• 2019/12/23 掲載

「業界をまたいだDXを」八子知礼氏に聞く、DX推進の次世代ビジネスモデルへの挑戦(2/2)

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薄く広くみんなで成果を分け合う

──限られたリソースの中ではできることも限定的だとは思いますが、そこはどうスケールさせていくお考えでしょうか?

八子氏:今は当然、小さな会社なので、できることには限度があります。ただ、ウフルのIoTイノベーションセンター自体も、極めて小さなリソースでマルチな活動に取り組んでおり、その考え方をさらに拡張して適用できると考えています。

 もちろん基本的な考え方として、すべてを抱えるという発想ではなくて、引き続きパートナー企業とのコーディネートは考えています。お客さまもアウトカムがほしいのであって、仕組み化されることで、それがそれなりに出るのであれば、誰かが大きなマージンを手にするというのではなく、それぞれが少しずつマージンを獲得していこうという考え方です。

 その代わり、手間のかかるところを早めに取り組んだりして、早く次のステップに進めて、データをためて、次のモデルに進んでいける環境を構築していきたいのです。

──もう少し具体的に教えていただいてもよいでしょうか?

八子氏:たとえば製造現場で管理監視すべき対象、具体的に言うと製造設備ですね。加工機械であるとか、金属加工であるとか、切削であるとか、NC、MCみたいなものの稼働状況を監視、管理をするといったこともあるでしょう。

 そういった際に、何台対象になって、それに対してどんなセンサーが必要になるのか、手持ちのものでもいいのか、あるいは新たに購入が必要なのか。

 そして、そこで貯めてきた情報をどう扱うのか。そのネットワークは何系統必要なのか。これらの敷設作業はお客さま側で直接行えるのか、それとも支援が必要なのか。

 さらには、こうした必要なものに対して、現在どれぐらい資産を保有しているのか、必要なものは一括で購入できるのか、あるいはリースで買うのか、あるいはサブスク(定額支払い)形式で払うのか。

 この一連のことを確認してもらうだけでもどれぐらいの費用がかかるかわかりません。それを我々いくつかにパターン化して、場合によってはお客さま側も費用を負担してもらうのですが、その費用は後で、たとえば保険会社から補填してもらうといったスキームも考えています。

 このソリューションを購入するのではなく、最終的にアウトカム(成果)を達成するために、このソリューションを利用する。利用して出たアウトカムは、さらに課金する、もしくはデータにも課金する、そのお金の払い方ともうけ方をパターン化して、その一連の流れというのを、究極でいうとアズ・ア・サービスで提供します。

 たとえば初期費用(交通費実費等)にいくらかをお支払いいただき、月額数百万円いただけば、ビジネスモデルもアドバイスしつつ、現場から上がってくるそのセンサー設備から上がってきたデータがどういう意味を持つのか。もしくはどんな改善手法があるのかをご提案差し上げます。

 さらにはそのデータセットに対して、それを欲しいという企業をアレンジすることができます。そうすると実際には、1年間で1,800万円払ったはずなのに、そのうちの500万円分は後から戻ってくるといったことが可能になるのではないかと考えています。

ヒト・モノ・ビジネスモデルだけでなくお金も提供する

八子氏:もちろん、このモデルの中には投資をしたい、出資をしたいという金融機関もいますので、そこも結び付けていきます。銀行からは出資する対象があまりないと言われるのですが、そんなことはなくて、ここにこういう投資をすればパフォーマンスが改善されて、1年で20%生産性が上がるということもわかっている。新規性もある代わり、20%のリターンが見込めるとすればどうでしょうか。

 従来の取り組み方法は「お金のスキーム」はあまり持ち合わせていなかったので、これはしっかりと整備していく考えです。

 この仕組みは、最初の立ち上げは大変ですが、出資のスキームも伴ったビジネスモデルを作る、それをどんどん横展開する、それを何年もかけていけば、パッケージ化されたソリューションがひとり歩きするようになって、勝手に稼げるようになります。

 現場の施工をする人たちというのをアレンジするというのも、今までパートナー企業との付き合いの中でどういう方が現場に入っていたのかは目の当たりにしていましたが、自分たちがそれを積極的にアレンジするというのはやっていませんでした。

 ただ、いくつかの会社からは作ったソリューションを現場に導入するリソースがないというお声がありました。販売はできるが、現場に導入するリソースがいない。それをやってもらうか、あるいは組織的にオーガナイズしてもらえないかというニーズです。しかも既存のチャネルを刺激せずに…というご要望です。

──業界知り抜いていないとできないですね。

八子氏:そうですね。こうした一連の取り組みは、業界の慣習やチャネルも大事にしながら、大きな利ざやをもらうことなく共存するような形で展開していかなければならないですが、これは十分可能性があるんじゃないかなと思います。

 また先ほど申し上げたセキュリティについてはなかなか取り組むことができていませんでした。そこで、11月に製造工場(FA)やプラント(PA)、物流倉庫(LA)、ビルディング(BA)向けにネットワークのグランドデザイン構築から各種フィールド領域のセキュリティシステムの実装・運用までを総合的に提供する新会社「INDUSTRIAL-X SECURITY(IXS)」を合弁で設立しました。

 IXSは製造と物流のスマート化をサポートするファクトリービルダーコンソーシアム「Team Cross FA」においてセキュリティ分野を担う幹事企業として参画します。

──いずれにせよ、新しいビジネスモデルへの挑戦のようにお見受けします。

八子氏:そうですね。これは自分もかねてから申し上げてきたんですけど、世の中の物事の問題点とか課題は「境目」にあると言ってきました。

 なので、今回の取り組みというのは、やろうとしているサービスがITなのか、現場設置なのか、保険なのか、工場などの施設管理なのかという区分けをしません。これまで、それぞれ別の業界じゃないかと言われていたところを、基本的にはシームレスに扱い、デジタル化を進めていく上ではその境目や役割分担ももう問わないようにしたいのです。

 たとえばINDUSTRIAL-Xは何業ですかと聞かれたときに、最後のXというものの意味が、今はトランスフォーメーションなわけですが、業界をクロスするという意味合いも持たせています。したがって、そこの境目がなくなっていったときには、日本の産業自体が次の次元の産業になっていくという仮説を持っています。

──本日は貴重なお話をありがとうございました。
■お詫びと訂正[2019/12/24 9:04修正]
本記事に一部誤りがありましたので修正しました。ご迷惑をおかけした読者ならびに関係者にお詫び申し上げます。

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