- 2021/11/04 掲載
アングル:米FRBが量的緩和縮小開始へ、リスク警戒強める一部投資家
FRBは3日、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始すると発表した。2022年半ばにも資産購入の終了を見込む。ただインフレ高進は「一過性」のものとの従来の認識を堅持した。このため投資家からは「ハト派なテーパリング」との声もでている。 ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ロン・エリクソン氏は、高インフレが続けば、投資家は少しずつ神経質になり、22年前半にもリスク・エクスポージャー圧縮の動きが出てくる可能性があるとみる。エリクソン氏は、インフレ進行によるボラティリティの高まりを乗り切るため、債券ではデュレーション(残存期間)の短い銘柄を選好している。 新型コロナウイルスのパンデミックに対応した量的緩和政策を追い風に、米株式市場は大幅に上昇し最高値を何度も更新している。しかし高バリュエーションや、株式などリスク資産偏重の傾向に懸念も生じている。
FSインベストメンツのチーフマーケットストラテジスト、トロイ・ゲイスキ氏は、「これほどのカネ余りで経済は好調、インフレ圧力も高い時に、危機を想定した金融政策を実行するのは危険なゲームだ」と指摘。投資家に対し、インフレに耐性がある商品を探し、インフレで価値が下がる長期国債のような商品への投資は避けるようアドバイスしており「これは本当に厳しい2022年に向けた準備とも言える」と述べた。
インデペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)のクリス・ザッカレリ最高投資責任者(CIO)は、今後12カ月のインフレと金利に関する不確実性を考えると株式エクスポージャーを維持することが依然賢明と考えていると指摘。その上で、ポートフォリオで強固なバランスシートと価格決定力を持つ企業のウエートを大きくし、より投機的な性質を持つ企業のウエートを下げているとした。
コーナーストーン・ウェルスのクリフ・ホッジCIOは「ハト派なテーパリング」環境下で、ボラティリティーがより低く質はより高い資産に注目している。
バークレイズのグローバルエクイティ部門の共同責任者,トッド・サンド氏は、株式市場にとって重要なのは、名目金利の上昇に対して収益の伸びがどのようにバランスするかだと指摘。「株式が本当にアンダーパフォームになるのは、インフレ期待と名目金利の上昇が、収益の伸びを劇的に上回る場合だ。それが株式にとって非常に悪いシナリオ」という。 11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までの数週間、インフレ進行でFRBが予想よりも早く大幅な利上げを迫られるという見方が強まり、米国債は短期債利回りが大幅に上昇するなど、不安定化した。
しかし投資家の間では、「テーパータントラム」が起きた2013年に比べて、今回は十分予告があったテーパリングだと評価する。
フェデラル・ファンド(FF)金利先物は3日、ほとんど動かず、来年2回の利上げを引き続き織り込んでいる。
投資家の中には、投資環境は良好だと考える人もいる。
高バリュエーションに不安は残るが株式保有に問題はないと考えているクレセット・ウェルス・アドバイザーズのジャック・アブリンCIOは、今回のFOMCの発表とパウエル議長の発言は心強いとし「経済はFRBの引き締めに耐えられるほど強いと考えている」と語った。
(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者、Saqib Iqbal Ahmed記者)
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