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  • 2021/02/19

山口 周 氏が考える2030年、「メディアと流通が決めていた」モノづくりはどう変わる?

連載:2030年への挑戦

2020年はコロナにより私たちを取り巻く環境が大きく変化した。これは元に戻らない不可逆的な変化だ。それでは、コロナ後の社会はどうなるのか? それはコロナ前の社会がどんな社会だったかを考察することから始まる。「ビジネスの歴史的使命の終了」というショッキングなテーマを提示する『ビジネスの未来』を昨年末に上梓した、独立研究者・著作家の山口周氏に、「2030年の未来」について単独インタビューを実施した。

執筆:I&Wパートナーズ 児玉徳子、撮影:大参久人

執筆:I&Wパートナーズ 児玉徳子、撮影:大参久人

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独立研究者・著作家・パブリックスピーカー
ライプニッツ代表
山口 周氏

どんな時代にしたいか、未来を構想する

──2030年はどんな時代になると思われますか?

山口周氏(以下、山口氏):2030年がどうなるかは、2020年代がどう総括されるかだと思います。先進7カ国のGDP成長率は1960年代が5.5%だったのが、2010年代には1%にまで落ち込みました。2020年は-4%となり、2021年も同じだと言われています。つまり、コロナがあってもなくても、先進国はほぼ成長しない時代に突入しています。

 この状態を「低成長」「停滞」「衰退」とネガティブに捉えがちですが、これは何ら悲しむべき状態ではありません。今、私たちに課せられた仕事は、終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命措置を施すのではなく、この「高原」を「新しい活動」により、「安全で便利で快適な世界」から「真に豊かで生きるに値する社会」へと変えていくことです。

 成長しないと困る、という人も多いのですが、この成長しないという状態を、どれだけ豊かに精神的に安定した状態で受け入れられるかが、2020年代の大きなチャンレジになると思います。

 生物学者の福岡伸一先生によると「コロナの問題は、それを解決したらまた元どおりになる、という問題ではない。コロナが発生するに至った要因は、明らかに人間にあるので、大きな修正が求められるだろう」とのことです。

 200年間ずっと都市に人口が集中したというトレンドが、コロナウイルス感染をきっかけにブレーキがかかり、大都市から地方への移住に関心を示す人が増え、この流れは元に戻らないでしょう。

 僕は予測が嫌いなので、予測はしません。重要なことは、予測ではなく、これからの未来をどうしたいかです。コロナはひとつの「ゆさぶり」なんです。この「ゆさぶり」に際して、「どのような社会をつくりたいか?」と構想することが大切です。

人それぞれの「いい人生」を見つけよう

山口氏:今、「いい人生」のモデルがとても幅の狭いものになっています。いい学校に入り、いい会社に就職し、同じ会社で長く働き、上を目指す、という単線的な人生をよしとする風潮がまだまだあります。幸せな生き方、いい人生、Well-Beingが、人それぞれの形で認められる、そんな社会になってほしいと考えています。

 最近NHKで、ドイツ人の建築家のカールさんが新潟の古民家を再生し、豊かな自然の中で楽しく暮らしている生活が紹介されました。とても素敵な生活でした。このような「いい人生」の選択肢を見せられると、ものすごくインスピレーションを受けて、東京から移り住みたいという人が増えるのではないでしょうか。

カールさんとティーナさんの古民家村だより

新潟の限界集落を、ドイツ人建築デザイナーのカールさんがよみがえらせた。朽ちかけた空き家を次々に再生。美しい古民家が多くの人をひきつけ、子育て世帯も増えてきた。和洋折衷の心地よいインテリア、湧水を引いた庭でのガーデニング、育てた野菜を使って妻ティーナさんが作るとびきりおしゃれな料理。移住してきた人々も、集落の人たちとともに、豊かな自然の中でそれぞれの暮らしを楽しむ。「奇跡の集落」と呼ばれる新潟の古民家村のひと夏を描く。

 多種多様な「いい人生」を知ることにより、経済成長しない状態を豊かに生きることはできると思っています。

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──シニアは多様な人生を許容できますが、若い人たちはどうでしょうか。

山口氏:今の若者は環境問題などにも敏感だし、「いい生き方」のモデルも多様化しています。僕たちが若いころには、田舎の古民家を改装した素敵な生き方といった、チャーミングな人生の事例の提示がまったくなかったし、そんな生活を快適にする便利な通販もありませんでした。それに比較して、今の若者たちは、インターネットが出てきたこともあり、さらに多様な生き方に触れています。

 今、日本は、OECD諸国の中で、子供たちが人生に対する希望とか期待値が一番低い国になってしまっています。それは、いい人生のモデルの範囲がとても狭くて、ごく一部の人しか勝ち残れない、多くの人が敗者になる、という社会イメージを捉えているせいです。親自身がそのように捉えているので、暗示的に子供に言ってしまう。「こんな偏差値だとホームレスになっちゃうよ」と。それはいかに恐ろしいことでしょうか。

 パウロ・コエーリョが『アルケミスト』という小説の中で、「世界を恐ろしいところだと捉える人が、ある一定量出てくると、本当に恐ろしい場所になってしまう」と書いています。その恐ろしい場所にしているのは、当の人間です。

 非常に狭い「いい人生」のイメージが幅をきかせているからであって、そうじゃない人生がある、ということをどんどん紹介していかなければなりません。その点で、2020年代のメディアの社会的使命は大きいと言えます。

【次ページ】「小さく、近い、美しい」社会に

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