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  • 2019/01/22

5億円調達、波乱のVALUは今? 小川晃平代表が「ようやく赤字になった」と笑顔のワケ

VALUの「これまで」と「これから」

2019年1月21日、過去最大となる5億円の資金調達が発表されたVALU。しかし多くの人にとってVALUは、またたく間にユーザーを増やすものの、人気YouTuberの騒動で一気に下火となった投機的なサービスとして記憶されているかもしれない。「社会的な信用が得にくい個人を応援する」という画期的な仕組みにもかかわらず、なぜ投機的な面ばかり先行し、なぜあのような騒動が起こったのか。そして仮想通貨市場が下火の中、今後VALUが狙っていること、5億円の資金を活用して目指すその先の未来について、同社の代表取締役/CEO 小川 晃平氏がビジネス+IT編集部だけに赤裸々に語った。

聞き手・構成:編集部 中島正頼、執筆:中村仁美

聞き手・構成:編集部 中島正頼、執筆:中村仁美

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VALU 代表取締役/CEO
小川 晃平氏

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント卒業後、グリーに入社。2012年より、グリー米国支社に赴任し、全米3位のモバイルゲームのリード・サーバーエンジニアを務める。帰国後、ホテル予約サイトなどの新規事業を牽引し、退社。退社後は、フリーランスのエンジニアとして、複数の新規事業を立ち上げる。その後、AccumBitを創業し、ビットコイン・ブロックチェーンを用い、サービスの開発を進める。2016年12月、VALUを創業し、現職。

VALUは世界中の信用を評価し、資本主義をアップデートし続ける

──改めて、VALUとはどういうサービスか教えてください。

小川氏:簡単に言えば、個人の信用を描写したトレーディングカードのようなものを発行し、それをみんなで売買できるサービスです。VALUの資本経済内で利用される共通のお金の単位をVAと言い、VAを購入した人達をVALUERと呼んでいます。VAの購入など、取引はすべて仮想通貨ビットコインで行います。

──VALUは何を目的に作られたサービスなのでしょう。

小川氏:VALU社のミッションは「世界中の信用を評価し、資本主義をアップデートをし続けること」です。

 今はフリーランスやInstagramer(インスタグラマー)、YouTuberなど、個人が活躍できる市場ができています。その一方で、世の中にある「信用の仕組み」は、ずいぶんと後れをとっているんです。

 たとえば、2人の寿司職人がいたとします。一人は回転寿司店で修行をし、もう一人はSNSのフォロワーが3万人いて銀座の老舗有名寿司店で修行をしました。この2人が自分の店をオープンするために、資金調達をしようとすると、銀行は「どちらも同じくらいの価値」と評価するため、3000万~5000万円しかお金を借りることができないのが現状です。

 ですが、寿司職人2人の本来的な個人の価値で考えると、老舗有名店で修行を積んだ人の方が資金調達がしやすくていいはずなんです。このような資金調達や不平等性を解決したいと思い、個人の信用を評価して、個人に対して支援する仕組みを作りたいと思ったのです。

 ですので、VALUをひと言で言うと、「個人を応援するサービス」です。

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──「資本主義をアップデートし続ける」とはどういう意味でしょうか。

小川氏:資本主義は時代と共に形を変えてきました。第一次産業革命で資本主義は大きく進化しました。次に資本主義に大きな変化を与えたのが1971年のニクソンショックです。それ以降の資本主義は、国の信用力を基準にお金が発行される時代へと突入しました。そして今、世の中に流通するお金の総量が増えて続けています。

 その資本主義には、大きな問題があります。金融規制により、「一部にしかお金が流れない仕組み」になっているのです。たとえば今、スタートアップはものすごく資金調達しやすい。それはスタートアップに投資してリターンを得るエコシステムが発達し、汗水垂らしてお金を稼ぐよりも、投資した方が簡単にお金を増やせるからです。その一方で、地方コミュニティーなどのお金がなかなか増えない地域もある。

 そういう資本主義が抱えている問題をVALUで是正し、資本主義の形を変える。ですが新しい資本主義の形ができれば、また新たな問題がきっと起こってきます。そういった社会の仕組みをずっとアップデートし続けよう、という意味を込めているんです。

──現在の資本主義では、一部にお金、投資が集中してしまうことが問題だと。

小川氏:そうです、お金の集まる額の不平等さですね。たとえば地方にも価値のあるものがたくさんありますが、それに対して投資し、リターンを得る仕組みはほとんど世の中に存在しません。

 だから投資家はみんな首都圏にあるスタートアップに投資しまくる。それで数十億円も稼ぐ起業家がいる一方で、寿司屋の職人やYouTuberやInstagramerにはそんな人はまずいません。「なぜ、彼らにはそんなチャンスがないんだろう」って。まぁ、僕も先人たちが育ててくれたスタートアップのエコシステムの恩恵を受けてる一人なんですが(笑)。

クラウドファンディングやSHOWROOMと何が違うのか

──銀行融資や株式に頼らずお金を集める手法としては、「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」などのクラウドファンディングもよく使われます。それとはどう違うのでしょう。

小川氏:クラウドファンディングとの大きな違いは、「二次流通マーケットがあるかないか」という点です。

 たとえば素晴らしいクオリティの藍染めのジーンズを作る人がいるとして、年間の生産量は10本とします。こういうビジネスはスケールしないので、株式市場には適さないですよね。

