- 2022/06/19 掲載
「スタグフレーション」現実味=主要中銀、一転利上げ―価格高騰の収束見えず
【ワシントン、ニューヨーク時事】ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で世界的にインフレが広がる中、主要国がこれまでの金融緩和を転換し、利上げを急いでいる。積極的な引き締めで景気減速が見込まれる一方、エネルギーや食料価格の高騰は収まる兆しが見えない。インフレと成長の停滞が同時に起きる「スタグフレーション」が現実味を増している。
「スタグフレーションのリスクは大きい」。世界銀行のマルパス総裁は7日、世界経済の先行きに対する警戒感をあらわにした。世銀は最新見通しで、インフレ高進と金融引き締めの加速を予測。2022年の世界全体の成長率を従来の4.1%から2.9%へと大きく下方修正した。
世界経済に大きな影響を与える米国では、中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が15日、通常の3倍となる0.75%の大幅利上げを約27年半ぶりに決定。約40年ぶりの高インフレ抑制へ、大幅な利上げを続ける姿勢を鮮明にした。
マイナス金利を導入していた欧州の主要中銀も政策転換に乗り出した。スイス国立銀行(中銀)は16日、約15年ぶりに利上げを決断。欧州中央銀行(ECB)は7月に11年ぶりの利上げに踏み切る方針だ。大規模緩和を続ける日銀は取り残された格好で、米欧との金利差が広がることにより、一段の円安圧力が強まりそうだ。
一方、ウクライナ危機を背景としたエネルギーや食料価格の高騰、新型コロナウイルス危機からの景気回復で膨らんだ需要に供給が追い付かない問題などは、金融政策では解決できない。インフレ抑制に「どれほど利上げが必要なのか不透明だ」(FRB高官)と、当局者からも過度な引き締めによる景気悪化を懸念する声が上がる。
スタグフレーションに対する不安が高まり、株価も大きく崩れている。米株価の代表的指標であるダウ工業株30種平均は過去2週間で約3000ドルも下落し、16日には約1年5カ月ぶりに節目の3万ドルを下回った。日経平均株価も17日、約1カ月ぶりに2万6000円を割り込んだ。
米銀エコノミストは「利上げによる企業収益や景気の悪化が十分に織り込まれておらず、株安はしばらく続く可能性がある」と指摘。波乱含みの相場展開を警戒している。
【時事通信社】 〔写真説明〕世界銀行のマルパス総裁=4月14日、ブカレスト(EPA時事)
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