- 2021/03/03 掲載
日銀とスイス中銀の株価がともに急騰、市場の熱狂反映か
議決権がない出資証券である日銀株は一時21%、SNB株は4.6%まで上昇。基礎的条件の裏付けはほぼなく、個人投資家が買いに走った可能性がある。
日本とスイスの共通点は、キャリートレードにおいて資金の調達に最もよく使われている通貨(円とスイスフラン)を持つこと。日銀株とSNB株はまた、特異な所有構造と浮動株の少なさによって株価が振れやすくなっている。
株主の権利も厳しく制限されており、理論的には投資妙味に欠く。
東海東京調査センターのシニアストラテジスト、中村 貴司氏は日銀株の上昇について、過剰流動性が市場の原動力になっていることを象徴する動きだと指摘。株式市場の至る所でバブルの兆候が見えつつあるとした。
日銀株は過去3営業日で46%急騰し、2018年10月以来の高値である4万円を付けた。政府が日銀株の半分以上を保有する。
ベテランの投資家にとっては、日銀株が1980年代後半のバブル絶頂期に投機取引の対象となり、4年間で40倍に跳ね上がったのを想起させる動きだ。
一方、SNB株は中銀が2020年に209億フラン(228億米ドル)の純利益を計上したと発表したのに続き2日連続で上昇し、計10%超値上がりした。
スイス証取があるチューリヒのトレーダーらは個人投資家が買いに走っている可能性が高いが売買高は低調なままだと指摘した。
SNBは株価の動きについてコメントを控えた。
<大規模な保有資産>
SNB株が最後に大きく値上がりしたのは2018年4月で、1年弱で2000フランを下回る水準から過去最高値の9760フランまで急騰。ドイツの複数のブログでSNB株が超安全な永久債のようだと書かれたのが発端だった。
SNB株は大半を州政府と地方銀行が保有しており、議決権は制限されている。配当も株式資本の6%に制限されているため、専門家は株価上昇の根拠にはならないと指摘。
UBSのエコノミスト、アレッサンドロ・ビー氏は「配当方針が変わる見通しはなく、ファンダメンタルズ(基礎的条件)は同じままだ」と述べた。
円とフランが対米ドルで年初から下落しているのは両中銀の保有するドル建て資産の価値を高めるため、好ましい動きだ。どちらも保有資産が大きいことで知られており、SNBの海外資産への投資額は9140億フランと、スイス経済をもしのぐ規模だ。
SNBはアップルなどの米ハイテク株や米電気自動車のテスラに多額の投資を行っており、日銀は日本株の上場投資信託(ETF)を大量に保有し、含み益が発生している。
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