- 2022/04/13 掲載
東北大、ハードウェアに挿入された不正な機能を高速かつ漏れなく検知する技術を開発
● 半導体集積回路(IC)チップの設計データに挿入された不正な機能(ハードウェアトロイ)を高速かつ漏れなく検知する新技術を開発.
● 数学的な等価性判定の技法を駆使することで,これまで困難だった大規模で複雑なIC設計データにも適用可能.
● 特にセキュリティ向けハードウェア・システム製品の信頼性・安全性向上に貢献.
【概要】
近年,インターネットに接続する身近な機器が設計・製造段階で改ざんされ,システム使用開始後に不正な振る舞いを起こす「ハードウェアトロイ Hardware Trojan: HT)」の脅威が指摘されています.東北大学電気通信研究所は,半導体集積回路(IC)チップの設計データに含まれるHTを高速かつ漏れなく検知する新技術を開発しました.今回開発した技術では,設計仕様と設計データの等価性をグレブナー基底と呼ばれる数学的な表現を用いて検証することで,機能改変を伴うあらゆるHTの検知が可能です.また,これまで難しかった大規模で複雑な回路データにも適用できます.さらには,秘密情報保護やプライバシー保護で必要な暗号回路等のセキュリティ向けICのHT検知に効果を発揮することも実証しました.今回開発した技術は,ICチップおよびそれを搭載した製品の信頼性・安全性向上に大きく貢献することが期待されます.
この成果は,米国電気電子学会(IEEE)の主要国際学術誌IEEE Transactions on Computer-Aided Design of Integrated Circuits and Systemsの2022年3月号に掲載されました.
【開発の社会的背景】
モノのインターネット (Internet of Things: IoT) に代表される様々なデバイスがインターネットを介して接続される社会の到来に伴って,ネットワークに接続する身近な機器が設計・製造段階で改ざんされ,システム運用開始後に不正な振る舞いを起こす「ハードウェアトロイ (Hardware Trojan: HT)」が挿入される危険性が指摘されています.例えば,暗号回路等のセキュリティ向け回路に HT が挿入されると機密情報の漏洩に繋がる恐れがあります.また,人工知能の IC チップに HT が挿入されると,それを利用するシステムにおいては大変な脅威となります.一方,今日の半導体集積回路(Integrated Circuit: IC)チップおよびそれを搭載したハードウェア・システムの開発では,IC設計支援ツールを提供するツールベンダや,様々なIP (Intellectual Property)コア*を提供するIPベンダ,設計された回路の配置配線情報に合わせて製造を行うファウンドリ,ICと電子部品をプリント基板上に実装する電子システム実装メーカーなど様々な企業が国を越えて関わることが一般的です.以上の背景から,こうした設計・製造プロセスにおいて,秘密裏に HT が IC 内部に挿入されていないことをいかに保証するかが世界的な課題となっています.
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