展によるもの。日本や中国だけでなく、米国もモバイルユーザーがPCユーザーを追い抜いた。今度こそ本当に革命が起きるかもしれない。このバブルが本物だと気づいて、うまく離陸できるかどうか、それがポイントだ。いまは産業革命の初期と同じ。まだ氷山の一角しか見えず、野球の試合でいうと2回裏ぐらいのところ。その中で日本の可能性も感じる。目標ができれば、素晴らしい製品やサービスが生まれるからだ。そのエネルギーをいかに発揮し、どういうプレイをするか。それによって、世界を握れるチャンスも出てくる」(茶尾氏)。
もちろん新しいIT革命の中では、ベンチャーも含めた企業家たちに等しくチャンスが生まれる。実際に、いま起きている革命をドライブしているのは若い世代だ。新規ビジネスを次々に起している同年代の活躍をみて、自分もやればできると鼓舞されることも多く、そういうアントレプレナーシップが伝染していくという。
政府の産業競争力会議のメンバーとして、規制改革に力を注いでいるフューチャーアーキテクトの金丸恭文氏も次のように語る。「このアントレプレナーシップの伝染病は、よい意味での病気だ。自分がPCに出会った当時、シリコンバレーでは20歳前後の若いアントレプレナーが活躍していた。多くの日本人は、会社に入るものという既成概念があるが、同世代のアントレプレナーを見て、私自身も自分のアイデアを具現化するために会社をつくれることを知った。さらに起業した若い会社に顧客がつくことも米国のよい点だ。まだ世の中にはいろいろなチャンスがある。難しく考えることはなく、シンプルなニーズを素早くキャッチし、周りを巻き込みながら、アクションにつなげていくことが重要だ」(金丸氏)。
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