- 2022/03/15 掲載
アングル:中国企業、米上場への逆風強まる SECが締め付け
SECは先週、監査状況の検査の受け入れを拒否しているとして、上場廃止の可能性がある中国企業5社を公表。リストには中国でケンタッキー・フライド・チキンを展開する百勝中国(ヤム・チャイナ・ホールディングス)も含まれていた。
米中の規制当局は以前から企業監査を巡り対立してきたが、SECによるリスト公表をきっかけに投資家の間で恐怖心が蘇り、中国企業の米国預託証券(ADR)が大きく売り込まれた。
ゴールドマン・サックスの推計によると、米機関投資家が現在保有している中国のADRに対するエクスポージャーは約2000億ドル。
米政府は国内で上場している中国企業の監査記録に対する完全なアクセスを求めているが、中国政府は地元会計事務所による監査文書を米当局が検査するのを拒否している。
ニューヨークの大手ヘッジファンドのポートフォリオマネージャーは、「セクター全体が投資不可能になりつつある。お手上げの状況で、当面は米上場の中国企業から手を引くつもりだ」と語った。
このヘッジファンドは2019年後半から中国企業のADRの売却に着手しており、今後数週間以内に残りの保有分を売却する予定だという。
中国企業のADRの値動きを示す米ナスダックのゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数は10日からの2日間で10%余り下落。年初からの下落率は34%に達している。昨年は43%の下落だった。
米上場中国企業へのエクスポージャーが小さい市場関係者は、中国投資を続けるために他の選択肢を模索している。
香港に拠点を置き10億ドル以上を運用するヘッジファンド、ストラテジック・ビジョン・インベストメントの最高投資責任者、ケン・シュー氏は「ADRへのロングのエクスポージャーを最小限に抑えており、全体ではADRを売り越している」と述べた。
シュー氏は、ADRに対する逆風はさらに強まると見ており、代わりに中国本土上場株を買い持ちにしている。景気てこ入れ策の支えを受ける一部の業界は成長の可能性が非常に高いと考えているためだ。
米上場中国企業に対する懸念の再燃は、地政学的リスクが高まって中国の成長見通しに陰りが差し、リスク資産に対する投資意欲が減退している時期に重なった。
中国に特化した資産運用会社クレーン・ファンズ・アドバイザーズは同社のクレーンシェア・CSI・チャイナ・インターネット・ETF(49億ドル)について、今後数カ月内にポートフォリオに組み込まれている中国企業のADRをすべて香港株に転換することを目指すと発表した。
しかしクレーンは11日に、米中の規制当局は監査問題について妥協することが「まだ達成可能」との見通しを示した。
中国の証券規制当局も11日、監査を巡る問題を解決するための米国との合意を確信していると表明し、自信を示した。
銀行関係者によると、規制を巡る不透明さにより中国企業のニューヨークでの新規上場がさらに妨げられる恐れがある。監査要件に加え、オフショア上場に関する中国の新規則がはっきりしないため、資金調達の見通しは不透明だという。
シャルダンの特別目的買収会社(SPAC)投資銀行部門のマネジングディレクター、インジェ・ウェン氏は、今後の中国企業の米上場は依然として見通しが立たないと指摘した。外資規制を回避するために広く使われている複雑なオフショア持ち株構造を採用する企業がSECの承認を得られる可能性は低いという。
(Xie Yu記者、Selena Li記者)
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