- 2021/09/30 掲載
東北大・岩手医科大・AMED、ゲノム・オミックス解析情報公開データベースjMorpを拡充
〇 公開データベースjMorpの収載データを大幅に拡充しました。
〇 約6.4万人分のジェノタイプ(*1)データとアンケート調査や生理機能検査を合わせた146件の健康調査項目のゲノムワイド関連解析(GWAS(*2))を実施し、サマリーデータ(要約統計量(*3))を「ショーケース GWAS」として公開しました。
〇 薬剤感受性に関連する382種類の、アミノ酸置換(*4)を伴う遺伝子多型のある酵素に対して、酵素活性変化を解析した結果を公開しました。
〇 約2万人分のメタボローム解析(*5)情報を追加して総計4.6万人に、経時解析情報を約1.2千人追加して総計2.9千人に拡充しました。
【概要】
公開データベース日本人多層オミックス参照パネル(jMorp:Japanese Multi Omics Reference Panel)の収載データに、新たにショーケース GWASや薬剤感受性情報を搭載し、メタボローム解析情報を大幅に拡充しました。
ショーケース GWASは、GWASを多数の表現型で網羅的に実施し、ショーケースのように一覧にしたものです。本格的なゲノム医学研究に取り組む研究者のための有用な入口となると同時に、多施設での大規模メタ解析の実施が期待されます。さらに、382種類のアミノ酸置換を伴う遺伝子多型に対して実際に組み換えタンパク質を作製し、薬剤感受性の個人差の指標となる酵素反応速度論的パラメータ(*6)を解析した結果を公開しました。個人ごとに大きく異なる薬剤感受性の遺伝的要因に関わる重要な手がかりが含まれた情報であると考えられます。メタボローム解析情報は、約2万人分を追加し、世界最大規模の総計4.6万人となりました。経時解析情報も総計2.9千人に拡充し、加齢変化等の詳細な研究の加速が期待されます。
*1 ジェノタイプ : 遺伝子型。ゲノムの変異・多型の部分における塩基配列の変化(アレル)の組み合わせのこと。
*2 GWAS : ゲノムワイド関連解析(Genome-wide association study)。一塩基多型(SNP)を主とした、ヒトゲノムの全体をほぼカバーする数百万から数千万の変異情報について、形質と合わせて統計学的な処理を行うことで、遺伝子と形質の関連性を調べる遺伝解析手法。多因子疾患の遺伝的要因を検討する有効な手段である。
*3 要約統計量 : GWASによる解析結果として得られる一連の情報。一般的には、各ゲノム多型が測定値やリスクにもたらす効果の大きさとその標準偏差を指すが、統計学的有意性を示すP値、多型の名称やID、染色体上の位置情報などを含める場合もある。個人ごとのゲノムデータなどと異なり、プライバシーの問題が生じないため、複数の研究機関でGWASの結果を共有・統合する際の基本的な情報として利用される。
*4 アミノ酸置換 : 遺伝子の変異・多型によってアミノ酸配列の一部が、異なるアミノ酸に置換されていること。
*5 メタボローム解析 : 生体内に含まれる代謝物(メタボライト)を網羅的に解析する方法。
*6 酵素反応速度論的パラメータ : 酵素タンパク質の代謝能力の程度を表す指標。
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