 この人を支援するために、出来上がるジーンズを先行して購入するのが典型的なクラウドファンディングの使い方です。一方VALUではジーンズではなく、ジーンズを「作る人」に投資します。3万円でジーンズを手に入れて終わるか、その人の成長に応じて5倍や10倍になる可能性があるか。

 こういった感覚値的な違いがかなりあると思うんです。「もしかしたら多く返ってくるかもしれない」という感覚はすごく重要なんです。

──「支援」に加えて「投資」という側面があるのですね。では、VALUの競合サービスはありますか。

小川氏:競合は思いつかないですね。「タイムバンク」(空き時間を売り買いできるフリマアプリ)は近いかもしれませんが、違います。タイムバンクは時間を売るのに対し、VALUは信用や人気を売ります。売っている物が違うんです。

──「人気を売る」と聞くと、「SHOWROOM(ショールーム)」のようなストリーミングサービスも想起されますが、それらとはどう違いますか。

小川氏:SHOWROOMや「17Live(イチナナ)」は、投げ銭して個人を応援するサービスですよね。これらのサービスとVALUとの決定的な違いは、リターンがあるかないかです。

 しかも今の投げ銭サービスには問題点があります。それは集めた金額と比べて、社会的信用度はそれほど上がらないこと。

 たとえばイチナナで月間1000万円ぐらい稼いでいる人はたくさんいますが、その人たちの社会的信用が上がっているかというと、そうでもありません。VALUでやるなら、得た資金と比例して社会的責任も増していくサービスにできると思うんです。

 今は仮想通貨を担保とした融資やローンも始まっているので、VALUの時価総額を担保に融資が得られるようなことは可能になると考えています。

──しかし、イチナナでも月間1000万円稼ぐことができれば、それを担保に融資を受けることができるかもしれません。

小川氏:確かにできます。ですが、対価を売るのと、将来の人気や自分の信用を売るという違いはあると思うんです。

 イチナナはどちらかというと前者で、消費経済のような気がします。水屋が水を売っているのと、水屋が株を売っているのの違いというか。水だったらその水が良かったよねということで終わりますが、水屋の株だと、その会社の将来が良いことを期待するというぐらいの違いがあると思います。

2017年に起こった「あの騒動」の本質にあったもの

──VALUはリリース後、爆発的にユーザーを獲得しました。しかし著名なYouTuberであるヒカル氏がVALUに参加、同氏のVAが高騰したところで突然すべて売却するという、ある種詐欺的な行動で利益を上げ、これが大きな騒動となりました。VALUにとっても影響の大きな騒動だったと思いますが、あの騒動の「本質」は何だったのでしょう?

小川氏:ヒカルさんの騒動以外にも、2017年は仮想通貨界隈でいろいろあったと思います。COMSAがICOで130億円くらいの資金を調達したり。ですから本質というか、単純に「バブルってすごいな」と思いました。VALUもバブルに乗って、ラッキーだった面もあります。ただ、「人のお金に対する欲望とはこんなにすごいんだ」と、初めて気付きました。

──人のお金に対する欲望を熟知した上で、それを組み込んでVALUというサービスを設計されたと思っていたのですが、予想以上だったということですか?

小川氏:予想以上でしたね。正直、ここまで使われるとは思いませんでした。当時、インディースクエアやレアペペカード、ビットコインカードなど、仮想通貨を利用したサービスが登場していたのですが、あまり盛り上がっていなかったんです。

 だからVALUをリリースしたときも、そんなに盛り上がらないと予想していました。自分たちが実証実験みたいに使いながら参画者を得て、徐々にサービスを良くしていけばいいかなと、のんびりとした戦略を立てていたら、急にダーンと行ってしまって(笑)。

──まさに想定外だったと。でも、何を機に急激に伸びたのでしょう。

小川氏:ビットコイン業界にウケることは狙っていました。だから技術的な面で、ビットコインが好き、仮想通貨を好きな人たちが好むOpenAssetプロトコルを取り込んだのです。

 もう1つ、インフルエンサー業界にウケることも狙っていて、この2軸で攻めたんです。これがほとんど前例がなかったからか、うまくいきすぎてしまいまして、想定した以上の人がお金を使ったんですね。純粋に人の欲望ってすごいなと思いました。

──人への「投資」という側面はVALUの特徴ですが、仮想通貨のビットコインをベースに使う仕組み上、「投機」的な面がより注目され、加速してしまったようにも思います。

小川氏:投資と投機、この線引は通常の株式でも難しいですよね。もちろん、市場にとってはどちらも必要で、問題はバランスです。

 ICOや当時のVALUは、95%が投機目的ですが、残りの5%ぐらいの人は「この人に価値がありそうだ」と思って投資してくれているように感じていました。そういう新しい価値を、お金という物差しを使って測れるようになったことは良い面だと思うんですよね。

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──騒動の後、どうされましたか?

小川氏:実はあの騒動が起こってからしばらくは、水面下に潜っていたんです。とにかく表では何もしないで、堅実にやろうと思って。それでもちょこちょこ売上はありましたから。

 とにかくサービスインしたときの盛り上がりはちょっと異常だったし、機能的にも未熟だったのはわかっていたので、これを機に大規模なマーケティングは控えて、1個1個着実に進んでいこう、という戦略に切り替えました。

 少しずつ、取引制限と過剰な売買を抑制する機能を整備し、多くのユーザーに使ってもらえるようにiOSやAndroid対応にも取り組みました。

【次ページ】5億円を活用したVALUの未来とは? 小川氏が「ようやく赤転」と少しホッとする理由

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