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  • 2021/09/22

TikTokがあっという間に世界一になったワケ、バイトダンスの“電撃的”マーケ戦略とは

「TikTok」の勢いが止まらない。日本経済新聞の8月付の報道によると、2020年の世界でのダウンロード数はフェイスブックを抜き首位に躍り出た。SNSとしては後発ながら、これほど爆発的なヒットとなったのはなぜか。高千穂大学 商学部 永井竜之介准教授は、著書『リープ・マーケティング 中国ベンチャーに学ぶ新時代の「広め方」』で、 中国ベンチャーの劇的な飛躍の根幹にある独自のマーケティング戦略「リープ(飛躍)・マーケティング」の代表例がTikTokだと説く。本稿では、リープ・マーケティングの4つの手法「加点型マーケティング」「未来型共創マーケティング」「ブルーポンド戦略」「ブリッツスケール」の4つから、特にブリッツスケールの観点から、そのやり口を明らかにする。

高千穂大学 商学部 准教授 永井竜之介

高千穂大学 商学部 准教授 永井竜之介

1986年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、同大学大学院商学研究科修士課程修了の後、博士後期課程へ進学。同大学商学学術院総合研究所助手、高千穂大学商学部助教を経て2018年より現職。専門はマーケティング戦略、消費者行動、イノベーション。日本と中国を生活拠点として、両国のビジネス、ライフスタイル、教育等に精通し、日中の比較分析を専門的に進めている。

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「今日頭条(トウティアオ)」「TikTok」といったプラットフォームを、後発ながら圧倒的なスピードで広めたバイトダンス。その手法とは
(写真:ZUMA Press/アフロ)
※本記事は『リープ・マーケティング 中国ベンチャーに学ぶ新時代の「広め方」』の内容を再構成したものです。

ライバルを置き去りにする「電撃的拡大」

 リープ・マーケティングの戦略の1つが、ブリッツスケール(電撃的拡大)だ。数多くつくった小さなビジネス(ポンド)の中から、選択と集中を行い、これと決めたポンドに焦点を定めて、圧倒的な速度と規模で急拡大させる。ポイントは、そのスピードにある。

 有望なポンドをつくれても、その後の規模拡大が緩やかなスピードであれば、競合企業が参入してきてしまうだろう。強いブランド力と豊富な資金力を持つ後発の大企業が、先発のベンチャーが開拓した市場を上から奪い取って、オーシャンへ広げていくケースは実際のところ少なくない。また、下からも新たなベンチャーが続々と参入してくる。

 上から現れる大企業と、下から突き上げてくるベンチャーが強力なライバルになる前に、ポンドをオーシャンへ急拡大させて、そのカテゴリーにおける「キング」の地位を確立しておくことが望ましい。

 一気にプロダクトを更新・強化して、普及を広げ、顧客を囲い込むことができれば、ライバルの参入そのものに歯止めをかけることができる。

 また、多くのビジネスは一定以上の規模に広がることによって収益性が高まる。規模の経済性に従って、普及が広がるほど商品1つあたりのコストは低く抑えられるようになる。利用者の手数料や広告を収益源とするネットサービスでも、一定ライン以上に普及して初めて黒字化するケースが一般的だ。

 ビジネス特化型SNSのリンクドインは、数百万人の登録者が集まってようやく利益が出るようになった。ネットオークションのイーベイ、消費者間取引の淘宝(タオバオ)やメルカリは、そもそも一定規模の買い手と売り手がそろってからでないとサービスが成立しない仕組みになっている。

 GAFAで見てみると、1994年に創業したアマゾンは、1996年から1999年の3年間で収益を510万ドルから16億4000万ドル、登録口座数を18万から1690万、従業員数を151人から7600人へとブリッツスケールさせた。

 1998年に創業したグーグル(現アルファベット)も、2001年から2007年の6年間で収益を8600万ドルから166億ドル、年間検索件数を270億件から3720億件、従業員数を284人から16805人へと変貌させている。

 2004年創業のフェイスブックも同様で、2006年から2011年の5年間で、収益を4800万ドルから37億ドル、月間アクティブユーザー数を1200万人から8億4500万人、そして従業員数を150人から3200人へと劇的に拡大させている。

高いゴールを掲げなければ、急拡大は不可能だ

 こうした急拡大に不可欠となるのが、高い目標設計だ。「ゴールをどこに置くか」が、ブリッツスケールにおいて極めて重要な要素になる。明確で高いゴールを掲げなければ、ヒト・モノ・カネは集められないし、それらを有効活用することもできない。ビジネスの飛躍の兆しを感じ取り、高い目標を掲げ、リスクを取って急拡大させられるかどうかに成否がかかっている。
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『リープ・マーケティング 中国ベンチャーに学ぶ新時代の「広め方」』
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 あるいは、目標設計は「ライバル選び」と言い換えてもいい。ITビジネスであれば、「GAFAを超える」と言えるかどうか、と考えればわかりやすいだろう。

 基本的なビジネスサイズの成長曲線は、プレーヤーごとに特徴が分かれる。大企業と中小企業は、それぞれ適正規模で適正成長を目指しやすい。特に失敗とリスクを敬遠しがちな日本の大企業と中小企業では、自社の既存ビジネスを踏まえた上で、堅実な適正成長が選ばれる傾向にある。

 それに対して、ベンチャー企業はそもそも「短期間で急激な事業成長と規模拡大を狙う新興企業」と定義される組織であり、“Get Big Fast”(速く、大きく)を追い求める存在だ。そのため、ハイリスク・ハイリターンで、通常では考えられない速度と規模でビジネスを大きくしていく。だからこそ、その飛躍の可能性にかけたエンジェル投資家やベンチャー・キャピタルから資金を調達することができる。

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主体別に見たビジネスサイズの成長曲線
(出典:筆者作成)

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