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  • 2020/02/08 掲載

GO三浦崇宏:ビジネスは「努力しないで勝つ」が重要、そのために「言語化力」が必要だ

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日本では特に「努力」が美徳とされることが多く、努力しない者に対しては否定的である。だが、「できれば努力しないで成功したい」というのが、人々の本音なのではないだろうか。しかし、そんな方法は存在するのか? 「『言葉』を駆使すれば、努力しないで勝つことができます。仕事も人間関係も人生も、すべては言葉で変えられます。言葉こそが、ただ一つにして最強の武器なんです」と語るのは、『言語化力』を上梓した、クリエイティブディレクターの三浦崇宏 氏だ。なぜ、そしてどうすれば、言葉によって「努力しないで勝つ」ことが可能なのか。三浦氏に解説してもらった。

GO 代表 三浦崇宏

GO 代表 三浦崇宏

The Breakthrough Company GO 代表・PR/ クリエイティブディレクター。博報堂・TBWA\HAKUHODO を経て2017 年独立。博報堂では、マーケティング、PR、クリエイティブ部門を歴任。PR 戦略を組み込んだクリエイティブを数多く手がける。現在は、さまざまな業種のプロフェッショナルを集め、新規事業開発から広告まで幅広く問題解決を手がけるThe Breakthrough Company GO を設立。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで金賞、ACC 総務大臣 賞ほか受賞。雑誌「ブレーン」にて「2019 年注目のクリエイター」に選出される。

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三浦崇宏 氏

戦略とは「努力しないための努力」

 ビジネスの世界ではよく「戦略」という言葉が使われる。「戦略」という言葉は戦うための作戦のように考えられている。だが、少し違う解釈をしてみよう。

 「戦略」とは、「戦いを略す」と書く。すなわち戦略とは「戦わないで勝つ方法」のことなのだ。相手の得意分野や、自分が苦手なルールでは決して戦わない。もっと言えば敵がいない場所、戦わなくてもいい道を探る。戦いに勝つ努力をするのではなく、努力しないで勝つやり方を考える。これこそが「戦略」という言葉の本当の意味だ(あくまで三浦の解釈なので語源警察はお断りだ)。

 ぼくは高校時代、進学校の柔道部の主将だった。当時は身長も低いし小柄だった上に、学業優先の校風で、そんなに練習の時間も取れない。もっと言うと筋トレや走り込みみたいな地味でキツイ練習はしたくなかった。それでも、結果にはこだわりたかった。勝ちたかった。そこで初めて「戦略」を考えた。ぼくが人生で初めて考えた戦略は、弱小校で練習時間も取れない柔道選手がどうやって強豪校の、体格にも練習量にも恵まれた相手に勝てるか、という課題に対するソリューションだった。

 そこでたどり着いた仮説が、「人間は、知っている技は防げる」ということだった。柔道の強豪校は多くが大学生と練習している。彼らの柔道技を受けたことがある選手たちが、ぼくの技を受けたところでビクともしないだろう。しかし、彼らが知らない技だったら防げないんじゃないか、と考えて、みんなが背負い投げなどオーソドックスな技を猛練習している中、レスリングやブラジル柔術、総合格闘技など違う格闘技の練習に励んでいた。

 結果は面白かった。一部の関係者からは「あんなの柔道じゃない」とか「そこまでして勝ちたいのか」みたいな批判を受けながらも、相手をバタバタとなぎ倒し、当時ぼくの通っていた高校としては初めて全国大会に出場した。

 このとき、勝負事は戦略が重要である、とハッキリと自覚したことを覚えている。そして、戦略とは「努力しないための努力」なのだと明確に意識した。

 それ以来、人生のあらゆる場面でこの考え方は役に立っている。たとえば大学受験のセンター試験は、勉強がまったくできない高校3年生でゼロからのスタートだったので、倍率が高い「英語」ではなく「フランス語」で受験した。

 大手の広告代理店に就職してからも、若手の登竜門的な広告の賞で全員新人賞に応募させられるのだが、よくよく見たら各社の新入社員が強制的に応募させられる新人部門よりも、暇なベテラン社員が有志で参加する一般部門のほうがはるかに倍率が低かったので、新人なのにしれっと一般部門に応募して受賞したりなど、とにかく努力しないで成果を出すための努力には本当に手を抜かなかった。

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戦略とは「戦いを略すること」だというのが三浦氏の考えだ
(Photo/Getty Images)

「戦わずに勝つ」ための道具、それが言葉

 「戦略」を戦うための考え方だと認識しているとどうしても発想が狭くなってしまう。マーケティングの事例では、ある眼鏡会社がカラーコンタクト事業を始めるときに、他のメーカーが「印象が変わる」という効能で競い合っていた中で、そのメーカーはあんまり「印象が変わらない」ということを売りにした。それによって派手になりすぎることを嫌う20代後半以上の働く女性たちのニーズを押さえた。言葉一つで既存のメーカーとの競争から抜け出し、新しい市場を見つけ、勝利したのだ。

 こんな風にそれから10年以上たった今でも、ぼくのクリエイティビティは「結果を出したい」という異常なほどの貪欲さと、「努力をしたくない」という人知を超えた怠惰から生まれているような気がしている。

 もう1回言うが、戦略って、「努力しないで勝つ方法を考えること」なんだ。戦を略すと書いて戦略。だからぼくは、どうやってその戦いから前向きに逃げて勝つか、ということを常に考えている。努力をしないための努力を、めちゃくちゃしてほしい。そうすれば、どんな相手だって倒せるし、どんな仕事だって面白くなる。

 柔道をやっていたときの「才能がなくても、練習量が少なくても、それでもどうしても勝ちたい」という気持ちが、今の仕事にも変わらずに息づいている。ぼくの専門であるマーケティングやクリエイティブ、PRも、すべては物量や資金量を超えて市場で勝利するための思考法であり、技術だ。

 そしてこの努力しないための努力という考え方のベースには、やはり「言葉」がある。自分自身ができることを明確に言葉で定義する。自分にとって本当の勝利とは何かをしっかりと言葉で定義する。すべての努力・戦略・勝利のスタートは言葉だ。ライムスターは「スタイルはスレスレ 非合法ぐらいの逆転の思考法」と言った。言葉を変えることで、思考法を変えることで、結果を変えることができる。

 「言葉」によって新しい市場を定義し(マーケティング)、言葉によって新しい概念を作って広め(PR)、言葉によって大企業の組織改革をし、言葉を中心に置くことで大規模な音楽フェスやビジネスカンファレンスといったイベントも成功させている。どんな画期的なクリエイションも、どんな大規模なプロジェクトも、そのコアにあるのは常に言葉だった。言葉によってあらゆる困難な状況を突破してきたのだ。

【次ページ】モノの「優劣」の基準が変わってきている

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