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  • 2020/01/27

東工大 飯島淳一教授が解説、「2025年の崖」を乗り越えるフレームワーク活用術

2018年9月に経済産業省が公開したレポート「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」の副題には、「ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開」と付けられている。「2025年の崖」を乗り越えるためには何をすべきなのか。東京工業大学 工学院経営工学系 教授の飯島 淳一氏が、「IT-CMF」「PMSO」「iCD」といったフレームワークを活用しながらDXへ備える方法を解説した。

執筆:レッドオウル 西山 毅

執筆:レッドオウル 西山 毅

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

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東京工業大学 工学院経営工学系 教授の飯島淳一氏

DXとは既存の組成や構造を再デザインすること

 経済産業省が公開した通称「DXレポート」では、「既存システムのさまざまな課題を克服できなければ、DXが実現できないだけでなく、2025年以降は年間最大で12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と指摘している。

 飯島氏は冒頭、「DXの必要性は今のほとんどの企業が理解している。しかし、全社横断的なデータ活用ができていなかったり、データがつながっていなかったりする。こうした実情が“2025年の崖”という課題となって浮き彫りになっている」と切り出した。

「変革を表す『トランスフォーム』とは、組成や構造を変えること。組成とは、システムの中の構成要素であり、構造とは、組成間の関係を示すものだ。構造は、当然他のシステムの組成との間にも存在する。この組成や構造を根本的に大きく変えることが、DXの意味するところだ」(飯島氏)

 飯島氏は、企業活動の骨格を可視化するモデリング手法として「DEMO(Design and Engineering Methodology for Organizations)」を紹介した。

「DEMOは、人のつながりを重視し、意思決定や新たな価値の創出だけに焦点を置いたものだ。『誰が、そのトランザクションに責任を持つのか』を明らかにしたい場合に利用する。このDEMOが、組成や構造の根本的な変化を捉えるための相応しい方法論の1つだと考えている」(飯島氏)

 ビジネスプロセスの表記法としては、BPMN(Business Process Modeling Notation)もある。ただし、BPMNは人ではなく、仕事のつながりに焦点を当ててビジネスプロセスを捉えるものだという。

「組成や構造のデザイン変更を考えたい時には、DEMOのほうがよいと考えている。ただしDEMOはプロセスの変化だけを捉えるもので、コストや時間は一切考慮していない。この点を踏まえたうえでプロセスを改善する場合には、BPMNなども利用すべき」(飯島氏)

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ビジネスプロセスに対する2つの観点

IT実践活用能力改善を支援する「IT-CMFフレームワーク」

 次に飯島氏はデジタル・レディネス(=DXに備えることのできる能力)について話を進めた。

「企業のデジタル・レディネスを考えるときのベースとして、IVI(Innovation Value Institute)が開発した『IT-CMF』というフレームワークがある。サービスマネジメントの領域ならITILというように、ITの各分野にはそれぞれ対応したフレームワークがある。IT-CMFはいわば全体を覆う傘のようなもので、ほかのフレームワークと一緒に使うものだ」(飯島氏)

 なお、IVIはインテルとアイルランド国立メヌース大学が共同で設立した研究所である。ここではIT利活用によるビジネス価値の向上とイノベーション創出に関する研究を行っているという。

 IT-CMFは、クリティカルケイパビリティ(CC)と呼ばれる組織の能力を35の観点(下図の上部にある4色の丸で示されるもの)から測定するものだ。たとえば、その1つにITG(ITリーダーシップ&ガバナンス)という組織能力がある(下部に抜き出された水色の丸)。

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IT-CMFの概要

 このITGの要素をさらに細かく分類したのがケイパビリティ・ビルディング・ブロック(CBB)だ。たとえば、バリュー・オリエンテーションやビジネス・インタラクションといった項目が含まれる。

「IT-CMFの1つの強みとなっているのが、POMs(Practices、Outcomes、Metrics)というガイドラインだ。IT-CMFでは、入門・初級・中級・上級・最適化という5段階レベルでIT実践活用能力の成熟度を評価するが、たとえば初級だったものを中級にするにはどうすれば良いかについての、おすすめ案が書かれているのがPOMsだ」(飯島氏)

企業のデジタル・レディネスを2つのフレームワークで評価する「DRA」

 企業のデジタル・レディネスは、このIT-CMFをベースにした「DRA」(デジタル・レディネス・アセスメント)によって評価することができる。

 飯島氏は、「DRAでは大きく2つのフレームワークを使っている。1つ目がPMSOフレームワークだ。これは、Plan(当該組織にとって最適なデジタル事業戦略を定めること)、Make(デジタル製品やサービスを設計・開発し、顧客に提供すること)、Sell(デジタル製品やサービスを提供するためのマーケティング戦略や顧客との関係性を練ること)、Operate(オペレーショナルなバックボーンやデジタルサービスプラットフォームを開発し、統合すること)という4つの観点からDRAを考えるものだ」と説明する。

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PMSOフレームワーク

 そしてもう1つが、デジタル変革に必要な「組織行動マネジメント領域」で、先のIVIが独自に提案しているものだ。具体的なマネジメント領域としては、以下の7つがある。

1. 計画策定と実行
2. エコシステム
3. デリバリとオペレーション
4. 能力開発と組織設計
5. 投資と財務
6. 情報の有効活用
7. リスク、コントロール、サイバーセキュリティ


「この7つの組織行動マネジメント領域の裏に、IT-CMFで定義された35の組織能力が控えている。たとえば、計画策定と実行のマネジメントの裏には、戦略的プランニングやEAM(Enterprise Architecture Management)といった組織能力(CC)が控えており、これらのCCの成熟度が向上すれば、 計画策定と実行のマネジメント領域の成熟度も向上する関係にある」(飯島氏)

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デジタル変革に必要な7つの組織行動マネジメント領域とIT-CMFにおける実践活用力との対応

【次ページ】44社のDRAフィールド調査で見えた「2025年の崖」対応の現実

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