- 2025/05/01 掲載
日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
市場関係者に見方を聞いた。
◎目標達成時期を実質先送り、想定以上にハト派
<野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏>
米トランプ関税問題を受けた今回の利上げ見送り自体は想定内だが、展望リポートの物価見通しは想定以上にハト派。2%物価目標の達成時期について従来通り見通し期間後半としているが、今回から見通し最終年度が2027年度に伸びたため実質先送りだ。
米トランプ関税による円高・原油安進行だけでは説明しきれない物価の下押しを日銀は想定しているようだ。おそらく日本企業の大多数を占める小企業の賃上げにトランプ関税が相当水を差すことで基調的な物価上昇率が下押しされる絵を描いているのだろう。
日銀としては足元の実質金利がマイナスである状態に変化はなく金利正常化を目指す姿勢に変わりはないと思うが、次の利上げ時期については相当慎重になるだろう。
◎車関税25%シナリオの可能性、利上げ当面見送りへ
<SBI証券 チーフ債券ストラテジスト 道家映二氏>
想定以上にハト派な展望リポートの見通しだ。日銀は従来から米トランプ関税で自動車関税が10%なら日本経済は吸収可能だが、25%に維持されるなら景気が腰折れするリスクを懸念していた。今回の見通しは25%シナリオに見える。これまで最速9月の利上げを想定していたが、当面利上げは難しそうだ。
もっとも現時点で景気悪化による金融緩和強化を検討している声は日銀内で非常に少数だと思う。
◎利上げの姿勢は維持、年内1回はあり得る
<東短リサーチ チーフエコノミスト 加藤出氏>
利上げ方向の姿勢は維持した。不確実性が大きいため、どのタイミングでアクションを取るかは状況次第でフリーハンドを残しておくということだろう。
国内の経済情勢からすると利上げを急ぐ必要はないが、遅くとも年内に1回は引き上げるのではないか。まったく利上げをしないと、為替が円安・ドル高方向に進む恐れがある。楽観的なシナリオなら7月の参院選後の利上げも排除しない。日米関税交渉次第だ。
日本の実質の政策金利は低い。2026年以降、少なくとも1%まで利上げをするのではないだろうか。
◎利上げ姿勢は不変、トランプリスクで「ジレンマ」も=
<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>
展望リポートでは、世界経済の不確実性を背景に景気見通しが引き下げられたが、物価のところは踏ん張った印象。2025年度の消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)の見通しは0.2ポイント引き上げられ、今回初めて公表した27年度の物価見通しも2%目標が実現する姿が示された。
日銀は利上げ継続姿勢を変えていないものの、トランプリスクで動けないというジレンマにも直面している。
次の利上げのタイミングについては、参院選後の政治動向も関係してきそうだ。石破茂内閣が交代したり、日銀に利下げを要求する国民民主党が連立与党に参画したりする展開になった場合、政治サイドの要因から利上げを続ける間口が狭まる。
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