- 2022/04/15 掲載
アングル:スリランカ債務再編、ドル建て債保有者は大損が不可避
正式な債務再編交渉はまだ始まっていない。ただアナリストは、どのような形の利払い減免やヘアカット(元本削減)が実施され、それが債権者にどう影響するか、既に計算を進めている。
深刻な経済危機に陥っているスリランカ国内は電力から医薬品まで何もかもが不足し、政府に対する抗議デモが全国規模で発生。こうした事態を受け、一部対外債務の支払いを停止し、手元に残る外貨準備を食料と燃料の購入に優先的に充当すると表明した。
市場が債務再編の一環として国際通貨基金(IMF)による融資が行われる展開を織り込んでいる中で、7月25日償還のドル建て債10億ドルの価格は額面1ドル当たり0.45ドル前後で推移していることが、リフィニティブのデータで分かる。
シティは、今年と来年に満期を迎えるスリランカのドル建て債について、政府が利払い額の約50%、額面価格の少なくとも20%をそれぞれカットした上で、償還を10─13年繰り延べさせてほしいと要望するのではないかとみている。
同社ストラテジストのドナト・グアリノ氏は「出口利回りを11%と想定すれば、そうしたシナリオの下でのドル建て債の回収率は40%台前半から半ばになる可能性があると見積もっている」と述べた。出口利回りは、再編後の債券の予想取引利回りを意味する。
またグアリノ氏によると、償還に近づくほど表面利率が上昇する「ステップアップ・クーポン」が採用されれば、政府にとっては再編後の回収率を高めるまでの時間的余裕を確保できる。このやり方は、エクアドルとアルゼンチンの債務再編でも利用されたという。
テリマーのアナリストチームは、ドル建て債のヘアカット率30%を基本シナリオに設定し、出口利回り8%、回収率60%弱と見込んだ。もっとも出口利回り16%、回収率42%という別のシナリオもあると警告している。
<交渉難航懸念も>
テリマーのシニアアナリスト、パトリック・クラン氏が最悪のシナリオとして挙げたのは、ヘアカット率50%、出口利回り16%で回収率が30%に落ち込む展開。債務再編は期待されているほど迅速に行われない可能性もあると強調した。
格付け会社S&Pグローバルも、交渉が難航して妥結までに「何カ月も」かかる恐れがあるとの見方を示した。S&Pは13日、スリランカの外貨建て債格付けを「CCC」から、デフォルト(債務不履行)認定水準まであと2段階に迫る「CC」に引き下げ、フィッチも「CC」から「C」に格下げしている。
JPモルガンのアナリストチームは、スリランカが債務支払いを一時猶予されたことはIMFの融資プログラムへの道を開くだろうが、債務再編はこれまでに発表された形よりも「包括的」になるのではないかと懸念を表明した。
シティの計算では、今のところ支払い停止対象は公的債務の約55%にとどまっている。しかしIMFが直近で公表した報告書は、厳しい改革措置を今後要求することを示唆しているという。
スリランカの外貨建て債の最大口保有者には、ブラックロックやアッシュモアといった世界的な資産運用会社が含まれている。彼らは発足間もない債権者グループの一員で、ホワイト・アンド・ケースが同グループの法務アドバイザーを務めている。
ある債権者は、スリランカ政府が金融アドバイザーを起用するまで、債権者側は様子見の姿勢だと説明。「今のところ債権者グループの考え方は受け身で、積極的に動く態勢にはない」と語った。
(Jorgelina do Rosario記者、Karin Strohecker記者)
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