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  • 2017/10/27 掲載

「ビットコインは通貨ではなく資産クラス」楽天 三木谷氏やマスターカードらが激論

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AI、ブロックチェーン技術、シェアリングエコノミーなどのイノベーションは、人々の生活や社会を激変させる可能性を秘めている。イノベーションとテクノロジーはどこへ向かい、金融の新しい波、フィンテックは未来をどう変えるのだろうか? 先ごろ開催された「Rakuten FINTECH CONFERENCE 2017」では、カード、EC、デジタルペイメントの業界からマスターカード オペレーションズ&テクノロジー プレジデント エド・マクローリン氏、楽天 代表取締役会長 兼 社長 三木谷 浩史氏、PayPal SVP アジア太平洋地域CEO ローハン・マハデバン氏が集まり、日本経済新聞社 編集委員 関口 和一氏をモデレーターに、イノベーションが切り開く未来の金融と、そのドライバーであるフィンテックの進展について意見を戦わせた。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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「Rakuten FINTECH CONFERENCE 2017」。セッション~「イノベーションが切り開く未来」の模様


激変するデジタルコマース、ケニアではキュッシュレスが常識

 モデレーターを務める日本経済新聞社の関口氏は、議論を進める前に「いまフィンテックの世界で、最も気になるトピックスは何か?」と各パネリストに尋ねた。

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マスターカード
オペレーションズ&テクノロジー
プレジデント
エド・マクローリン氏
 口火を切ったのは、マスターカードのマクローリン氏だ。同氏は「フィンテックは広範囲に変化と影響を及ぼす。たとえばコネクテッド・デバイスがオンラインの世界をつくり、物理的なやりとりが変わる。やがてAIによって“第三の波”が訪れるだろう。どうすれば良いサービスを提供できるのか? という点を考えなければならない。自動運転車の燃料や駐車料の迅速な支払いや、スマートハウスからモノを注文した際の対応も必要だ」と、激変する近未来を予想した。

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楽天
代表取締役会長 兼 社長
三木谷 浩史氏
 楽天の三木谷氏も「20年前の楽天創業時は、誰もネットを信用しなかった。しかし現在は、ECが主なショッピングのチャネルになり、マーケティングの世界も変わった。これからはキャッシュレスの世界になるだろう。先日、アフリカのケニアを訪問したとき、マサイ族がM-PESA(エムペサ)という暗号通貨を利用してモノを購入していた。キャッシュは強盗に狙われる恐れがあるからだ。このような現象が世界に広がっていく。日本もキャッシュレス経済になれば、紙幣経済より効率がよくなるはず」と指摘した。

 さらにフィンテックが進んだネット社会では仲介業が駆逐され、商取引での役割がなくなっていく。そのような状況で、楽天がどう生き残ればよいかを考えているそうだ。

「20年後にスーパーでカートが要るかというと、たぶんノーだ。クレジットカードさえも不要かもしれない。さらにAIによる変化も加わり、物事は激変する。いまファイナンスや格付け投資の決定は、属人的な判断で行われているが、今後はコンピュータで処理する方が精度が高くなるだろう。これらについても注目すべきだと思う」(三木谷氏)

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PayPal
SVP アジア太平洋地域CEO
ローハン・マハデバン氏
 PayPalのマハデバン氏も「今後5年間で社会は急速な変化を遂げるだろう。スマホによって大きな社会革命が起き、我々の行動も変わった。いまやスマホ画面をクリックすれば、欲しいものが何でもすぐに手に入る時代だ。行列に並ばなくても物が買える時代に、ECが迅速に応えなければならない。多くの企業も人々が交流するSNSに進出し、商売するようになった。起業家にとって、お金は酸素のようなもの。どこでも誰でも支払いや受取りが可能になる世界を実現したい」との見解を示した。

ガラパゴス化した日本! 課題は標準的なプラットフォームがないこと

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日本経済新聞社 編集委員
関口和一氏
 これを受けて、モデレーターの関口氏は、マスターカードによるモバイルペイメント普及率の調査について触れた。

 同氏は「5年前、モバイルペイメントが最も普及している国は米国、2番はケニアだった。スマホが普及し、世界が劇的に変わった。モバイル後進国だった中国も、この3年間で1番に躍り出た。WeChatユーザーは6億人もいる」とし、激変する環境について見解を求めた。

 マクローリン氏は「中国の変化の速さは驚くばかりだ。すでにキャッシュが消えつつある。北欧も10年後にはキャッシュレスになるだろう。我々のカードは210ヵ国で利用されているが、あらゆる国で現金に代わる決済が不可避になった。M-PESAのようにセキュリティを高め、安全な環境で資金を移動できるからだ。瞬時にサービスを提供できれば、店舗販売も加速する」と説明した。

 では、デジタルペイメントの国内動向はどうか? 関口氏は「まだ日本はキャッシュベースから脱却できていない。これについてどう思うか?」と三木谷氏に話題を向けた。

 三木谷氏は「日本は世界で先頭を走る電子マネー大国だった。Suica、楽天Edy、Felicaなどがあり、電子決済も当たり前。ところが、いまやガラパゴスになった。小さな市場で複数の電子マネーが競い、標準的なプラットフォームがない。最大の問題は、仕様が古くても使える状態で、新しいものに切り替えられないこと。また日本市場が中途半端な規模で、海外に出ていく野心もない」と嘆いた。

 しかし、最近ではApple PayやアリババのAlipayが進出するなどの新展開もある。ビットコインも徐々に使われ始めている。この点について、Apple Payに対応したマスターカードのマクローリン氏は「代替的な選択肢が多すぎて、決済面でApple Payが大成功するとは考えにくい。政府は強力なリーダーシップを発揮し、標準のオープンプラットフォームに移行すべきだ。Suicaはプラットフォームを開放しておらず、大きな問題だ」と日本市場を憂う。

 一方、PayPalのマハデバン氏は「それでも日本市場は大きく、ビジネスチャンスがある。認識すべき点は、技術は手段にすぎず、長期的な競争優位性がないことだ。Apple Payは素晴らしいが、人々にずっと使ってもらえる優位性はない。そこで我々は、技術よりもリスク管理を重視している」と異なる見立てを示した。

 では、世界のトレンドがキャッシュレスに向かう中、どんな企業が生き残れるのだろう? 関口氏は三木谷氏に問いかけた。

「キャッシュとデジタルの違いは、デジタルならユーザーを特定できる点。したがって勝者は、支払いとマーケティング・サービスをうまくつなげられる企業だ。我々も、どうやって支払いとリンクするかについて腐心している。このコネクションが見えるインフラを持つことが重要だ」(三木谷氏)

【次ページ】仮想通貨は世界の市民権を得られるのか?

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