- 2023/02/10 掲載
国内ファンドが最終提案=東芝再建、買収額の妥当性焦点
東芝は9日、経営再建に向けた入札で優先交渉権を持つ国内ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)陣営から、提案を受け取ったと発表した。JIPが提示した最終案は約2兆円を投じて東芝を買収し、非上場化する内容。ただ、再建案の公募開始から約10カ月が経過した間に株価は500円程度下落した。買収額は現在の時価総額と同程度にとどまり、東芝株を保有する「物言う株主」がこの水準の価格で売り渡すことに納得するかが焦点になりそうだ。
今後、東芝は社外取締役らによる特別委員会が提案内容を精査する。メンバーには、物言う株主の米資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネジメントとエリオット・マネジメントからそれぞれ送り込まれた社外取締役2人が含まれ、その意向が結論を左右する見通し。両氏の社外取締役選任に際しては、取締役会で「公平性を欠く」と反対の声が上がった経緯もあり、協議の行方は見通せない。
東芝は昨年4月、買収による非上場化を含む経営再建案の公募を発表した。2017年に債務超過を回避するために物言う株主の出資を仰いで以来、株主への還元を増やすよう強い圧力を受けてきた。株主構成を変更し、資金を事業成長に振り向けたい考えだ。
現在、東芝の株価は4500円程度で、時価総額は2兆円をやや下回っている。21年4月に英投資会社が買収を提案すると、3000円台後半だった株価が一気に跳ね上がり、提案を公募した後には一時6000円に迫った。
東芝は9日、「提案内容を精査した上で、引き続き株主をはじめとしたステークホルダー(利害関係者)の利益の最大化に向けて行動する」とのコメントを発表。景気の先行き不安が広がる中で今回の提案が採用されなければ、さらに株価が下がりかねない。最終決定を下す取締役会は慎重な判断を迫られる。
JIPは同日までに、三井住友銀行、みずほ銀行など5行から融資を確約する証明書を受け取った。融資は、2000億円の融資枠を含めて最大1兆4000億円に上るもよう。オリックスや半導体大手ロームなど国内約20社からの出資金1兆円程度と合わせて買収資金に充てる。
【時事通信社】
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