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- 2019/11/07 掲載
三越伊勢丹HD 杉江俊彦社長が“百貨店ビジネス”を脱却、「IT企業」を目指すワケ
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「小売もできるIT企業」へ百貨店モデルを革新
「百貨店は単なる小売業でなく、小売もできるIT企業にならないといけない」──。三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹HD)の杉江俊彦 代表取締役社長執行役員兼最高経営責任者(CEO)は、セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)が先ごろ都内で開いた「Salesforce World Tour Tokyo」の基調講演でこう語った。
「三越伊勢丹」といえば、日本を代表する百貨店ブランドである。その企業グループである三越伊勢丹HDは、国内外で56店舗を運営し、連結売上高 約1兆2000億円(2019年3月期)、従業員数 約2万4000人(同)という大所帯だ。その経営トップである杉江氏の冒頭の発言は衝撃的だ。
「小売もできるIT企業」への大転換に向け、三越伊勢丹HDはどのように取り組んでいるのか。また、そうした活動の背景には何があるのか。杉江氏の話をもとに紐解いていこう。
三越伊勢丹HDの3カ年計画
三越伊勢丹HDは2019年度から新たにスタートした中期経営計画(3カ年計画)で、三越伊勢丹グループが目指す姿として「人と時代をつなぐ三越伊勢丹グループへ ~IT・店舗・人の力を活用した『新時代の百貨店』(プラットフォーマー)を目指して」を掲げている。“目指す姿”について、2018年度までは構造改革による「リフォーメーション」を先行して進めてきたが、2019年度からは次の成長に向けて「トランスフォーメーション」に軸足を移した。この 「姿」には人と時代をつなぐ三越伊勢丹グループとして、顧客をはじめとしたステークホルダーに新たな価値を提供していきたい、との想いが込められている。
そして、この目指す姿に向けた成長戦略として一番に掲げているのが、「お客さまに最高の顧客体験(Customer Experience:CX)を提供するためのオンライン(EC)とオフライン(店舗)のシームレス化による『百貨店ビジネスモデルの革新』」である。
図1がそのビジネスモデルの革新を示したものである。ポイントは2つある。1つは「店舗とECの商品情報・在庫情報の連携」。商品のデジタル登録や取引先との在庫連携を進め、ある店舗の商品がECでも他の店舗でも購入可能な仕組みをつくることだ。
もう1つは「デジタルを活用した接客サービスの質の向上」。オフラインとオンラインの接客の中で得られた定性情報をデジタル化して蓄積し、顧客1人ひとりに合わせて最適な提案を可能にすることだ。
【次ページ】期待される「おもてなし×デジタル」の予期せぬ“化学反応”
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