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  • 2018/10/01 掲載

キリンも『淡麗』『本麒麟』で検証、いよいよ実現した“テレビCM効果測定”の激震

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これまでデジタルマーケティングでのみ可能と考えられてきた各種アクティビティの見える化。そのため、テレビCMの効果測定は手つかずの状況だった。それが現在、テレビCMの出稿状況や視聴率をリアルタイムに把握できるソリューションが登場したことで、マス広告に対する消費者のリアクションまでが可視化できるようになっている。これにより企業のマーケティング活動はどのように変わるのか。3人の有識者が展望した。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

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「Advertising Week Asia 2018」において議論を展開したブルーカレント・ジャパン 代表取締役社長の本田 哲也氏(左)、デルフィス 常務執行役員 土橋 代幸氏(中)、PTP 代表取締役社長の有吉昌 康氏(右)

デジタルに比べて“お金をつぎ込む理由”が見えないテレビCM

「テレビCMの出稿もマーケティング施策の一環。その意味で、テレビ視聴率の見える化は、マーケティングそのものの見える化にもつながる重要なテーマだ」

 そう切り出したのは、モデレータを務めたブルーカレント・ジャパン 代表取締役社長の本田 哲也氏だ。同社はグローバルに展開するオムニコムグループ・インク傘下の戦略PR会社で、マスメディアPRからCGM(Consumer Generated Media)までを対象に、戦略PRの企画から実施までをトータルに支援している。

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ブルーカレント・ジャパン 代表取締役社長
本田 哲也氏

 本田氏は「テレビ視聴率の見える化は、テレビCMをどうしていくか、さらにはテレビCMのKPIをどうするかという議論にもつながっていく」と指摘し、広告出稿主の立場から“テレビCMを巡る近況をどう捉えているか”について、デルフィス 常務執行役員 土橋代幸氏に質問を投げかけた。デルフィスはトヨタ自動車100%出資のハウスエージェンシーで、土橋氏はトヨタの宣伝部などを経て、2018年から現職に就いている。

「宣伝部は多くの予算を持っていると思われているかもしれないが、それは単に各事業部から預かっているだけ。そのため、預かったお金でベストパフォーマンスのマーケティング施策をきちんと実行できているかという説明責任を負うことになる。たとえば10億円のお金を預かって、そのうちの9億円をテレビCMに使うとき、“それで大丈夫か、本当に効果は上がるのか”と問われる。宣伝部長は本当に大変だ」(土橋氏)

 土橋氏は、日本アドバタイザーズ協会(JAA)の副理事長や電波委員長も務めているが、このJAA会員企業の宣伝部長のうち4割以上が、経営トップから「まったく効果が上がらないなら、テレビCMを止めたらどうだ」と言われた経験を持つと話す。

「それぐらいテレビCMは窮地に追い込まれている。この背景には、テレビCMの効果が分からない、測定できないことがあると思われる」(土橋氏)

 そして、宣伝部長や宣伝部が説明責任を問われはじめたのは、ここ5~6年の話で、ちょうどスマートフォンが普及し始めてからだと土橋氏は続ける。

「スマートフォンの登場によって、消費者の購買行動が本当に変わった。たとえば車を買うとき、今までの消費者は実際に購入するまでに2カ月ぐらい検討していた。販売店にも7回くらい足を運び、カタログをもらってきて、比較検討して、試乗もして、最後に契約を結ぶという行動をとっていた。それが5年ほど前から突然、販売店には1回しか行かない人が7割を超えた。代わりにメーカーのホームページや比較サイトを70回も訪問して、バーチャルの体験をしている。こうしたデジタルの施策は、消費者のさまざまなデータを取得できるし、効果も非常に大きい。それに比べてテレビCMには、『今以上にお金をつぎ込む理由が見えない』というのが、これまでの実情だ」(土橋氏)

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デルフィス 常務執行役員
土橋 代幸氏

限界があるデジタルだけのアプローチ、求められる「マスの復権」

 それなら、デジタルに特化してマーケティング施策を展開するアプローチも考えられるのではないか。本田氏からテレビCMとデジタルのバランスについて聞かれた土橋氏は、「とはいえデジタルだけでは広がらない」と指摘する。

「たとえば、オウンドメディアでお客様と深くつながることが可能になると、そこに経営資源を集中したくなる。実際にトヨタでも取り組んでいるし、確かに効率はよくなる。つながっている人たちの特性に応じてメッセージを変えられるし、直接情報を届けることもできるからだ。しかし、新しいお客様や需要を作るという点での効果はあまり期待できない。そこは効率の議論とは少し離れたところで、やはりマスの復権が必要になってくる」(土橋氏)

 また土橋氏は、テレビCMを含むマス広告を展開していると、未コンタクトの見込み客へのリーチが期待でき、デジタルで色々な施策を試みたとき、その効率もある程度担保されると強調する。

「テレビCMをほとんど打たず、デジタル系の施策だけでお客様にコンタクトを取ろうとすると、膨大な手数がかかる。こうした観点からも、テレビCMの必要性は決してなくならない」(土橋氏)

 では、どうやってより効果の期待できるテレビCM施策を展開すればいいのか。また、宣伝部長や宣伝部は、どのように経営トップや事業部に対する説明責任を果たせばよいのだろうか。

【次ページ】キリンも「本麒麟」「淡麗」で検証、テレビCMの効果測定

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