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  • 2019/01/16 掲載

【AI・RPA調査報告】AI・RPAの成否は何で決まる? 業務改革手法としてのBPMの真価

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一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会(以下、日本BPM協会)は、2018年8月から9月にかけて「業務改革実態調査」を実施した。目的はユーザー企業におけるBPMの活用実態と共に、BPMの働き方改革における役割を探ることだ。「第13回 BPMフォーラム 2018」で登壇した同協会 理事 事務局長の横川省三氏は、働き方改革などへの取り組み状況と併せて、RPAおよびAIの活用状況、BPMへの取り組み状況と課題について解説した。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

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日本BPM協会 理事 事務局長 横川 省三 氏

働き方改革は、単なる残業抑制から取引先も巻き込んだ取り組みに

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 BPMに関する研究や普及活動を行う日本BPM協会が実施した業務改革実態調査は、東証1部・2部およびJASDAOなど新興市場の上場企業を中心とする2253社に調査票を郵送で配布/回収し、285社から有効回答を得たものだ。

 回答者は経営企画・人事・働き方改革・業務改革・情報システム部門などの部門長クラスだが、その4割が情報システム部門の所属となっており、また回答企業の業種は製造業が8割、従業員規模1000人以上の企業が過半数を占めている。

 まず働き方改革への取り組み状況について、どんな体制かを聞いたところ、46.1%の企業が人事部門主体で推進していると答えた。一方働き方改革の担当部門を新設して、その部門が推進していると答えた企業は、昨年の6%から22.2%にまで増えている。

「内部的な体制の整備が、ようやく本格化してきたところだと言える」

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働き方改革の取り組み状況:取り組みの主体部門

 具体的な施策としては、ノー残業デーの導入(69.9%)や時間外労働の事前申告(66.2%)といった残業抑制策がそれぞれ1位、2位で、以下、3位がフレックスタイムの導入(48.9%)、4位がテレワーク・在宅勤務の導入(41.7%)と続き、自由度の高い働き方ができる施策が並んでいる。

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働き方改革の取り組み状況:人事制度上の取り組み

 また9割以上の企業が、働き方改革を意識した業務改革にも取り組んでおり、具体的な施策としては、業務プロセスの見直しや改革、改善の推進がトップとなった(72.2%)。

「ただ残念ながら、業務再配分のために可視化をしているところまで辿り着いている企業はまだ20.7%。ここが働き方改革の最終的なゴールになってくると思うが、その意味ではまだ十分な成果が上がっているとは言えない」

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働き方改革の取り組み状況:業務改革との関係

 そして働き方改革を推進する上での課題は、改革実現を支援する環境等に関する問題(19.1%)、仕事の差が原因の問題(2.2%)、関係者の立場や意識に関係する課題(40.4%)の大きく3つに分類されている。

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働き方改革の取り組み状況:推進上の課題

「この中で、特に関係者の立場や意識に関係する課題では、ベンダーや顧客との関係も含めた課題として認識され始めている点が、昨年からの大きな変化となっている。働き方改革は単なる残業抑制から、取引先も巻き込んだ改革・推進になってきたと言える」

AIとRPAはそれぞれ大きく異なる特質を持った道具

 次にAIやRPAの活用状況について、まず横川氏は、業務プロセスを機能別の階層に分類した図を提示した。上位から順番に、事業単位(FL[ファンクションレイヤー]0)→事業機能(FL1)→詳細事業機能(FL2)→業務機能(FL3)→詳細業務機能(FL4)→単位作業(FL5)→要素作業(FL6)→単位操作(FL7)という分類になる。

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業務プロセス階層化の目安とBPMS/RPAの適用階層

「この時にRPAやAIはFL7、つまり1つの操作や作業というレベルに相当するものだ。よく業務改革にRPAを活用するということが言われるが、業務はFL3相当で、たとえば購買見積・発注など1つの仕事が完結していく。RPAはこの業務の中の一部分、受け取った見積もりを開封する、あるいは見積もりをExcelに展開するといった作業のみを担うものに過ぎない」

 この点においては、判断業務を支援する機能を提供するAIも同様だ。

「最終的な決断をAIに担わせることはまだないと思うが、ただFL5やFL6に相当するような日常的に顧客と対峙して何らかのレコメンドをしていくという機能は、AIに任せることができる。つまり現状でAIやRPAがカバーできる領域は、F5~F7までだということ」

 それではAIやRPAの実際の活用状況は、どうなっているのか。まずAIの導入状況について、活用していると答えた企業は昨年の4.1%から12.5%へ、RPAについても10.0%から34.7%へとともに3倍以上の増加となっている。

「このうちRPAについては、導入を検討している企業(44.2%)を含めれば8割近い数字になっており、もう常識的な道具になってきていると言える」

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AI/RPAの活用状況:導入状況

 では実際にどんな分野でAIやRPAを使っているかだが、AIに関しては、IT・システム(22.0%)や製造・生産・品質(22.0%)、コールセンタ(22.0%)、販売・顧客サービス(16.5%)などが挙げられる。

「AIを活用するためにはデータアナリストが必要で、まずは教育用のデータセットを作ることが使い方の基本となる。そうした環境を整備できる部門ということで、IT・システムや製造・生産・品質などが上位に挙がってきているのではないか。やはりAIを活用するためには、データを解析できる人員とデータを収集する技術を持ち込まない限り、難しい。また無回答の企業も42.8%あり、AIという言葉は聞くが、何に使えばいいのかまだ分からないという状態が大半のようだ」

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RPAの活用状況:「AI」導入の検討・活用業務

 一方、RPAの活用・導入検討分野としては、会計・財務(50.8%)、人事・労務(37.7%)、総務・庶務(28.0)、IT・システム(26.7%)などが上位に並んでいる。

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RPAの活用状況:「RPA」導入の検討・活用業務

「会計・財務や人事・労務では、ERPにデータを登録する仕事をRPAにやらせているという使い方が非常に多い。基幹システムにデータを投入するツールとしてRPAが活きている。またRPAでは無回答の企業がぐっと減っている(26.3%)。RPAが何に使えるかは、触ってみればすぐに分かるからだろう」

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AI・RPA導入後の成果・期待効果

 また導入後の成果や期待について、RPAは業務処理時間の短縮(79.7%)や作業ミスの減少など(66.9%)に大変効果的で、一方のAIは、判断・予測精度の向上(42.4%)に成果が出ている。

 「AIとRPAはある種、同列で語られることもあるが、それぞれ大きく異なる特質を持った道具だと言える」

【次ページ】RPAは業務改革に対してインパクトのあるツールとして活用されている

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