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- 2025/09/09 掲載
“マーケの神様”大失敗? 地べた座り、131組待ち……ジャングリア「高額」課金の実態
連載:テーマパーク経済学
1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。テーマパークやチェーンストア、都市についての原稿を主に執筆。著書に『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)がある。
「課金ありき」は悪じゃない
大前提として、「課金ありき」自体を批判するのはお門違いである。というのも、ジャングリアは徹底して「体験価値」を売りにしたテーマパークだからだ。パークのコンセプトを見れば、高単価・少人数制で濃密な時間を提供する「厚利少売」型のモデルであることがわかる。
それぞれのアトラクションは滞在時間が長く、没入感重視の体験設計だ。
たとえば、ライド型アトラクション「ダイナソーサファリ」では、乗り物に乗る前から何人ものキャストが演劇さながらのショーを展開し、途中でゲストが乗り物から降りて、キャストによる芝居を見る場面まで組み込まれている(キャストがティラノサウルスに食べられる、アレだ)。アスレチック系のアトラクションも、1人ひとりがじっくり時間をかけて挑む構成だ。
これまでのテーマパークはその逆である。
東京ディズニーリゾートやUSJを考えればわかるように、大規模な機械仕掛けのアトラクションがあり、そこに大量のゲストが次々と同じ体験をしていくのが基本だった。
ジャングリアの運営を担うのは、“マーケティングの神様”として知られる森岡 毅氏が率いる刀だ。同社は、お台場で話題を呼んでいるテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」も手がけており、そこで展開されるのは「イマーシブ・シアター」と呼ばれる、アトラクションと演劇の中間のようなライブ・エンターテイメントである。
イマーシブ・フォート東京では、ゲストは“観客”ではなく“参加者”としてアトラクションに没入する。キャストが繰り広げる演劇に観客が巻き込まれる仕掛けで、時には30人のゲストに対し、15人ものキャストが登場することもある。従来のテーマパークとは一線を画す、圧倒的な没入体験だ。
その意味では、イマーシブ・フォート東京で培ってきたアトラクションのノウハウをジャングリアにも持ち込んでいるといえる。
ゲスト1人あたりの体験が濃厚になれば、それに見合う料金設定になるのは仕方のないこと。「課金ありき」はパークの1つの選択肢であり、非難されるべきことではない。
ちなみに、東京ディズニーリゾートもUSJも近年チケット単価を引き上げて「高付加価値型」への転換をはかっている。国内のテーマパーク産業の流れから見ても、この戦略は時代に即した選択肢なのである。 【次ページ】じゃあ、課金組は「本当に満足」しているのか?
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