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  • 2022/08/09 掲載

アップルも脱中国?世界の生産拠点で重要性高まる東南アジア、注目すべき国とは

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パンデミックの影響やウクライナ問題など、さまざまな側面で露呈し始めているチャイナリスク。これにより多くの企業がサプライチェーンの多様化に踏み切るようになっている。脱中国と同時に起こっているのが東南アジアへの生産能力シフトだ。直近では、アップルがiPadの生産能力の一部を中国からベトナムに移転した。域内では、このほかマレーシアやインドネシアで海外直接投資が急増しているという報告もある。脱中国の裏側で起こる、東南アジア投資ブームの動向を探ってみたい。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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脱中国と同時に東南アジアへの生産能力シフトが起きている
(Photo/Getty Images)

アップルのベトナムシフト

 パンデミックでグローバルサプライチェーンの脆弱性があらわになり、各企業ではサプライチェーンの見直しの動きが加速中だ。

 2020年末にはアップルがiPadの生産能力の一部を中国からベトナムにシフトするとの報道がなされ、注目を集めた。

 ブルームバーグの6月2日の記事はベトナム当局の話として、アップルのiPadを受託生産している中国のBYDが、同月内にもベトナム北部フート省でiPadの生産を開始する計画だと伝えている。工場の規模は350億円ほどとみられ、1年間に生産できるiPadは433万台に上るという。

 このアップルの動きは、サプライチェーンの見直しにおいて、中国を脱した企業がどこに向かっているのかということに関しても有益な情報を示すものだ。

 脱中国の裏側で今起こっているのは、ベトナムを含めた東南アジアでのサプライチェーン構築の動きだ。

 アップルの報道によりベトナムに関心が集まりがちだが、数字をみると、東南アジアの中では、マレーシアやインドネシアにおける海外直接投資が急増し、記録的な伸びとなっている。

 量的な変化だけなく、特にマレーシアでは半導体製造など高付加価値かつ高度技術を要する分野での海外投資が増えており、質的な変化も加速している。グローバルサプライチェーンにおける東南アジアの存在感は、今後ますます高まることが予想される状況だ。

米国有力シンクタンクも投資推奨するマレーシア

 海外直接投資(FDI)に関するデータサービスを提供するfDI Intelligenceによると、2021年マレーシアにおけるグリーンフィールドFDI投資額は、243億ドル(約3兆3112億円)とベトナムの99億ドル(約1兆3490億円)の2倍以上、またインドネシアの3倍ほどの規模に達したという。

 FDIは大きく、外国企業が新興国において工場を新設するところから始める「グリーンフィールドFDI」と、新興国企業を買収して既存の生産ラインを活用する「ブラウンフィールドFDI」に分けられる。上記fDI Intelligenceのデータは、前者のデータを分析したものだ。

 一方、シンガポール紙ビジネス・タイムズは、マレーシアとインドネシアにおけるFDI額が2021年通年、また2022年1〜3月期に過去最高額に達したと伝えている。

 米有力シンクタンクの1つミルケンインスティテュートも最新レポートで、東南アジアの中でマレーシアの投資環境が最も優れていると評していることから、同国における海外直接投資は、脱中国の加速とともに今後さらに拡大してくるものと思われる。

 「Global Opportunity Index 2022 Focus on Emerging Southeast Asia」と題された同レポートは、東南アジア新興国に焦点を当て、投資機会の可能性を分析している。分析対象は、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム。シンガポールは先進国扱いとなり含まれていない。

 投資機会を評価する上で、用いられる項目は「ビジネス認識」「経済基礎的条件」「金融サービス」「制度的枠組み」「国際標準・ポリシー」の5つ。これら5つの項目で評価すると、東南アジア新興国の中で最も投資機会が大きい国としてマレーシアが浮上してくるのだ。

 「ビジネス認識」項目では、企業が直面するリスク、また紛争解決メカニズムにおける回復度合いを評価。一方、「経済基礎的条件」はマクロ経済指標や労働力・人材の質、「金融サービス」では当該国の金融セクターの成熟度合い、「制度的枠組み」では政府の政策・規制関連情報の入手難度や国内会計基準の強さなどが評価される。また「国際標準・ポリシー」では、グローバル経済との統合度合いや経済の開放度合いが分析されている。

 これらを総合した指数をみると、マレーシアはグローバルで25位となり、東南アジア新興国の中では首位に位置するのだ。域内2位はタイだが、グローバルでは34位に位置、次いでインドネシア(グローバル57位)、ベトナム(67位)、フィリピン(83位)、カンボジア(95位)、ラオス(98位)の順となる。

 項目ごとの順位をみると、マレーシアは特に金融サービスと制度的枠組みが高く評価されており、これらが強みとなっていることが分かる。グローバルでの順位はそれぞれ24位と21位。

 他の国の項目別順位をみると、金融サービスでは、タイが31位で健闘しているものの、ベトナムは72位、インドネシアは78位、フィリピンは96位と、マレーシアの優位性が際立つ結果となっている。

 制度的枠組みにおいても、タイ46位、インドネシア54位、ベトナム91位、フィリピン95位などと、こちらもマレーシアが圧倒的に良い評価を得ている。

【次ページ】インテルが投資加速、盛り上がるマレーシアでの半導体投資

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