- 2026/01/19 掲載
焦点:パウエル氏、慣例破り理事続投か FRB独立性の岐路
[ワシントン 16日 ロイター] - 現在72歳のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、遊んであげる孫たちがいるし、ゴルフの再開やギターの曲習得といった個人的な思いもある。
しかしパウエル氏は選択を迫られている。この先に家族や趣味に捧げるか、それとも世界で最も重要な中央銀行であるFRBの独立性を損なおうとしたり、組織構造を抜本的に変えようとしたりしているトランプ政権に対して、内部から影響を与え、あるいは阻止するために戦うのか、を決めなければならない。
パウエル氏のFRB議長としての任期は5月までで、トランプ大統領は近く後任を指名する見通しだが、FRB理事の任期はあと2年残る。つまりトランプ氏の退任直前まで、金融政策やFRBの組織変更に関して同氏への「批判票」を投じられるのだ。
プライベートエクイティ企業カーライル・グループに長年在籍したパウエル氏は「ディールメーカー」であり、トランプ氏と同様に簡単に自分の手の内を明かす理由はない。
2025年12月の会見で今後の予定を質問されると「私は議長として残された任期に集中している。それに関して新しく話せることはない」と語り、いつ聞かれても答えは同じだ。
ただ先週11日、パウエル氏がFRB本部改修に関する自身の議会証言を巡って司法当局による捜査対象になり、召喚状が届いたと明かし、FRBが重大局面を迎えていることがはっきりした。パウエル氏は動画を通じてこの動きを金融政策に圧力をかけるための「口実」と非難。トランプ氏からの容赦ない圧力に真正面から応じることについての慎重姿勢を転換した。
パウエル氏は基本的に民主、共和どちらの政党からもFRBの高官に任命され、支持されてきた超党派的な人物と言える。その同氏が、FRBの独立性が危機にあると感じ、自分がとどまることでそれを守れると信じているなら、FRB理事として続投する選択は不可避と映るかもしれない。
クリーブランド地区連銀総裁を務めたペンシルベニア大学ウォートン校のロレッタ・メスター客員教授は「召喚状とともに全てがエスカレートしている。これにより、過去8カ月で顕在化した問題がさらに浮き彫りになった。私はFRBの政策決定は経済や金融市場の動向に基づいていると信じている。だがたとえFRBが圧力に耐え続けられたとしても、大統領の発言にFRBの政策決定が左右される疑念が生じるという事実自体が『コスト』だ」と指摘した。
<長年の慣例破るか>
パウエル氏が議長退任後、理事としてFRBに残ると決断すれば、それは長年の慣例を覆すことになる。通常は民主的な移行の精神を尊重する形で、退任する議長は新議長のために理事も辞任してきたからだ。
直近で議長退任後も理事を続けたのは1948年のマリナー・エクラズ氏で、理事として3年余り続投した。同氏の名を冠した建物は、パウエル氏への司法省による捜査の原因といったFRB本部改修対象に含まれているという皮肉な構図がある。
FRB理事の任期は14年で、政治的な影響を制限するため大統領が一度に多くの理事を任命できない仕組みになっている。ただ途中辞任もあるため、実際には空席が長期間続くケースも少なくない。
こうした中で最近の一連の動きを背景に、トランプ政権がFRBの完全支配を狙ってどこまで踏み込むのか、あるいは政策担当者にどのような圧力を加えるかという懸念が高まっている。
一方現在のFRB理事はそうでなくてもトランプ氏に任命されたグループとバイデン前大統領に任命されたグループに分断されている。
ポトマック・リバー・キャピタル最高投資責任者でFRBの政治史に関する著書があるマーク・スピンドル氏は、その上に「理事の過半数が交代すれば、さまざまな改革や組織再編が待ち受ける。単に金利が下がるだけはない」と述べた。
<決断へ残された時間>
パウエル氏にとってFRB理事として残る決断は負担が大きくリスクを伴うとはいえ、これまでの同氏とトランプ氏の関係、また現在のFRBとトランプ氏の関係はほとんど正常とは言いがたい。2018年にパウエル氏がトランプ氏の指名で議長に就任してから数週間後、早くも異例なほど厳しい公然とした批判が常態化。最近ではより激しい脅迫や、クック理事解任の動き、そしてトランプ氏が前例を無視する明確な意思表示をするなど事態はより緊迫化している。
もっともトランプ氏は14日のインタビューで、パウエル氏を解任する計画はないと発言した。議会上院では、パウエル氏への捜査に反発が強まり、ベセント財務長官も怒りを表明していると伝えられたことからトランプ氏は「われわれはパウエル氏について少し様子見の状態にあり、どうするかを決めるつもりだ」とややトーンダウンした。
連邦準備法では、FRB理事会メンバーは「正当な事由」がある場合のみ解任できると規定され、トランプ氏以前の大統領は誰も解任を試みなかったので、この基準が司法の場で定義付けされたことはなかった。
クック理事解任の是非を巡ってそうした定義が明らかになるかもしれないが、「正当な事由」は金融政策に関する論争ではなく、何らかの不正行為や権限乱用を意味するというのが一般的な解釈となっている。
そもそも各国で広く支持されているのは、政治家の短期的な利益と経済サイクルの長期性を考えると、金利に対する政治的統制はインフレの暴走につながるという原則だ。
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