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- 2016/08/03 掲載
2015年総動員数は145万人、海外の反応も期待できる「2.5次元ミュージカル」とは
「2.5次元ミュージカル」とは?
2.5次元ミュージカルは、漫画・アニメ・ゲームなどの原作を舞台化したものだが、ミュージカルでないものも含まれる。いまから40年以上前の『ベルサイユのばら』から始まり、『ドラえもん』『美少女戦士セーラームーン』『NARUTO』など、数多くの代表的な漫画・アニメが舞台化されてきた。実は、日本のミュージカル市場だけでも世界で第2位を占めており、その7割は「オペラ座の怪人」や「ライオンキング」といった海外の作品だ。そんな中で2.5次元ミュージカルは急成長している。
「『2.5次元』という言葉は、日本で自然発生的に生まれたもの。このジャンルに注目していたファンの間で早くから使われている言葉です。近年、日本だけでなく、海外でも多く公演され、人気を呼んでいます」(松田氏)
「2.5次元ミュージカルのターニングポイントになったのは、2003年にミュージカル『テニスの王子様』(原作:許斐 剛)が登場してからです。もうすぐ14年目に入る舞台ですが、数多くの有名な俳優を輩出し、総動員数も300万人を超えています。年間で30万人以上の観客が訪れるコンテンツはあまりなく、非常に成功している例です」(松田氏)
実際に、ここ数年間で2.5次元ミュージカルのジャンルは大きく成長している。年間の上映作品数を見ると、2000年には11タイトルだったが、2010年ごろから30タイトルを超え、その後ウナギ上りにタイトル数が増え、昨年だけで100タイトルを突破。その総動員数が145万人(発券数)という数字を見ても分かるとおり、急成長中のマーケットだ。
急成長のワケ
では、なぜいま2.5次元ミュージカルがヒットしているのだろうか? 松田氏はヒットの要因について3点の大きな理由を挙げた。まずは「リアルの希少価値」が見直されているということだ。「いまはインターネットの普及によって、バーチャルなものが簡単に見れてしまう時代になりました。そこで逆に、ライブのようなリアルなものが手に入らず、希少価値が生まれています。これは音楽業界でも同様です。リアルなものをみたいという衝動は生物の本能だと思います」(松田氏)
2番目の理由は「アニメから舞台への表現方法」が異なっているということだ。
同氏は「2.5次元ミュージカルにとって最も重要なポイントは、アニメから舞台への表現方法にあります。我々は、これを『脳内補完』と呼んでいますが、舞台は省略のテクニックとデフォルメが求められます。その実例としてミュージカル『弱虫ペダル』があります」と説明する。
この『弱虫ペダル』(作者:渡辺 航)は、週刊少年チャンピオンにて連載中で、すでにアニメ化されている。自転車競技をテーマにした本格的な少年スポーツ漫画だ。当然、漫画では自転車があるのだが、舞台では自転車そのものは登場せず、ハンドルしかないのだ。
「舞台に自転車があるものとして、役者はハンドルひとつだけで、自転車の疾走感や熱量を表現している。自転車に乗っていることを、観客の脳内で自由に想像させることに成功した事例の1つだ。この脳内補完は2.5次元ミュージカルの大きな武器になるものだと思う」(松田氏)
週刊少年ジャンプで連載中の『ハイキュー!!』(作者:古舘 春一)も、高校バレーボールを題材にしたものだが、こちらはデジタル漫画とアナログ演劇を融合した新しい演出によって脳内補完をしてもらうという例だ。
「我々は『ハイパー・プロジェクション演劇』と名付けていますが、従来にないパターンで、複数のプロジェクターを使用しています。壁だけでなく、床が斜めになっていて、そこにも映像が映し出されます。バレーボールの躍動感を映像で上手く表現したコンテンツです」(松田氏)
3つ目の理由は「キャラクター・物語の認知度」だ。これは当然のことだろうが、ヒットの重要な要素だ。
「いま海外で続々と日本の2.5次元ミュージカルが進出していますが、日本の漫画やアニメのファンがいて、すでにキャラクターやストーリーを理解しています。もともと作品に対する想いがあるため、1つの繰り上がったステージから物語を始められます」(松田氏)
【次ページ】集英社、講談社なども支持
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