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- 2017/10/27 掲載
「ビットコインは通貨ではなく資産クラス」楽天 三木谷氏やマスターカードらが激論
激変するデジタルコマース、ケニアではキュッシュレスが常識
モデレーターを務める日本経済新聞社の関口氏は、議論を進める前に「いまフィンテックの世界で、最も気になるトピックスは何か?」と各パネリストに尋ねた。さらにフィンテックが進んだネット社会では仲介業が駆逐され、商取引での役割がなくなっていく。そのような状況で、楽天がどう生き残ればよいかを考えているそうだ。
「20年後にスーパーでカートが要るかというと、たぶんノーだ。クレジットカードさえも不要かもしれない。さらにAIによる変化も加わり、物事は激変する。いまファイナンスや格付け投資の決定は、属人的な判断で行われているが、今後はコンピュータで処理する方が精度が高くなるだろう。これらについても注目すべきだと思う」(三木谷氏)
ガラパゴス化した日本! 課題は標準的なプラットフォームがないこと
同氏は「5年前、モバイルペイメントが最も普及している国は米国、2番はケニアだった。スマホが普及し、世界が劇的に変わった。モバイル後進国だった中国も、この3年間で1番に躍り出た。WeChatユーザーは6億人もいる」とし、激変する環境について見解を求めた。
マクローリン氏は「中国の変化の速さは驚くばかりだ。すでにキャッシュが消えつつある。北欧も10年後にはキャッシュレスになるだろう。我々のカードは210ヵ国で利用されているが、あらゆる国で現金に代わる決済が不可避になった。M-PESAのようにセキュリティを高め、安全な環境で資金を移動できるからだ。瞬時にサービスを提供できれば、店舗販売も加速する」と説明した。
では、デジタルペイメントの国内動向はどうか? 関口氏は「まだ日本はキャッシュベースから脱却できていない。これについてどう思うか?」と三木谷氏に話題を向けた。
三木谷氏は「日本は世界で先頭を走る電子マネー大国だった。Suica、楽天Edy、Felicaなどがあり、電子決済も当たり前。ところが、いまやガラパゴスになった。小さな市場で複数の電子マネーが競い、標準的なプラットフォームがない。最大の問題は、仕様が古くても使える状態で、新しいものに切り替えられないこと。また日本市場が中途半端な規模で、海外に出ていく野心もない」と嘆いた。
しかし、最近ではApple PayやアリババのAlipayが進出するなどの新展開もある。ビットコインも徐々に使われ始めている。この点について、Apple Payに対応したマスターカードのマクローリン氏は「代替的な選択肢が多すぎて、決済面でApple Payが大成功するとは考えにくい。政府は強力なリーダーシップを発揮し、標準のオープンプラットフォームに移行すべきだ。Suicaはプラットフォームを開放しておらず、大きな問題だ」と日本市場を憂う。
一方、PayPalのマハデバン氏は「それでも日本市場は大きく、ビジネスチャンスがある。認識すべき点は、技術は手段にすぎず、長期的な競争優位性がないことだ。Apple Payは素晴らしいが、人々にずっと使ってもらえる優位性はない。そこで我々は、技術よりもリスク管理を重視している」と異なる見立てを示した。
では、世界のトレンドがキャッシュレスに向かう中、どんな企業が生き残れるのだろう? 関口氏は三木谷氏に問いかけた。
「キャッシュとデジタルの違いは、デジタルならユーザーを特定できる点。したがって勝者は、支払いとマーケティング・サービスをうまくつなげられる企業だ。我々も、どうやって支払いとリンクするかについて腐心している。このコネクションが見えるインフラを持つことが重要だ」(三木谷氏)
【次ページ】仮想通貨は世界の市民権を得られるのか?
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