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  • 2016/04/27

「国内FinTech企業は金融業界の破壊者じゃない」 freee、マネーフォワードら5社が激論

「FinTech」とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、IT技術を使った新たな価値を包含したサービスや、その提供の仕組みを指す。「freee」の佐々木 大輔氏、「マネーフォワード」の辻 庸介氏、「メタップス」の佐藤 航陽氏、「お金のデザイン」の北澤 直氏、「楽天スマートペイ」の林 重信氏ら国内FinTech企業5社のキーパーソンが、FinTech分野に参入した理由や既存金融機関との関係、FinTechの将来像について議論した。

ITジャーナリスト 鈴木 恭子

ITジャーナリスト 鈴木 恭子

ITジャーナリスト。明治学院大学国際学部卒業後、週刊誌記者などを経て、2001年よりIT専門出版社に入社。「Windows Server World」「Computerworld」編集部にてエンタープライズITに関する取材/執筆に携わる。2013年6月に独立し、ITジャーナリストとして始動。専門分野はセキュリティとビッグデータ。

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国内FinTech企業5社が語るFinTechの未来

国内FinTech企業5社が提供するサービスとは

 「新経済サミット2016」で行われたパネルセッション「日本・FinTech大国化宣言」は、まず各社の事業紹介から始まった。

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「お金のデザイン」で取締役COOを務める北澤 直氏
 「投資運用の敷居を下げる」をコンセプトに、個人向け資産運用サービスを提供するお金のデザインは、これまで富裕層や機関投資家が享受してきたプロの資産運用サービスを、スマートフォンやパソコンを通じて少額投資家でも利用できるようにした。独自開発したアルゴリズムに基づくロボアドバイザーが、ポートフォリオを提案する資産運用サービス「THEO(テオ)」を提供している。

 同社取締役COO 北澤 直氏は、「既存の資産運用よりも投資のハードルを下げた。10万円からはじめられ、手数料は一律1%でいつでも解約できる。既存の投資サービスにはなかったもので、顧客の4割は、初めて資産運用する層だ」と説明する。これまでの投資業界には、「手数料が高い」「解約しにくい」といった慣例に対する顧客の不満があった。「お金のデザイン」ではこうした不満を解消し、新規顧客を取り込むことで、投資サービスの裾野を広げたいとしている。

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「楽天」 楽天スマートペイ事業長を務める小林 重信氏
 「既存のサービスに対する不満を解消する」という視点では、楽天スマートペイも同様だ。同社の顧客は、個人経営の飲食店や美容院で、実質無料の専用カードリーダーがあれば、すぐに利用できるのが特徴である。楽天スマートペイ事業長 小林 重信氏は、「従来のクレジットカード決済には高価な専用端末を導入する必要があり、手数料も業種によって異なるなど、不透明な部分が多かった。さらに入金サイクルは30日から60日も要する。楽天スマートペイの入金は翌日で、手数料は一律3.24%だ。既存の不満を一気に解消する」と力を込める。

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「freee(フリー)」で代表取締役を務める佐々木 大輔氏
 佐々木 大輔氏が代表取締役を務めるfreeeが提供するクラウド型会計ソフト「freee」は、銀行やクレジットカードのウェブ明細と同期し、自動で帳簿作成や決算書作成を作成するサービスである。会社設立から約4年で60万以上事業者が、5兆円以上の取引をfreee上で行っているという。

 ビッグデータ解析を得意分野とするメタップスは、オンライン決済サービス「SPIKE(スパイク)」を提供している。メタップス 代表取締役CEO 佐藤 航陽氏は「今後は(ビッグデータ解析で)決済サービスからマーケティング、EC(電子商取引)といった顧客のバリューチェーンを、トータルでサポートしていく環境を提供する」と語る。

 マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介氏は、自社サービスを「(食べた物を記録して可視化する)レコーディングダイエットのお金バージョンだ」説明する。金融機関の口座情報を登録するだけで、複数の口座情報をスマホから一括管理できる同社のサービスは、個人向け家計簿資産管理として順調に利用者を増やしている。

FinTech普及の課題は「感情」と「法規制」

 FinTech分野のサービスを始めたきっかけは――。

 実は、今回登壇しているメンバーのほとんどは、大手金融機関や広告代理店、IT系企業の出身だ。なぜFinTech分野に参入しようと決めたのか。どのような点にビジネスチャンスを感じたのか。直接的なきっかけは各人様々だが、「スマートフォンの普及」を挙げたのが、楽天の小林氏とお金のデザインの北澤氏だ。

 北澤氏は、「既存の金融機関は、すでに高度な技術を利用してサービスを生み出していた。しかし、スマートフォンの普及で、こうしたサービスを一般の人に届けられるようになった。そこに(FinTech企業が参入できる)可能性を感じた」と語る。

 小林氏も、「以前は決済端末としてスマートフォンを利用することは考えられなかった」と指摘する。スマートフォンが日常生活を支える重要なツールとなりつつあり、スマホを通じたサービスが、IT系企業の人だけではなく一般ユーザーにも受け入れられるようになったことが大きいという。

 FinTech分野に対しては、政府もその成長を後押ししている。経済産業省は2015年、「産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」を立ち上げ、政策上の課題や対応策の検討を開始した。では、FinTech企業の当事者達は、FinTech分野のサービスが普及するには、どのような課題があると感じているのだろうか。

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「マネーフォワード」で代表取締役社長CEOを務める辻 庸介氏
 マネーフォワードの辻氏は、「既存の金融業界との融合」を挙げる。これまでの銀行の業務フローはインターネットがない時代に作られたものであり、オンラインビジネスとは“レイヤー”が異なるというのが、同氏の見解だ。

「既存の金融業界は、サービスの立案から顧客への展開まで、すべて自社でまかなうという“縦割りレイヤー”だ。しかし、オンラインビジネスは、他社と協業して(サービスを向上させるなどの)“横のレイヤー”の結びつきが強い。この違いをどのように融合させるかが今後の重要課題だろう」(辻氏)

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「メタップス」で代表取締役CEOを務める佐藤 航陽氏
 一方、メタップスの佐藤氏は、「人間の感情」と「法規制」を課題に挙げる。FinTech分野のサービスもそれを実現するデバイス(ハード)も整っているが、法律の整備や規制が後手に回っているのが、これまでのトレンドでは考えられなかったことだというのだ。「スマホで送金や資産運用をするという文化を形成するのには、まだ時間がかかるのでは」というのが、同氏の見解である。

 お金のデザインの北澤氏も、規制とのかかわり方が課題であると語る。「われわれが提供する資産運用サービスは、規制業務のど真ん中だ。既存の金融機関は、現在のサービスを提供することが重要なので、新規サービスへの参入が難しい」と説明する。だからこそFinTech企業が参入し、既存のビジネスモデルを変えていくことに意味があると、北澤氏は語る。「金融業は規制業種で参入障壁が高いといわれるが、新しい価値観を打ち出すプレーヤーは必要だ。既存の金融業界とFinTech企業が一体となって、FinTech分野を成長させ、グローバル市場でイニシアティブを取っていくことが重要だ」(同氏)

【次ページ】国内FinTech企業はディスラプター(破壊者)ではない

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