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  • 2017/02/15 掲載

あらゆる組織は「余裕」のせいでダメになる

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この世には、二種類の組織がある。それは、「ちゃんとした組織」と「ダメな組織」である。あなたは、いま所属している組織がダメになってしまっていると感じるだろうか。それとも、ちゃんとしていると感じるだろうか。この世のあらゆる組織はダメである、といっても過言ではない。組織のダメはどこからやってきて、どのようにまん延するのだろうか。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

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「ダメな組織」を立て直すために「会議室」で事件を起こせ
(© taa22 – Fotolia)


「ちゃんとした組織」は存在するのか

 「ちゃんとした組織」に所属する人は幸いである。

 そこではきっと、日常的な業務は滞りなく進められ、解決されるべき課題は、常に議論のテーブルにあがっているはずである。

 不正なことや道義に背くことは決して行われない。ひとたびテーブルにあげられた課題は、それが解決されるための手順が尽くされる。事業の社会的意義と収益が両立していて、先行きは明るく、人々は誇りに満ちて前向きに生きることができる。

 多くの人が、ちゃんとした組織で健全に仕事をしたいと願うものであるが、あらためてこうして書いてみると、ちゃんとした組織とは「非実在組織」とでもいうべきフィクション性を感じる。

 それは夢のような話であって、実際にはありえないもののようにも思える。

 それにひきかえ「ダメな組織」とは、その名の通り、ダメなものである。そこではきっと、人々には当事者意識がなく、仕事は常に滞りがちである。

 ごまかしなしには達成されない目標。管理職の無力な絶叫。堅固な縦割り文化とムダな日々の折衝。悪い風通し。改善へのアイデアが揉み消され続ける日々。グチと陰口が多く、誰が先に逃げ出すかを互いにうかがうメンバー。考えるだけでも、憂うつな話である。

組織のダメに規模の大小は関係ない

 自分の所属する組織がダメであるとき、その一員として所属している人は、つくづくそれを意識するものである。

 「なぜ、うちはこんなにダメなのだろう」「もう少し誰か、なんとかしてくれないのか」。誰しもが心のうちにそう問いかける、しかしどこにも突破口の見当たらないのが、ダメな組織たるゆえんである。

 ダメな組織における典型的な症例とは、第三者からすると「理屈をこねていないで、さっさと解決しなさいよ」と思える明らかな問題がスムーズに解決されない、という現象である。

 ひとつひとつの問題は、そんなに大げさなものではない。ちょっとしたボタンの掛け違いが、立場や利害、面子によって、ときにはただの「面倒くさい」という感情によって積み重なり、解決できない問題となる。

 部屋が散らかっていたら、誰か気づいた人が片付ければよい。小さい組織でやっているうちは、誰かが気付いてさっさと解決するだろう問題が、組織が大きいというだけで放置され、それが解決されるための道筋をつけることすら見いだせなくなり、ときに致命傷になる。

 不思議なもので、「風通しが悪い」「縦割り」「硬直的」というのは大組織の専売特許というわけでもなく、少人数の集団でも同じことが発症することがある。それに直面した人はかならずこんなふうに言うものである。

「こんな小さな会社で大企業病にかかってどうするんだ」と。一体それは何がどうなっているのか、よく考えてみると、よくわからない話である。

ダメな組織になるのは「余裕」のせいである

 ダメという言葉は恐ろしい。たとえば、ダメという言葉から連想する言葉のひとつが、「腰」である。

「腰がダメになる」とは、口にしただけでもおそろしい。腰がダメになってしまうと、その人はもう、立つこともおぼつかない。

 身体を横たえて、痛みが去ってくれるまで、待つしかない。その間、少しでも身じろぎしようものなら、激痛に襲われる。寝返りをうつだけも難儀する。

 何の前触れもなく、その日はやってくる。ちょっと物に手を伸ばそうとした瞬間、重い荷物を持ち上げようとした瞬間、世界が暗転するかのようである。

 その瞬間がやってきて初めて、温めるべきだったか冷やすべきなのかと逡巡するも、我が身一人では、そのどちらも実行に移すことはできないのであった。

 なかなかどうして、これはダメな組織のちょうどいい「たとえ」となっているのかもしれない。ダメな組織もまた、ある日突然やってくるからだ。

 本来組織とは、ちゃんとしたものであることを目的として、運用されるものである。ダメになるために一生懸命頑張る組織など、存在しない。しかし、いかに常日頃気をつけていたとしても、隠れていたダメが突如顔を出すのである。

 腰がダメだから人がいきなり生死に関わることがないのと同じように、組織もまた、ダメだからといって、いきなり潰れるということはない。資本の循環さえ行われていれば、組織は回転しつづけるのである。

 むしろ、多少の非効率や組織的な齟齬があっても、資本が回転する構造があるからこそ、「ダメになる余裕が生まれる」とも言える。

【次ページ】ダメな組織を立て直す方法論はあるか

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