- 2023/03/13 掲載
市場環境悪化、細った投資マネー=預金流出の引き金に―米銀破綻
【ニューヨーク時事】先週末に経営破綻した米中堅銀行シリコンバレーバンク(SVB)は、「新興企業のメインバンク」とも言える存在だった。金融緩和期には預金が膨らんだが、市場環境が悪化し、ベンチャーキャピタル(VC)などからの投資マネーが細ると一転、預金が流出。経営破綻に追い込まれた。取引先が新興企業に偏る「特異な銀行」(米銀アナリスト)との見方が多いが、市場では信用不安拡大への警戒感が強まっている。
米国では新型コロナウイルスの流行に伴う大規模金融緩和を背景に、ベンチャー投資が急増した。全米VC協会などによると、2021年の投資額は3447億ドル(約46兆円)と前年からほぼ倍増。VCが投資する新興企業の半数近くと取引があったSVBには、余剰資金が流れ込み、預金残高はこの3年で3倍近くに膨らんだ。
しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めにかじを切った22年の投資額は、約3割急減。市場環境の悪化で、新規株式公開や企業買収が低迷したため、投資収益の確定が難しくなり、「規模の大きい新興企業向け投資が大きく減った」(調査会社ピッチブック)。
新興企業は、運転資金などを確保するため、預金の取り崩しに走り、「2月ごろから引き出しが拡大した」(米格付け会社アナリスト)。SVBが保有する債券などを売却し、損失を計上することを今月8日に発表すると、信用不安が広がり、預金流出に歯止めがかからなくなった。
一方、暗号資産(仮想通貨)関連業者との積極的な取引で知られるニューヨークの中堅銀行シグネチャー・バンクも12日、経営破綻した。米金融当局は同日、異例の預金全額保護を打ち出し、信用不安の払拭(ふっしょく)に躍起だが、給与支払いや資金繰りに懸念を抱える新興企業の「パニック的な状態」(投資会社幹部)は収まっていない。
【時事通信社】
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