- 会員限定
- 2019/09/14 掲載
連休にドライバーを悩ます、「渋滞」が起こるメカニズムとその解消法
渋滞はいつから発生するようになったのか
道路交通の最大の敵は、交通事故と渋滞だといえるでしょう。なかでも、いつどこで発生するかもしれない渋滞は、鉄道のような定時性が保てない大きな要因になっています。それが道路交通の一番の弱点だともいえます。自動車がさほど普及していなかった頃には、渋滞が発生することはありませんでしたし、そもそも「渋滞」という言葉も存在しませんでした。渋滞が発生するようになったのは昭和30年代に入って、モータリゼーションが到来してからのことです。渋滞という用語が使われるようになったのも、1961(昭和36)年に警視庁がラジオで交通情報を流してからだといわれています。
国土交通省道路局の調べによると、1人あたりの年間渋滞損失時間は約40時間に達し、1人あたりの年間乗車時間(約100時間)の40%になるということです(2012年度)。これを国民の賃金に換算すると12兆円に上るという試算もあります。
いずれにしても、渋滞による経済損失は計り知れないほど大きいことは確かです。渋滞は無駄な燃料を消費するわけですから、これも経済損失といえるでしょう。このように、渋滞に良いことは何もありません。渋滞をいかに解消するか、発生させないようにするかは、道路交通にとって最大の課題だといえるでしょう。
渋滞は経済的な損失ばかりではなく、排気ガスや騒音などによる環境の悪化を増大させる要因にもなっています。また、渋滞による精神的なストレスから交通事故を誘発する可能性がありますし、渋滞によるイライラから、運転者間のトラブルで犯罪に発展しないとも限りません。
渋滞の定義──ノロノロ運転も渋滞か
道路における渋滞とは、自動車交通が滞って前へ進んでいかない状態をいいます。では、数珠つなぎになっている自動車の列の長さがどれだけの距離になった場合を渋滞というのでしょうか。また、自動車の流れが少しでもあれば、ノロノロ運転でも渋滞ではないのでしょうか。これに関しての取り決めがあるわけではありませんが、一般的には自動車が完全に停止していなくても、一定速度以下であれば渋滞とみなされています。交通情報を流すためにも、渋滞についての一定の基準が必要です。そこで警視庁では、一般道路に関しては時速10km以下で走行している状態、高速道路では時速40km以下で走行し、車列が1km以上の長さになった場合を渋滞としています。でも、道路管理者によって渋滞に対する認識は異なっていて、首都高速道路では20km/h以下、阪神高速道路および名古屋高速道路では30km/h以下の速度になった場合を渋滞として扱っています。
ただ、一口に渋滞といっても、その内容には大きな違いがあることを認識しておく必要があります。道路交通情報では「○○IC付近を先頭に50km以上の渋滞が発生しています」という情報を聞いて、これは大変だと慌てて一般道へ降りてしまう運転者がいますが、渋滞の内容を確認してから判断すべきでしょう。
同じ渋滞でも、40km/hで走行している渋滞もあれば、10km/h以下のノロノロ運転の渋滞もありますし、停止したままで、まったく前へ進まない渋滞もあるからです。工事渋滞や事故渋滞でない限り、たとえ車列が50km以上の渋滞でも、一般道を走るより速い場合が少なくないのです。
渋滞発生のメカニズム
国土交通省では、交通渋滞を「交通容量上のボトルネックに、その地点の交通容量を超える交通需要が流入しようとするときに、ボトルネックを先頭にして、その上流区間に生じる車両列における交通状態をいう」と定義しています。ボトルネックとは、ビンの首のように通り道が細くなった部分のことをいいます。渋滞はボトルネックの交通量が、交通容量を上回ったときに発生します。朝夕の通勤ラッシュ、年末年始やお盆の帰省ラッシュ、休日の行楽地へ向かう自動車の列などは、渋滞の典型的なものだといえるでしょう。
交通渋滞の発生にはさまざまな要因があります。また、一般道路と高速道路では渋滞の発生原因が異なります。一般道路では信号交差点や踏切、道路の合流地点、車線数が減少する地点、右折車線のない交差点、橋やトンネルなどが渋滞の原因になっていますが、高速道路の渋滞は、かつてはインターチェンジの料金所が発生原因になっていました。でも、現在はETC(自動料金収受システム)が普及したことによって、料金所の渋滞はほとんど解消されています。
高速道路における渋滞発生の最大の原因は、「サグ部」と上り坂にあるといわれています。サグ部とは、すり鉢状の地形、つまり横から見ると緩いV字型になっている箇所をいいます。下り坂から上り坂に差し掛かる地点が、渋滞の発生箇所になっています。自動車の運転手は、そこがサグ部であることに気づかないことが多いのです。ですから、上り坂に差し掛かってもアクセルをそのままの状態で走行してしまうため、後続車との車間距離が一気に縮まって渋滞が発生するのです。
【次ページ】渋滞防止対策あの手この手
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR