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- 2023/01/24 掲載
ユニクロ「最大4割の賃上げ」、追随できない企業はかなりヤバい理由
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

ユニクロの賃上げ、初任給は30万円
ファーストリテイリングは、以前から年収の高い企業として知られてきた。社員の平均年収は1,000万円近くに達しており、これは日本企業としては相当な高水準と言って良いだろう。現在、日本における初任給(大卒)の平均は約20万円(月収)であり、今回の賃上げによって同社の初任給は30万円程度まで上がる。入社1~2年目で就任する店長の収入は39万円とされており、日本の平均的水準を大きく上回る高賃金になるのは間違いない。基本的に賃金というのは企業の生産性に比例して増えるものであり、高い生産性を実現していない企業(つまり十分な付加価値を獲得できていない企業)は、理論上賃上げを実現することができない。同社が賃上げを実現できているのは好業績の結果であることは言うまでもないことだろう。
だが同社が、好業績を実現しているので賃上げを実現でき、他の企業は難しいという程度の話で済ませてしまっては問題の本質を見誤る。同社が今回思い切った賃上げに踏み切った最大の理由は、従業員に対する利益の還元という面もあるものの、本当の狙いはそこではないからだ。
【次ページ】単なる賃上げと考えるべきではない
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