- 2023/02/22 掲載
長期の金融緩和、市場原理の効果抑制否定できず=田村日銀委員
ただ、足元では賃金と物価の好循環が実現するかどうか注視していくべき局面にあり、現時点では金融緩和を継続することが適当だと強調した。
田村委員が金融経済懇談会であいさつするのは、昨年7月に審議委員に就任して以降、初めて。メガバンク出身の田村委員は、大規模緩和の副作用に多くの時間を割いた。
昨年12月に決定した長期金利の変動幅拡大は、緩和的な金融環境を維持しつつ市場機能の改善を図るためのものであり「金融引き締めを企図したものではない」と強調。「金融緩和の効果が企業金融などを通じてより円滑に波及していく、そうしたメリットが大きいと考えた結果」と説明した。
変動幅拡大後も、イールドカーブ上では10年の部分がくぼんだ状態が継続している。田村委員は、今回の見直しが市場機能に及ぼす影響を評価するにはなお時間を要するとし、「現段階では、市場がどのように落ち着き、市場機能がどれだけ改善するか謙虚かつ丁寧にフォローしていくことが重要だ」との認識を示した。
金融機関収益や金融仲介機能への影響にも触れ、収益悪化は長期にわたる低金利環境も一因だが「地域における人口や企業数の減少により資金需要が限られる中、金融機関どうしの競争が激化したという要因もあった」と指摘。近年では金融機関自身の努力で収益性が回復し、日銀短観で金融機関の貸し出し態度や企業の資金繰りを見ても「金融仲介機能は円滑に発揮されている」と述べた。
<物価、想定以上に上振れる可能性否定できず>
田村委員は物価の先行きについて、輸入物価高による押し上げ効果の後退や政府の経済対策で先行きの上昇率は2%を下回り、「2%物価目標を持続的・安定的に実現できる状況には至っていない」と述べた。
その一方で、物価は当面、上振れリスクの方が大きいと指摘。企業の価格転嫁は現在進行形で物価上昇モメンタムが続いていること、サービス価格も次第に上昇ペースを高めてきていることを踏まえると「想定以上に物価が上振れる可能性も否定できず、引き続き注視していく必要がある」と語った。
賃上げについては楽観的な見通しを示した。賃上げに前向きな政労使のスタンス、全体として好調な企業収益、お互いに支えあう傾向の強い日本の労使関係、対面型サービス業や中小企業における人手不足といった要因を挙げ「高めの賃上げが実現する可能性も相応にある」と述べた。
景気に関しては、消費者物価が上昇する中でも「ペントアップ需要が景気を下支えしているという稀有な環境にある」ものの、当面は下振れリスクの方が大きいと指摘。海外の経済・物価情勢と金融市場動向、ウクライナ情勢の展開やその影響を受ける市況動向、新型コロナウイルス感染症の経済への影響に注意が必要だとした。
(和田崇彦 編集:田中志保)
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