- 2021/03/01 掲載
廃炉事業に熱視線=地元企業の参入なるか―福島
東京電力福島第1原発事故で大打撃を受けた地域経済の再興に向け、総費用8兆円とも試算される原発の廃炉事業が注目を集めている。これまでは、高い技術を持つ重電メーカーやゼネコン大手が放射能汚染された現場での作業を主に担ってきた。事故から10年。活躍の機会が限定的だった福島県内の地元企業も参入に意欲を示しており、支援体制の整備も進んでいる。
県や東京電力ホールディングス(HD)などは2020年7月、廃炉事業に関心のある地元企業と元請け側をつなぐ「マッチングサポート事務局」を開設した。商談の調整から廃炉の現状を伝える研修会まで、幅広い支援を提供。半年で県内100社以上が商談に必要な情報を登録しており、注目度の高さがうかがえる。
全住民が今も避難を続ける双葉町の商工会は、「大手企業が中心で参入の余地がなかったので、地元にとっては大変ありがたい」と評価する。今も県内には除染や家屋解体といった仕事があるものの、「遠くないうちに作業は終わるので、多くの企業が危機感を感じている」という。
20年10月の商談会に参加したいわき市の金属加工メーカーは、「安定して仕事がある廃炉は魅力的だ」と語る。新型コロナウイルスの影響で取引先のプラントが設備投資を控えており、金額などの条件が合えば作業を請け負いたい考えだ。
東電HDが「成功事例」として挙げるのは、プラント建設会社のエイブル(広野町)。20年4月、既存のロボットを活用した遠隔操作システムを作り上げ、約120メートルの排気筒の切断作業を成し遂げた。大手でも難しいと言われた前例のない作業。岡井勇取締役は「意思決定がスピーディーで低コストなのが中小企業の強み」と力を込める。
ただ、こうした例はまだ一部にとどまるのも事実。危険物の取り扱いといった技術面に不安を抱える地元企業は多く、元請け側のノウハウ伝授に期待がかかる。日立GEニュークリア・エナジー(茨城県日立市)は「福島復興には県内企業の力が必要で、積極的に協業を検討していく」としている。
【時事通信社】 〔写真説明〕東京電力福島第1原発1、2号機の排気筒の解体作業のためクレーンで持ち上げた装置=2019年8月、福島県大熊町 〔写真説明〕東京電力福島第1原発事故の廃炉作業で使った機械を紹介するプラント建設会社エイブルの岡井勇さん=2月1日、福島県広野町
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