- 2022/12/08 掲載
アングル:中国の国際線復活が視野、ロ領空巡り欧州と摩擦も
中国の航空会社は欧州に向かう際にロシア領空を飛行できるのに、欧州勢はそれを禁止されたまま中国便の運航を迫られるためで、場合によっては中国と欧州連合(EU)の新たな摩擦に発展してもおかしくない。
西側諸国がロシアにウクライナ侵攻を巡る制裁を発動した後、ロシアは報復措置として欧州などの36カ国の航空会社に同国の領空飛行を禁止した。ところが中国の貨物便は今もロシア領空を飛び続けており、旅客便も復活すれば同じく飛行が認められるかもしれない。
国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ事務局長はロイターに「戦争が続くうちは制裁解除の機運が出てくるとは予想されない」と語った上で、中国が国際旅客便市場に戻ってくれば予想外の影響を及ぼす恐れがあると指摘した。
ウォルシュ氏は「欧州とアジアの輸送フローに大きな影響があるのは間違いない。欧州の航空会社からは、ロシア領空を飛べる会社と飛べない会社があるのは果たして公平なのかとの疑問が出てくることも考えられる。来年はこの問題を巡る議論が激しさを増すだろう」と警戒する。
ロシアが36カ国に適用した領空飛行禁止措置の影響は、これまで中国の旅行需要が非常に低調だったため表面化してこなかったが、いみじくもウォルシュ氏の発言で問題の大きさが浮き彫りになったと言える。
実際、この影響は広範囲に及ぶ可能性がある。欧州航空航法安全機構(ユーロコントロール)によると、欧州─アジア路線1便は通常、乗客が主要ハブで乗り継ぎする関係から、3便分の輸送量を生み出すとされるからだ。
ユーロコントロールのイーモン・ブレナン事務局長は10月、中国の貨物便がロシア領空を通過してベルギーのリエージュなどの主要ハブに到着している一方、欧州の航空各社は南欧周りで3時間ないしそれ以上余分な飛行を強いられていると訴えた。
<大混雑>
ブレナン氏は、今はまだ不満が表面化していないとしながらも、来年1─3月ごろまでに旅客数が増え、中国も国際線運航を再開すれば「中国勢と競争関係者にある航空会社、特に長距離便を運航している向きはこの(不公平さ)を声高に叫ぶだろう」と述べた。
航空各社は、ウクライナでの戦争が激化し、国際線の飛行を巡る今の状況が長期化するのを懸念している。
ウォルシュ氏は6日、ロイターに「欧州─中国間を飛ぶ(欧州の航空会社は)飛行時間と距離が大きく増える半面、欧州路線を運航する中国の航空会社はそうならない。いつの時点でより正常な運航環境に戻るのか議論する必要がある」と説明した。
ロシア領空は、多くの国際便にとってアジアと欧州ないし米国を最短時間で飛行できるルート。中国勢以外では、一部のペルシャ湾岸諸国とインドの航空会社も引き続き飛ぶことが許されている。
欧州の航空会社をさらに悩ませているのは、日々の運航上の問題だ。ユーロコントロールが先週公表したデータに基づくと、欧州─アジア太平洋間の便数は2019年の同時期に比べて24%減っている。しかしロシア領空が閉ざされたまま旅行需要が急回復する中で、南欧の上空を飛行する便数はむしろ密度が高まってしまった。
欧州の旅行需要ピーク期となる来年夏には、こうした混雑に拍車がかかるのではないかと不安視されている。
ブレナン氏は「19年の90%の便数を8割の飛行空域で運用している。つまりバケツの容量が小さくなったのに、水は若干多くなったということだ。問題は長距離便が短距離便用の空域に入り込んでいることで、本来ロシア領空に向かう便がトルコに向かっている」と明かした。
(Emma Farge記者、Tim Hepher記者)
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