- 2020/09/23 掲載
物価目標実現へ、極めて緩和的な金融環境の維持必要=黒田日銀総裁
米連邦準備理事会(FRB)が打ち出した平均インフレ目標については「日銀のこれまでの政策運営の考え方と軌を一(いつ)にしたものだ」と語った。消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の物価目標を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する日銀の「オーバーシュート型コミットメント」を紹介し、「日銀はこうした枠組みの下で、物価上昇率が、景気の変動などを均してみて平均的に2%になることを目指している」と説明した。
一連のコロナ対応については総裁は「効果を発揮している」と指摘。金融市場は依然、神経質な状況にあるが、ひと頃の緊張は緩和しているとの見方を示したほか、企業の資金繰りにはなおストレスがかかっているものの外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されているとした。
黒田総裁は「外部資金の調達環境が緩和的な状態にあることは、金融面から実体経済への下押し圧力が強まったリーマン・ショック時との大きな違いだ」と述べた。その上で「経済主体の課題が、流動性から支払い能力の問題にシフトしていく中で金融システムに影響を及ぼす可能性もある。先行きの動向をよくみていきたい」と話した。
日銀による積極的な国債買い入れについては「金融政策運営上の必要に基づいて実施している」と改めて強調した。
<企業の成長期待、大きく低下せず>
足元の景気状況については「引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が徐々に再開する下で持ち直しつつある」と指摘。先行きは不確実性が極めて大きいものの「標準的なシナリオとしては、感染症の影響が和らいでいくもとで改善基調をたどる」との見通しを示した。
ただし、企業や家計の自主的な感染防止の取り組みが経済活動を抑制するため、改善のペースは緩やかなものにとどまるとした。
消費者物価の前年比は当面、「GoToトラベル事業」による宿泊料の割引の影響などでマイナスで推移すると予想されるものの、「現時点では、値下げにより需要喚起を図る価格設定行動が広がっているようにはうかがわれない」と指摘した。
経済・物価の先行きについては、下振れリスクの方が大きいと指摘。企業は必要な成長投資の多くを継続するスタンスにあり、情報通信技術の活用など前向きな変化もみられるため「成長期待が大きく低下しているとは考えていない」とする一方、今後の動向は注視したいと述べた。
(和田崇彦 編集:田中志保)
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