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  • 2021/09/27

フリマで「ヤフオク」が「メルカリ」に勝てない理由、戦略の決定的な違いとは?

【連載】成功企業の「ビジネス針路」

競合企業の持つ「強み」を「弱み」を変える。そんな夢のような戦略があったら良いと思いませんか。実は、成功したベンチャー企業のほとんどは、リーダー企業の「強み」を狙い撃ちし、リーダー企業が真似したくても真似できないという板挟み(=ジレンマ)に追い込んでいるのです。本連載ではこのような戦略を「ジレンマ戦略」と呼びます。第4回は、皆さんおなじみのメルカリを取り上げます。なぜメルカリは、個人間オークションでは圧倒的な強さを誇るヤフオクを凌ぐことができたのか。今回はメルカリの「ジレンマ戦略」をご紹介したいと思います。

社内企業家 平塚隆介

社内企業家 平塚隆介

大手エネルギー会社勤務。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得後、給油所での個人向けカーリースを会社に提案し、初期投資2億円でゼロから1,500億円のマーケットを創出。その後も新規事業に携わり、現在はプロジェクトの責任者として黎明期にある国内での洋上風力発電事業に携わる。専門はビジネスモデル、事業戦略。500以上の事例をもとに、弱い企業が強い企業に打ち勝つための方法論を構築し、日々実戦で活用を行っている。

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メルカリとヤフオクの戦略には、どのような違いがあるのでしょうか?後ほど詳しく解説します
(出典:各社HPより筆者作成)
 


メルカリのサービス内容

 まずは、改めてメルカリのサービス内容を見てみましょう。メルカリは、「捨てるをなくす」循環型社会の実現を目指し、スマホを使って個人間で物の売買ができるフリマアプリを展開し、成長を続けています。いわゆるプラットフォーム型のビジネスモデルで、売りたい人と買いたい人をマッチングする「場」を提供し、売買成立時には、購入者から10%の利用料を得る仕組みです。

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メルカリのビジネスモデル
(出典:各種資料より作成)

 メルカリは、使い勝手の良いアプリや、匿名発送などユーザーフレンドリーな施策に加え、テレビCMの効果もあって、出品数を大きく拡大しました。購入者からは、他人と競うことなく、スマホで誰でも気軽に売買できる点が、支持されています。ヤフオクとのサービスの違いをまとめると以下の通りです。

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メルカリとヤフオクは、同じ個人間オークションだが、サービス内容、ターゲット、使用デバイスなど、違いは多い
(出典:各社HPより筆者作成)

 対するヤフオクは、ネットオークションで圧倒的な強さを誇っています。メルカリがサービスを開始した2013年、ヤフオクの取扱高は7,500億円を超え、メルカリにとっては雲の上の存在でした。その8年後の2021年には、メルカリの取扱高(国内流通総額)約7,800億円*に対し、ヤフオクをはじめ「PayPayフリマ」、「ZOZOUSED」を含む、Zホールディングスのリユース事業は約8,500億円*と、その差は急速に縮まり、スマホ利用者数では、メルカリがヤフオクを逆転しています。

*メルカリは2021年6月期、ヤフオクは2021年

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年々、ヤフオクとメルカリの取扱高の差は縮まってきている
※ヤフオクの数字は、ヤフオクをはじめ「PayPayフリマ」、「ZOZOUSED」などを含む、Zホールディングスのリユース事業
(出典:各社IR資料より筆者作成)

 また、2021年に実施されたMMD研究所の「フリマサービス・アプリに関する利用実態調査」では、フリマサービス・アプリの利用率で、メルカリがヤフオクを上回る結果となっています。

メルカリの「戦略カード」を分析する

 通常であれば、王者ヤフオクが、メルカリと同様の戦略(同質化戦略)をとってしまえば、メルカリはゲームオーバーとなるのですが、実際にはそうはなりませんでした。それは、メルカリの戦略上の打ち手(=戦略カード)が優れていたからにほかなりません。メルカリのカードを7つの視点から見てみましょう。

