- 2022/06/20 掲載
情報BOX:米景気後退、交錯する判定基準が懸念に拍車
判定の基準や金融市場との関連など、景気後退を巡る主な議論をまとめた。
<景気後退の定義>
経済が2四半期連続で縮小することと定義されることが多いが、この文言が当てはまらないケースも多い。
例えば、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う景気後退局面は2カ月にとどまり、景気後退期間としては過去最短だった。
<判定機関>
米国では民間の非営利研究機関である全米経済研究所(NBER)が招集するエコノミストの委員会が正式な判定を下すが、ときには1年以上もたってから判断が示される。
NBERは景気後退を「経済全体に波及し、数カ月以上続く経済活動の著しい低下」と定義している。
NBERによると、景気落ち込みの「深さ」、「広がり」、「期間」の3つの基準がいずれも「ある程度満たされる必要はあるが、ある1つの基準で景気落ち込み状況の度合いが非常に強いことが明白な場合、他の基準が弱い兆候を示しても、強い度合いを示した基準によって部分的に相殺され得る」という。
<他の判断手法>
景気後退を判断する手法は他にもある。例えば、元FRBエコノミストのクローディア・サーム氏にちなむ「サーム・ルール」は雇用状況に基づいている。
サーム氏は正式な判断よりも早く景気後退入りを見極めるためにこの手法を発案。失業率の3カ月移動平均が直近12カ月の最低から0.5%ポイント上昇すると景気後退に陥ったと判断する。
<浅いリセッション>
景気後退にはさまざまなパターンがある。例えば、期間は2カ月だったが2200万人が職を失い、失業率が一時的に14.7%に高まった「パンデミック不況」のように、深度は大きいが期間は短いという場合もある。
また、2008年の金融危機後の「グレートリセッション」(大後退)や1929年以降の「世界大恐慌」のように、労働市場が回復するまで10年以上かかるような深い傷跡を残すこともある。
経済学者やアナリストは最近、米国が短期間だけ経済が縮小する「浅い景気後退」に向かっている可能性を指摘している。
<グロースリセッション>
一部のエコノミストやアナリストの間で議論されている別の見方は、米国の経済成長が長期的トレンドの年率1.5―2%ポイントを下回りはするが、縮小はせず、失業率が上昇するという「グロースリセッション」になるという考え方。
これは一部のFRB政策担当者が14―15日の連邦公開市場委員会(FOMC)の経済見通しで描いているシナリオだ。
<逆イールドと景気後退>
金融市場で短期金利が長期金利を上回る状況は逆イールドと呼ばれ、景気後退の前兆とみなされる。
歴史的に見ると、最近では景気後退前に必ずイールドカーブ(利回り曲線)の一部で反転が起きている。13日にもこうした状況が発生したことで警戒感が強まった。
FRBの調査によると、イールドカーブの指標として最も注目度の高い、米国の2年債と10年債の利回り差は、実際には予測の精度が低い。3カ月物財務省証券(Tビル)と18カ月後の3カ月物Tビルのインプライド金利との利回り差の方が予測の精度は高く、こちらはまだ逆イールドとなっていない。
<弱気相場入りと景気後退>
最近の株価急落も警戒信号を発している。調査会社CFRAによると、1948年以降に株式市場が高値から20%以上下落し、弱気相場入りしたのは12回で、このうち9回で景気後退を伴っていた。
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