- 2022/04/13 掲載
富士フイルムなど、AI技術を用いて軽度認知障害患者のアルツハイマー病への進行を予測
今後、富士フイルムと国立精神・神経医療研究センターは、AD治療薬の臨床試験の患者選定にAD進行予測AI技術を適用することを目指して、本技術の有用性の更なる検証を進めていきます。
尚、今回の研究成果は、4月12日、国際学術誌「Nature」の関連誌「npj Digital Medicine」に掲載(※3)されました。
■研究成果のポイント
・ 富士フイルムは、写真・医療分野で培った高度な画像認識技術を応用して、学習データが少ない中でも、MCIからADへの進行をAIで高精度に予測する技術(AD進行予測AI技術)を確立。AD進行予測AI技術は、MRI画像や認知能力スコアなど複数の臨床情報をもとに予測する技術。
・ 富士フイルムと、国立精神・神経医療研究センターの研究グループ(※4)は、異なる人種の2つの患者集団(北米人・日本人)のデータベースにAD進行予測AI技術をそれぞれ適用したところ、2年以内にMCI患者がADへ進行するかどうかを84-88%の精度で予測することを確認。AD進行予測AI技術が汎用性の高い技術であることを実証した。
■研究の背景と経緯
認知症の患者は、現在、世界中に約5,500万人いると推定されています。さらに、人口の高齢化に伴って、2050年には約1億3,900万人に増加すると予測されています。認知症の一種であるADの患者は、認知症の中で最も多く、今後もこの傾向は続くと予想されています。
近年、ADの新薬開発では、ADの主要な原因物質であるアミロイドβが発症前から蓄積し始めることから、より早期のMCI患者をターゲットに臨床試験が実施されてきましたが、ほとんどの試験で成功に至っていません。これは、2年以内にMCIからADに進行する患者の割合が2割未満(※5)と少なく、臨床試験期間中に進行しないMCI患者が多く存在することで、対照群(偽薬など)に割り付けた同患者でも進行抑制と判断され、統計的有意差を証明できないことが一因です。このような中、富士フイルムと、国立精神・神経医療研究センターの研究グループは、MCIからADに進行する患者をAIで予測し、その患者のみを対象にした臨床試験とすることで、新薬の有効性を正しく評価でき、治験の成功に繋がると考えました。
※1 AIの精度指標の1つである正解率。正解率は、予測結果がどれくらい真の値と一致しているかを表した数値。
※2 本技術は、ADその他疾病の診断・治療・予防を行うものではありません。
※3 掲載論文
論文名:A high generalizability machine learning framework for predicting the progression of Alzheimer’s disease using limited data
著者名:Caihua Wang, Yuanzhong Li, Yukihiro Tsuboshita, Takuya Sakurai, Tsubasa Goto, Hiroyuki Yamaguchi, Yuichi Yamashita, Atsushi Sekiguchi, Hisateru Tachimori and for Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative
掲載誌:npj Digital Medicine(国際学術誌「Nature」の関連誌)
URL:https://www.nature.com/articles/s41746-022-00577-x
doi:10.1038/s41746-022-00577-x
※4 神経研究所疾病研究第七部 山口博行、山下祐一、精神保健研究所行動医学研究部 関口敦、トランスレーショナル・メディカルセンター(現・病院 臨床研究・教育研修部門 情報管理・解析部)立森久照
※5 Practice Guideline Update Summary: Mild Cognitive Impairment.(Petersen, R. C., et al. Neurology 16, 126-135 (2018))
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