(1)顧客ターゲット:「顧客限定」
現在は幅広い層の支持を受けているメルカリですが、当初は、20代から30代の女性にターゲットを絞り込みました。ヤフオクの顧客は、特に40代以上の男女の利用者が多くなっており、追随は困難です。
(2)製品・サービス:「機能特化」
メルカリは、フリマに特化しています。ヤフオクにも、もともと「即決価格」を明示することでフリマのように出品できる機能があったのですが(2017年に「フリマ出品」機能を追加)、オークションで収益を上げているヤフオクが、フリマに特化することは困難です。
(3)料金設定:「無料化」
メルカリは出品料を無料にして、新規顧客の獲得に成功しました。一方、ヤフオクに出品するためには月額498円のヤフープレミアム会員になる必要がありました。ヤフオクは2018年、無料化に踏み切りますが、ヤフオクにとって収益源を捨てる決断は、容易なことではありませんでした。
(4)販売チャネル:「新業態」
メルカリは、PCをあまり使わない主婦や若年層をターゲットとして、スマホでの利用を前提にサービスを開発しました。また、フリマに特化しているため、シンプルで簡単な操作が可能です。これに対し、ヤフオクはPCでの利用を前提に開発されており、機能も多いことから、スマホでの使い勝手向上は簡単ではありません。
(5)プロモーション:「ビジョン」「ユーザーフレンドリー」
メルカリは、気軽に素早く売買するために必要な、無料出品、匿名発送、電話での問合せ対応*などユーザーフレンドリーな施策を矢継ぎ早に展開してきました。一方で、オークションで高く売れること訴求するヤフオクに、「気軽さ」や「素早さ」の訴求はできず、初心者向けのサポート施策は後手に回っています。

*現在、一般利用者向けの電話対応はしていない
(6)自社の資産:「資産限定」「新規資産」
メルカリは、フリマに特化しているため、システムの簡素化が可能です。ヤフオクが自社データセンターを運営しているのに対し、メルカリはアマゾンやグーグルのクラウドサービスを活用し、固定費削減を図っています。一方で、メルカリは(ヤフオクにはない)電話対応スタッフを数多く抱え、顧客満足度の向上を図っています。
(7)パートナー:「パートナーなし」
ヤフオクは販売業者の参加を積極的に推進していますが、メルカリは、販売業者の参加を制限しています。これにより、個人でも気兼ねなく出品ができ、女性を中心とする顧客の支持拡大につながっています。すでに販売業者から多額の手数料収入を得ているヤフオクは追随が困難です。

 このように、メルカリの戦略カードは、いずれもヤフオクの強みを逆手にとっており、強みがあるがゆえに追随しにくいものとなっています。

ヤフオクを追い込んだ、メルカリの「逆張りカード」とは?

 上記の「戦略カード」の中には、一見すると非合理的なカード(逆張りカード)が含まれています。

 1つ目は、(6)の「電話対応スタッフ」です。メルカリの全従業員の半数近くはカスタマーサポートのスタッフが占めており、ヤフオクにはない電話対応も行っています。ベンチャー企業にとって多額の人件費負担は重荷ですが、初心者ユーザーの多いメルカリは、電話対応まで含めて自社スタッフで行う決断を下し、利用者の生の声をサービス改善に生かしています。

 2つ目は、(7)の「販売業者の制限」です。ヤフオクが販売業者をパートナーとして、積極的な出品を推進しているのに対し、メルカリは販売業者の出品を制限してきました。出品数や手数料を犠牲にしても販売業者を制限する狙いはどこにあったのでしょうか。

 メルカリのユーザーには前述の通り女性も多く、価格以上に、出品したモノの価値を認めてくれる人に譲りたいという思いがあります。「共感」はメルカリにとって大事な要素です。ここに販売業者による商品が数多く出品されてしまうと、共感のレベルは大きく下がることになります。また、販売事業者(=プロ)の商品ばかりでは、個人(=素人)が気軽に出品することは難しくなります。

 なお、メルカリは、2021年9月より、個人・中小事業者向けに、メルカリのプラットフォームを使って簡単に出品できるECサービス「メルカリShops」を開始しました。これにより、メルカリには、販売事業者の商品が並ぶこととなります。「共感」のレベルを下げずに新たな需要を取り込めるか、注目したいと思います。

 ここまで紹介してきた、一見すると非合理的にも思える「逆張りカード」は、メルカリの「捨てるをなくす」というビジョンを実現するためには、いずれも必要なカードであり、これがメルカリの差別化戦略を強固なものにしています。

【次ページ】「ヤフオク」が「メルカリ」に勝てない理由
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次のページでは、「ヤフオク」と「メルカリ」の戦略を比較し、ヤフオクがメルカリに勝てない理由を解説します

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