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- 2021/02/23 掲載
MR(Mixed Reality)市場は今後どうなる? マイクロソフトが示す6つの普及シナリオ
進むB2B活用、トヨタはどう使っているのか?
Mixed Realityの概要と市場動向
Mixed Reality(複合現実)とは現実(Real)と仮想(Virtual)環境の中間に位置する存在で、いわゆるAR(拡張現実)やVR(仮想現実)を包含する概念になる。マイクロソフトは、Mixed Reality(以下、MR)は第4世代のコンピューティングプラットフォームになると位置づける。環境的にいつでもどこにいてもインターネットにつながることができるようになり、リモートワークも推奨され、私たちの仕事や生活は劇的に変化している。とはいえ、つながっているのは画面越しの世界でしかない。デジタルの恩恵は、いまだ、PCやスマートフォン/タブレットなどの画面の中でしか受けられない。2次元の画面をインターフェースとする限り、それはどうしても外せない制約だ。
AR、VR、MR(これらをXRと総称することがあるが)は2016年頃からすでに、2次元の画面を超えた表現ができるものとして注目されている技術だ。ただ、AR/VRはこれまでどちらかというとゲームタイトルやウェブサービス、インタラクティブアート作品での活用など、エンタメのイメージが強い。一方、現在ビジネスの分野で特に注目されているのがMRの表現力だ。
ざっくり言ってしまうと、MRとはデジタルコンテンツを高解像度のホログラムで物理世界に投影することで、現実の世界を別の“見えている世界”に置き換えてしまおうという技術だ。肝は、物理とデジタルを融合する濃度を少しずつ変えていくことで多様な表現が可能となるという点だ。エンタメのコンテンツからソーシャルメディアの画面、パソコンで見慣れたグラフや表など、さまざまなものを目の前の空間に表示できる。VRとは異なり、現実世界の視界をシャットダウンしないため、ある意味、枠のないディスプレイに描かれているものとして表示を認識できる。
現在、「NrealLight」「Magic Leap 1」など、いくつかMRに対応するデバイスが出ているが、代表的なものがマイクロソフトが開発販売する「HoloLens」ということになる。現行のバージョンは2世代目(HoloLens 2)だ。
マイクロソフトの調査では、2020年には61億ドルの規模だったMRの市場は、2025年には約343億ドル規模まで急速に拡大するとされる。
その半分は業務支援・業務改革といった法人向けの用途であり、もちろんオフィスワークの生産性向上という文脈もあるが、より大きな成長分野と見なされているのは製造、建設、医療など、いわゆるデスクワーク以外の“現場”での活用だ。
マイクロソフトは非オフィスワークに従事する現場の働き手を「ファーストラインワーカー」と称し、市場づくりを目指しているという。B2Bのシーンで期待されるのは業務トレーニングや、適切な場所・タイミングでのマニュアルの提示など、業務支援のフィールドだ。
トヨタによるHoloLens 2の活用事例
トヨタ自動車では2019年5月から自動車の修理・点検業務にHoloLens 2を活用する検証実施を行ってきたが、その取り組みが発展し、2020年10月より全国のGR Garage56店舗にHoloLens 2が導入され、機能解説や遠隔地とのコミュニケーション支援だけではなく、配線図・艤装(ぎそう)図を使うようなシーンにも活用されているという。たとえば、車体に各種装備を取り付けるための配線図・艤装図を実車に重ね合わせて表示することで、2次元の図版ではわかりにくい部品やコネクタの配置を直感的に理解することができる。
3次元ホログラムでの艤装図は現在、GRヤリス、C-HR、プリウスの3車種について実現されている。また、GRヤリスでは新型車の機能解説もMixed Realityに対応している。自動車の機能や稼働状況をアニメーションで表現し、実車にホログラムで重ね合わせて投影することで、その構造や仕組みの理解を助けるというものだ。
そのほか作業手順書やガイドなど、まさに実業務の現場で使われ始めている。
このように現場で実際に使われていくためにはハードウェアだけではなく、使うためのアプリケーションが必須となる。これまでは市場の立ち上がりということでビジネスのメインはハードウェアだったが、今後はOS/クラウド、そしてアプリ/コンテンツへとシフトしていくというのがマイクロソフトの見立てだ。
【次ページ】HoloLens 2活用の6つのシナリオ
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