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  • 2016/11/18 掲載

任天堂「Nintendo Switch」の新戦略は「4つのゲーマー層」を魅了する

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2016年10月、任天堂は「NX」という社内コードネームで開発してきた新型ゲーム機「Nintendo Switch」を発表しました。任天堂が新たに公開したNintendo Switchの紹介動画では、自宅か外出先かを問わず、テレビモニターの前を離れて本体を持ち出して遊ぶ姿が表現されています。この発表を受けて、投資家からは期待されたほどの驚きがなかったとして、失望の声も聞こえてきました。しかし、据え置き機と携帯機を兼用できるNintendo Switchの価値は、多様化するゲームユーザーのニーズに応えるための多面的な戦略として理解すれば、実はたいへん理にかなったものなのです。

在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

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任天堂はブルーオーシャン戦略を捨てたのか?

「Nintendo Switch」は据え置き/携帯を切り替え可能なゲーム機

 任天堂は2016年10月に新型ゲーム機「Nintendo Switch」を発表しました。最大の特徴は、据え置き機としてテレビと接続して遊べるとともに、携帯機として持ち運んでゲームを楽しめる点です。据え置き機のWii Uと、携帯機のNintendo 3DSを良い所を合わせたような製品となりました。

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Nintendo Switchは、据え置き・携帯どちらでも遊べるゲーム機として設計されている

 その他にもNintendo Switchには新しいゲームの楽しみ方が盛り込まれています。ゲームタイトルを保存したゲームカードを着脱し異なるゲームが楽しめること、本体着脱可能なコントローラーが付属していること、複数人の同時対戦が可能なことなどです。一人でも複数人でも、自宅でも外出先でもゲームが楽しめるという新たな価値を提案しています。

 Nintendo Switchでは多くのゲーム制作会社との提携が発表されています。これまで任天堂は、自社コンテンツに注力しており、開発費の高騰を避けるゲーム制作会社から敬遠される傾向がありました。しかし、今回の発表では、既に提携関係にあるDeNAを始め、セガ、カプコン、ガンホー、EAスポーツ、アクティビジョンなど、国内外を問わず有力ゲーム制作会社とのパートナー関係があります。魅力的なコンテンツが揃えば、Nintendo Switch本体の売上増にも大きく貢献するでしょう。

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スライド1枚でわかるNintendo Switchの収益モデル

 Nintendo Switchは、そのコンセプトだけではなく、ハード機としての性能自体も高度なものになると報じられています。ゲームおよび携帯機としての利用に特化した演算装置を搭載しているため、電力効率を維持しながらも、綺麗な画像を処理できるだけの性能を提供します。携帯機でありながらも据え置き機と同等の処理能力が出せれば、高度なゲームがいつでもどこでも遊べるようになるのです。

多様化するゲームユーザーを4つに分類

 調査会社NPDグループによると、ゲーム市場は大きく4つに分類できます。戦略性・ストーリー性の高いゲームを週5時間以上遊ぶ「ヘビーコアゲーマー」、5時間未満の「ライトコアゲーマー」、パズルなどの単機能ゲームを週5時間以上楽しむ「ヘビーカジュアルゲーマー」、そして、単機能ゲームを5時間未満プレーする「ライトカジュアルゲーマー」です。4つの顧客層にそれぞれの特色があり、ゲーム会社は異なるアプローチを採る必要があります。

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「4つのゲーマー層」の持つそれぞれの特色

 ヘビーコアユーザーは、ゲームを趣味と考え、スキルの上達や、解法の共有に熱心です。人数は多くないものの、消費額は最も多い層です。据え置き機はもちろん、ゲーム専用の高性能パソコンなどを所有する傾向にあります。ゲーム会社にとっては、好意的な評判を広めてもらうためのパートナーのような存在と言えます。

 ライトコアユーザーは面白い体験ができるのであれば、進んでお金を払います。裾野が広いため、ゲーム会社にとって最も魅力的な顧客層であり、最も競争が激しい市場です。豊富なゲームタイトルと新たな体験を提供し、プレー時間を延ばしてもらうのが目標となります。

 ヘビーカジュアルユーザーは気にいったソフトがあれば、とことんやりこむタイプです。ポケモンGOやソーシャルゲームにはまる傾向があります。他のゲームも体験してもらい、ヘビーコアユーザーへ育成するのがゲーム会社の狙いです。

 ライトカジュアルユーザーにとっては、ゲームは余暇を過ごす一つの手段に過ぎません。話題になっていれば遊ぶ程度で、ゲーム自体を目的とした消費行動はあまり起こしません。ゲーム会社は家族や友人を使って彼らを巻き込むよう試みたり、メディアを通じてブランド認知を高めたりする施策をとるでしょう。

Nintendo Switchと携帯ゲームで完成する任天堂の新戦略

 任天堂はNintendo Switch投入によって、4つの層へのアプローチを完成させます。まず、Nintendo Switchはヘビーコアユーザーに訴求できます。紹介動画でゲームの大会が取り上げられている通り、高性能なNintendo Switchは本格的にゲームの技能を競う場になるのです。専用パソコンを使っていたユーザーも、豊富なゲームタイトルを多くの仲間と楽しめるのは歓迎するでしょう。

 ライトコアユーザーには多数のゲーム制作会社から提供される豊富なゲームタイトルを楽しめる点が訴求できます。また、2016年11月に発売された、手のひらサイズで昔のゲームタイトルが楽しめるニンテンドークラシックミニ・ファミリーコンピュータも、往年のファンを呼び戻し、ブランドを再認識させている点も見逃せません。

 いつでもどこでもゲームをしたいヘビーカジュアルユーザーには、Nintendo Switchの携帯機能が最適します。単純なモバイルゲームしかできなかったユーザーには、据え置き機並みの性能が発揮できるNintendo Switchが新たな体験をもたらし、ヘビーコアユーザーへの育成が可能です。

 最後に、ナイアンティック社と協業したポケモンGOやDeNAと開発するスーパーマリオランは無料ゲームなので、ライトカジュアルユーザーに対するブランド構築が主な目的です。

【次ページ】任天堂はブルーオーシャン戦略を捨てたのか

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